8話 災禍の供物
少し最後追加しました
少しお金とステータスカードについて変更しました
クリスと夜にダンジョンについて語った次の日の朝食でみんなが集まっているときに、いかにもお姫様といったドレスを着たアイア王女が来た。朝食に顔を出すのは珍しいので皆注目していると、
「本日からは午前中の授業はありません。そのため、午前中は自由に過ごしてもらって構いません。もし町へ行くのであればお金を出すので近くの者に言ってください。また、5日後に効率よくレベル上げをするためダンジョンへ潜ってもらいます。場所は王都から近い『始まりの迷宮』と呼ばれるダンジョンです。3日後に準備をして出発は4日後です。
では私はこれで失礼させてもらいます」
と言って出て行った。それを聞いたクラスメイトは午前中の予定を作ったり、ダンジョンについて話し合っていた。で、僕はというと
「カナちゃん、この後どうする?」
「うーん。訓練でもしようかなぁ。弱いままだと不安だし」
「へえ、奏は頑張るんだな。でもたまにはゆっくりして今日は町に行って美味いもんでも食おうぜ!」
「うわっ、脳筋のくせにまともなこと言ってる」
と僕が驚くと隼人が声を荒げて
「脳筋じゃねぇよ! で、行くのか?」
「んー、じゃあ今日はせっかくだし町に行こうかな」
「おし、ならさっさと金もらって行こうぜ!」
そして僕らは桃華、隼人、今村、支倉さん、僕と隼人の友達の大輔と一緒に町へ向かった。美咲を誘おうとしたが、ほかの人たちが先に誘っていたのでやめた。
お金は銀貨2枚もらって財布に入れた。
町は王都というだけあって賑わっていた。王都は東西南北にそれぞれ門があるようで北側に貴族が住んでいたり王都以外に領土を持っている貴族の別荘がある貴族区、東側が貴族御用達の店がある商店区、南が冒険者区、西が娯楽区となっている。貴族と冒険者の衝突を避けるために北と南で分けているようだ。
ちなみに一般人の店や宿、露店は冒険者区にある。娯楽区は貴族などの身分は関係ないらしい。まぁ娯楽街にあるのが大人のお店、つまり娼館が主で皆嫌な思いをしないようにとのことらしい。
町を歩いていると首輪を付けた人を良く見かけた。これはいわゆる奴隷で借金奴隷、犯罪奴隷、戦争奴隷に分けられる。借金奴隷は借金が返せずに奴隷となったもので借金を返せば解放されるし運が良ければそのまま就職もできる。
犯罪奴隷は犯罪を犯した奴隷で解放されることはない。
戦争奴隷は戦争で親が亡くなった子や敗戦国の人が奴隷となる場合である。今はどちらかというとモンスターに村を襲われ、身寄りのない子供が奴隷となる場合が主となっている。
奴隷には衣・食・住が保障されているが人によってさまざまで、好待遇であったり、最低限であったりと買う人によって変わる。
奴隷の首輪には、隷属紋が刻まれており、無属性の奴隷契約魔法が使われる。奴隷商人はみんなこれが使えるが悪用すれば犯罪奴隷になる。
奴隷商店は奴隷区と言われる場所にあり冒険者区と娯楽区に渡って密集している。
僕らは露店で軽く食べ物を買って服屋に向かった。その理由は、防具や武器は国から好きなものを支給されている。服も支給されているものの女性陣にはデザインがお気に召さないらしく、自分たちで買いたいと言って聞かないからだ。
店は割と広く、種類が結構あった。中には魔法や属性が付与されているものまであったがさすがに高かった。
女性陣は盛り上がっていて、動きやすそうなハーフパンツや丈の短いスカート、色違いのチュニック、アクセサリーなどを買っていた。
召喚者がそれぞれの時間を満喫しているとき、城の一室では朝に勇者たちにダンジョンのことを伝えたアイア王女、他に国王、大臣、宮廷魔術師のデゴラ、王国騎士団団長のドルマの5人が話し合っていた。
「お父様、勇者さま方にはダンジョンへ行くことをお伝えしました」
「そうか。ご苦労であった。それで勇者たちは今どのような感じだ?」
国王が尋ね、デゴラとドルマが互いに見合いドルマが一歩前に出る。
「はっ! 勇者たちは順調に力を伸ばしており、ダンジョンでも問題ないでしょう。後衛組もある程度自分の身を守れるぐらいの実力はあります。」
そう言って下がると同時にデゴラが前に出る。
