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28話 非民

少し遅れました、ごめんなさい!

次は2週間以内の予定ですがテスト勉強とバイトで遅れるかもしれません

 ミユの復讐の話が終わった後は奏たちは朝食を食べて出発した。その時に互いに気になることなど質問し合い、情報の共有を図った。


 まずはおたがいのステータスやスキルの確認を行った。これは奏にとっても新たに増えたスキルの確認となりちょうど良かった。


【魔力操作】自分及び周囲の魔力を操作することができる。

【魔法造形】自身のイメージで魔法による武器などの造形が可能。

【治癒力上昇】肉体的治癒力の上昇。

【身体強化】一時的に身体能力の上昇が可能。

【皮膚硬化】皮膚を硬くする。任意に発動可能であり、魔力を込めることにより、硬度が変化する。危険が迫った時自動発動。

【環境適応】様々な環境に適応する。

【糸術】糸を武器として戦闘、罠の設置などができる。

【気配察知】自身の周囲の気配を察知する。

【隠密】自身の気配を消す。

【無感情】自身の感情を一時的に消すことができる。

【思考加速】瞬間的に思考速度を上昇させる。

【魔力視】自身及び周囲の魔力の流れを見ることができる。


【竜殺し】竜を殺した者。

【竜喰らい】竜の血肉を食べた者。ステータス大幅上昇。聖竜の肉を食べたことにより『治癒力上昇』『身体強化』『爪術』『皮膚硬化』獲得。

【災禍の歌姫】種族を問わず一度に多くの命を奪った『歌姫』


【薬物生成】体内で薬物の生成が可能。

【毒物生成】体内で毒物の生成が可能。

【魔力感知】周囲の魔力を感知及び特定できる。

【分割思考】自身の思考回路を複数開き並立思考可能。

自然の恩恵(フィールドワーク)】自然の中にいる時ステータスが上昇。

【苦痛耐性】身体的苦痛に耐性ができる。


 他の武器系スキルなどはそのままだった。

 称号の『災禍の歌姫』の『災禍』はかつて大虐殺をした者に与えられた称号でその後に職業がつくらしい。『始まりの迷宮』破壊者という称号から多くのモンスターやダンジョンにいた人を殺したことから『災禍』の称号が与えられ、レベルも大幅に上がったのではないかとミユは言っていた。

 ミユは流石はハイエルフと言えるだけあり、魔力関係が長けていた。そして奏が魔力関係のスキルを得たのは場所が関係するかもしれないとのこと。もともと『始まりの終わり』はミユが封印され、その時に常に一定の量になるように魔力を吸い上げ、その魔力で迷宮の拡大、モンスターの強化、変異を行っていた。そしてやがて空中に高濃度の魔力が漂うようになった。そこで奏が長い間高濃度の魔力と触れ合ったことで魔力操作を覚え、外に出た時に濃度の落差で魔力視も覚えたらしい。

 ミユの年齢については封印され、魔力を吸い上げられている時、身体機能が停止し、時間から切り離されたことで意識は眠り続け、年をとらなくて済んだ。そして奏が来た時に第三者の魔力に反応してミユは意識が覚醒した。それからは奏が知る通りということだ。また、ステータスを解析しようとしても『-』となっていたのも封印の影響のようだった。

奏の首から左腕にかけてのタトゥーについてはミユとの主従契約によるもので主人に反抗した時に罰が下るものらしい。


 一通りお互いの情報交換が済んだところで区切りがいいからと昼食となった。その後移動し続けたが、モンスターを討伐しつつ他愛もない会話か沈黙が続くばかりで特にこれといった変化もなく数日が過ぎた。その間にアリアにミユ用の服を何着か作ってもらった。ミユは白色に水色で花の装飾の付いたワンピースとその上に羽織るローブを作ってもらっていた。旅なのにワンピースで大丈夫なのか奏が尋ねたところ、なぜか自信をもって大丈夫ですと押し切られた。


 そして現在奏たちはやっと森から抜け出し、村が視認できる位置まで来ていた。

 村の門には簡素な防具に身を包んだ2人の門番が立っているが、どこか退屈そうに話をしている。それでも仕事だからか周囲を確認するのを怠ってはいなかった。そのうちの一人が奏たちに気づきもう一人に伝える。二人は怪訝な顔をしつつ警戒を怠らない。それもそのはず。森の奥にエルフの里があったなど誰も知らず、何もないはずの森から二人の人が出てきたからだ。


