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9話 密談

「国王! まさかカナデ=コトブキを生贄にするのですか?!」


 ドルマは驚愕の表情を浮かべていた。


 もともとドルマは戦争がないのならばないに越したことはなく、勇者たちをわざわざ異世界から召喚し、今までの生活を奪い、危険にさらすのに否定的であった。勇者たちは場所によっては危険であるが、基本平和であり、戦争を経験したことがないと聞いたからなおさら思うようになった。


 ドルマの言葉にデゴラが呆れを混じらせて答えた。


「なにをわかりきったことを言っているのですか? 今まで役に立たなかったのに城に滞在させていたのですよ。それくらい当然でしょう!」

「だが勝手に召喚してあんまりな仕打ちでは……」

「そんなものは我らの知ったことではないわい。これでわざわざ奴隷から探さずにすむのう。しかし、あ奴をどうやって誘導するするかじゃが……」


大臣の問いにアイアが提案する。


「勇者さま方に協力してもらえばよいのですよ。」

「ふむ、アイアの案が可能ならこれほど楽なものもないのであろうな。しかし勇者たちははたして儂らに協力してくれるかの?」


 アイアの案に国王は難しげな顔をする。


「一人の犠牲でこの世界の多くの命が救われると言えばよいのです。もし協力しないのであればあなたがたの誰かが代わりに生贄となると言えばおそらく大丈夫でしょう。これであれと親しいものも何とかなると思いますよ」

「しかし、わたくしの部下の話では彼が虐げられているのをほとんどの者が見て見ぬフリをするかそれを楽しんでいるのがほとんどの中、ミサキ=トウドウだけは彼を助けたと聞いております。彼女はもしこれを聞いて協力をしてくれるかどうかわかりません。むしろ敵対する可能性もあります」


 そこでアイアは思案する。ふと、うまく美咲をその場から外す案が浮かぶ。


「大丈夫です。ミサキ=トウドウはクリステラと仲がいいと伺いました。彼女にはあの子の訓練をさせればよいでしょう」


 そして勇者たちに伝えるのは準備の日である3日後ということで話がまとまった。


 また、ドルマは奏や美咲に何か言うかもしれないということから、監視がつけられることとなった。




 それから特に何事も問題なく召喚者たちは訓練に励んだ。





 その日いつ戻り訓練しようとしていた奏はメイドに呼び止められ、図書館へ行くようにと言われた。メイドはアイアのお付のメイドであり、オレンジの腰まであるようなロングの髪をひとつに縛っており、年はアイアと同じであるのに出るとこは出ており、引っ込むとこは引っ込むといったスタイルをしていた。

 なぜ図書館に行くのか尋ねたところ、国王やアイアからステータスが低いならば知識で補えと命令があったからである。


 城には図書館が2つあり、だれでも閲覧できる第1図書館、限られたものしか閲覧が許されない禁書のある第2図書館のうち、第1図書館に案内された。


 そして1日ここで過ごすように言われた。食事は持ってきてくれ、トイレは近くの者に必ず言ってからとのこと。


 仕方なく奏はダンジョンの地図を覚えたり、出現するモンスターの確認をしたりした。それでも、午前中で終わってしまったのだが、出してもらえなかったので、ほかのモンスターについて調べたり魔法書を眺めたり、窓を開けて小鳥たちと遊んだりした。


 そして、奏は飽きて適当に一番目立った1冊の本を取る。他の本は茶色や赤、青や緑、黄色など様々だったがそれだけは白色であった。それはこの世界にいるものは誰もが知っているといわれるほどの話だ。つい最近奏もクリスから聞いたものだ。


 タイトルは『災禍の供物』とだけ書かれていた。




 時を同じくして美咲は朝食をとったあと今日はどう過ごそうかと考えていたところで、騎士が来てクリスに特訓を付けてほしいと頼まれた。特に予定もなかったのでそれをすることにした。


 騎士と魔法師が練習するためそれぞれ2つずつある訓練場のうちの1つで騎士たちは手を止め、皆一点に視線が釘付けになっていた。その中心にはクリスと美咲がいた。二人の攻防の激しさと整った容姿に見惚れていたのである。


 クリスは筋力が低いため、装備を軽くし、スピードを重視している。さらに王女であるクリスの相手をする者は少なく、またいたとしても手加減していたのだが、最近夜に奏と模擬戦をすることで剣の腕がかなり上達していた。そのため周りの騎士はその成長ぶりに目を見張った。


 対する美咲は小さなころから剣を振り、多くの猛者を相手取ってきた。さらに異世界へ来たことにより身体能力が跳ね上がり以前はできなかった動きも余裕でできるようになっている。


 そのためクリスがいくらスピードで翻弄しようとしても美咲は構わず攻撃し、反撃する隙を与えない。そもそも敏捷はクリスが上だが、剣を振るう速度では美咲の方が上である。クリスは防御に専念するしかない。


 どうにか反撃の糸口をつかもうと探りながら美咲の剣撃をいなしていたが、突然美咲が躓いたように状態のバランスが崩れた。これを数少ないチャンスだと思いすぐさま剣を振るった。美咲のバランスはまだ崩れたままであり、クリスは勝利を確信した。

 