「わたくしの方も前衛を含め、ほとんどの者が中級まで使えるようになり順調と言えるでしょう。しかし、問題なのが……」
そこで気まずそうに口を濁す。それに対し、国王は部下から聞いていたので口を濁す理由を言う。
「カナデ=コトブキのことか?」
「はい。彼は属性と魔力が多いですが、制御ができず使えるものが初級までと全く役に立ちません」
デゴラの一言にドルマが反論する。
「だが敏捷も高く、あいつは剣の腕は大分いいぞ!」
「じゃが、ほかのステータスはやっと一般人のレベルに追い付いたというほどではないか。それに職業が『歌姫』などと役に立ちそうもないではなかの?」
「で、ですがおそらくユニーク職のたぐいだと思われます!」
「ですが彼のユニークスキルは聴覚強化ではないですか! 感覚強化ではなく、聴覚強化ですよ! 役に立たないでしょう」
大臣とデゴラに責められ、何も言い返せないドルマ。そこで国王が笑みを浮かべながら提案する。
「だがあの者でも儂らのの役に立つことができるぞ」
その一言に皆国王へ視線を移す。
「大臣よ。始まりの迷宮は今年『災禍の供物』の時であったな?」
「おお! そうですね!」
災禍の供物ーー600年前、始まりの迷宮に突如異変が起きた。それまで5階層にマップには壁として何もなかった場所に大きな穴が開いた。
ダンジョンなのでモンスターがいるはずだが穴の近くには見当たらず、何故か穴からは出てこなかったので、恐れをなして出てこないと噂が立ち、当時高ランクであった冒険者パーティーと騎士団が調査のため穴へ入っていった。それを多くの冒険者が見ていたが、結果は悲惨なものであった。
鉄で形成されたゴーレムの鉄人形に手足、頭を生きたまま潰され、オーガの群れに嬲られ蹂躙されていた。さらに中には飛翼竜などの竜種までもが確認された。
これを学者や宮廷魔術師が調査し、突然のダンジョンの変化、魔物が段違いに強い、穴から魔物が出ない考えた結果おそらく穴には結界が張られモンスターは出てこない、また奥から強い魔力とまがまがしい気配が流れてきて、さらに何かよくわからないが奥から音が響いてきたことから何かが封印されているのでは?と結論付けた。
そこでどうすればいいか議論したところそのまま放置ということになった。また、結界が張られていることから封印指定区域となり誰も寄り付くことなかった。
しかし、その年に大きな地震が起こり、多くの村や町が崩壊し、農作物も不作で大飢饉が起こった。
このことから封印されたものの呪いだと騒ぎが起こった。そのためこれ以上被害が起こることはないよう生贄を捧げることにした。それが『災禍の供物』と呼ばれるものである。
それには奴隷が選ばれた。これでもう大丈夫だと思われたがその後しばらくして街にモンスターの群れが襲ってきて一夜にして街は滅んだという。民衆が不安にかられる中、どうすればいいか答えを探すため、占い師に尋ねた所100年に一度、魔力の多いものを生贄にすればいいと言われた。だが、多いものはもともと少なく、さらに多くの災害で命を落としており、なによりまだ死にたくないため誰も志願しなかった。
そのときある青年が名乗り出た。この青年は先のモンスターの群れで滅んだ街の数少ない生き残りで町長の息子であった。彼は家族や恋人が死に、生きる理由がない、彼は魔力が豊富であり、これ以上被害を出したくないということで穴の中へ入っていった。
するとその後は嘘のように平和になったのである。そこで100年に一度『災禍の供物』には魔力の多いものを捧げることとなった。
それが偶然なのか奏たちがが召喚された年であった。
……しかし誰も知らない。
地震は大陸から少し離れた島にある火山によるものであり、不作はたまたまその年は雨が少なかっだけであることを。
モンスターの群れはもともと小さな村の近くの森などでたまたま討伐されることなく数を増やしており、地震により住居を変え移動してきただけであることを。
そして占い師は優秀であったが魔力量が少なく、自分が生贄として選ばれることがないよう嘘をついたらたまたま災害が途切れたことを。
始まりの迷宮の『始まりの終わり』は来る者には容赦ないが他には何の影響も与えない、そんな場所なだけである。