 しかし剣が当たる寸前クリスの手に衝撃が走り、気づけばクリスの剣は宙を舞っていた。


「はい。お終い」


 ニコリと笑って美咲はクリスの白く細い首に剣を当てていた。


「ま、参りました。……あの最後何が起こったのかよくわからなかったのですが、よろしければおしえてくださいませんか?」


 相手は体勢を崩し勝ちを確信したのにいつの間にか剣を突き付けられていたため、その疑問を解消するべくクリスは美咲にそう聞いた。


「そんなに難しいことではないわ。いくら攻めても終わりそうになかったから隙を見せてあなたが攻めてきたところであなたの剣を蹴っただけよ」


 美咲は何でもないように言うが、クリスは驚いた。今まで騎士たちと訓練し、またその訓練を見てきたが、皆武器は使うが蹴りなどは使っていなかったからだ。使うものはせいぜい拳闘士ぐらいの者であった。


 クリスは奏や美咲と訓練して戦いについてのある種の固定観念が壊されバリエーションも増えていった。


「ありがとうございます。いろいろなことが学べてとてもいい経験になります」

「どういたしまして。ねぇ、まだやりたいなら付き合うけど、どうする?」

「お願いします!」


 そして2人はその後も3度にわたって模擬戦をした。




 奏、美咲がそれぞれ図書館、訓練所に行っている時、ほかの召喚者は皆王都最初にあった部屋、謁見の間に居た。


 皆朝食前に部屋にメイドが来て朝食後に謁見の間に来るよう指示された。その時誰にも話してはいけないと言われ、自分だけが呼ばれたと思っていたのだが、ほとんどの者が来て皆これから何があるのか疑問に思った。


 そして、中には奏、美咲がいないことに気づいたものもいる。


 不安のもいながらも待っていると、ようやく国王がアイア、大臣、デゴラを連れてやってきた。


「待たせたの。しかし今から勇者たちにお願いがあるのじゃが話を聞いてくれ」





 国王や大臣たちが話し終えると場はシーンと静まり返っていた。最初に口を開いたのは担任教師の岩川であった。


「つまり、世界のために一人の生徒を切り捨てろと?」


 奏がいじめられているのを知っていたが見て見ぬふりをしていた岩川も、さすがに殺すことには平静を装っていられなかった。


「ああカナデ=コトブキには気の毒じゃが、この世界の平和の礎になってもらう。あれ程の魔力ももともと持っておる者など今までおらんかった。これほど最適なものなどほかに居らんじゃろう」


 静かに国王は答える。だが、副担任である早水は反論する。


「だからと言ってあんまりです。いくらなんでも勝手に呼ばれて殺されるなんて!」

「そうよ!」

「さすがにひどいだろ!」


 早水は天然であるが生徒思いなためみんなから好かれている。しかし、彼女は割とマイペースな部分もあるため奏が虐められていることは知らない。


 早水の言葉に渚、隼人と続く。桃華や奈央はそれに頷いている。ほかのクラスメートも言葉にしないが似たような反応をする。

 ……八重沼グループを除いて。


 しかしデゴラがそれに落ち着いて返す。


「しかし、彼ほどの魔力なら1人で大丈夫ですが、もしそうでないというなら多くの者が供物として必要です。あなた達の誰かが変わりとなるのであれば話は別ですが」


 これに皆静まり返っていた。さすがに自分が死ぬのは嫌なのである。


「なぁ、なんでここに美咲がいないんだ?」


 そう聞いたのは【勇者】勇真である。奏がいないことについては分かったが、美咲のことは一向に出てこない。だから気になって聞いたのだ。


「ミサキ様には妹のクリスの剣術指南をしてもらっています。後で話を通しておくので心配いりませんよ、ユウマ様」


 アイアの答えに安心したのか勇真は上がっていた肩が下りた。


「美咲についてはわかったよ。でも寿のことは絶対そうしなければならないのか?」

「はい、残念ながら……ですが、かつて供物となったものの1人が2年経って生きて出てきました。そのものはひどく衰弱していましたが普通に生活ができる程に回復しました。そのものが出たのが約500年前でそれ以降潜伏している期間はバラバラなものの何人かは生きて出てきています。そして、その者たちの話では魔力が吸われる感覚がするとのことです。恐らく封印されている何かの力を抑えるために封印術式に魔力が自動で吸収されるのでしょう。ですので、カナデ=コトブキが生きて帰ってくる可能性がありますので……ぜひ協力してくれませんか?」


 そう言ってアイアは頭を下げた。


 もちろんそんなことは嘘である。今まで一人も返ってきた者はいない。


 しかしここにいる召喚者は『災禍の供物』のことを初めて聞いたのだ。勇真はアイアが本当のことを言っていると信じて疑わない。だから考える。いくら帰ってきたと言ってもほとんどが死んでいるのだ。しかも1人で潜るから帰ってくる可能性はかなり低くなる、と。


「おいおい、何迷ってんだよこの世界の奴らを救うんだ。協力しようぜ!!」

「そうだぜ、しかも帰ってこれる可能性もあるんだ。クラスメートを信じないでどうすんだよ、藤堂!」


 その声の主たちにその場に居合わせた者全員が視線を向けた。


 声の主たちは案の定八重沼と成田だ。邪魔だった奏を消せるのだ、これに乗らない手はないと話に飛びついた。


「藤堂、寿を信じろよ。そうすればあいつは絶対帰ってくるぜ!」


 続けて近藤が言う。「仲間を信じろ」「あいつなら大丈夫だ」ご都合主義でお花畑な勇真には効果てきめんだった。


「そうだね、あいつならきっと帰ってくるはずだ!! 僕たちも協力しよう」


 他の者は中にはもしかしたら本当に帰ってくるかもと思い始めるものや自分が変わりに死にたくないから黙っているものなど様々であった。


 桃華たち奏と仲の良い者たちは迷っていた。奏には死んでほしくないが自分も死にたくはない、と。

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