「すみません、ここに宿はありますか?」

「あ、ああ、宿ならありますよ。……あの、あなたたちはどこから来たのでしょうか?」


 ミユが門番に尋ねるとどもりつつも答える。それもそのはずでミユのような美人しかもエルフを今まで見たことは初めて、または数回だったので動揺してしまっていた。


「私たちはあの森の奥から来ました。旅をしていたのですが、野宿ばかりで久しぶりに宿を借りて過ごそうかなと思いまして」

「そ、そうですか。何もないところですがゆっくりしていってください」


 精いっぱいの笑顔でミユたちに向けてポイント稼ぎをする。それに律義に答えつつ中へ入るミユとスルーする奏。


 奏たちが村へ立ち寄った理由はいくつかある。まずは調味料の購入。料理は当番制でしていたが、調味料がないため、どうしても物足りなかった。そして一番の目的としては冒険者登録だ。道中討伐したモンスター素材を売り金を稼ぐためだ。別に登録していなくてもギルドで売ることができるが、幾分安くなってしまう。これから何度も素材を売る予定なので冒険者登録し、それで生計を立ててもいいだろうという判断である。そして町などによる時の身分証明も兼ねている。ステータスカードでもいいが見せにくい情報もあるから作っておいたほうがいいと判断した。


 まずは部屋を借りるため宿に向かった。宿の主人は体が大きく、筋肉質だったが気さくそうで、奥さんと娘、息子と経営しているらしかった。奥さんはのほほんとした感じで、娘はそんな母とは異なり、きびきびした感じで、息子は父にそっくりだった。


 宿で部屋をどうするかで一悶着あったが、奏が折れて二人一部屋となった。部屋代は奏がもともと持っていたものでは足りなかったので、冒険者ギルドで素材を買い取ってもらってその後払うことにした。部屋を借りた後はしばらく進むと盾の前で弓、剣、槍、杖が交差した看板が見えた。その上に冒険者ギルド・ロッタ村支部と書かれていた。冒険者ギルドのシンボルマークである。冒険者ギルドに来るまで周囲の人間から奏たちは、特にミユが注目を浴びていた。が、誰も近づくこともなかったので奏は無視していたし、ミユは店などをもの珍しそうに見ていたため気づいていなかった。


 ギルドの扉を開けるとギイィィと音がした。ギルド内は何人かが壁際で立って話をしており、すぐ近くで酒瓶とともに酔いつぶれたのかおじさんが転がっていた。受付と思しき場所には二人の職員らしき男女がいた。周囲を観察していた奏だが、ミユが女性の受付の方へ歩み寄っていたので付いて行った。


「こんにちは。はじめまして。ここは冒険者ギルド・ロッタ村支部です。私は受付担当のエルカです。今回のご用件はなんでしょうか?」

「冒険者登録と素材の買い取りのお願いをしに来ました」


 愛想よく話す受付嬢エルカに奏は愛想笑いをしつつ用件を伝える。


「わかりました。あの、冒険者および冒険者ギルドについては理解されていますか?」

「僕は大丈夫ですが、こっちの僕の主人に説明をお願いします」


 エルフであるミユに説明が必要なのは当然として、奏も大体はわかるが細かいところまでは知らなかったりするので説明を頼む。

 エルカは奏が主人と言っていたのに驚いていたようだがそのまま話を続ける。


「冒険者ギルドとは人間の国、街には必ずあり、冒険者は住民の雑用からモンスターの討伐まで何でもする職業です。冒険者ギルドは基本的に国から独立した組織であり、登録さえしていれば人間国の情報を知ることができます。そして強くなれば報酬や権利も上がります。基本的に冒険者は人間のみですが、中にはエルフや獣人、ドワーフもいます。それでは冒険者についてですが、冒険者はSS、S、A、B、C、D、E、F、Gの9ランクからなります。皆さん最初はGランクからのスタートとなります。最初は雑用や、薬草採取、付近の弱いモンスターの討伐です。中には名の知れた人が冒険者になる方がいますがそのような方がGランクから始めるのは時間の無駄ですし、ギルドとしても大きな損失となるので希望があれば試験があります。ランクアップは成功した依頼の種類や試験の合格で可能です。それで適正ランクから始められますがいかがなさいますか?」

「いやGランクからでいいよ」

「わかりました。説明を続けさせていただきます。冒険者はランクが上がれば報酬や権利が上がります。それとともに危険も増しますし、なにより強制依頼が発生します。これは街などが壊滅の危機に陥った時にギルドや領主が出す依頼です。これを断ればランク降格や、罰金などの罰則が発生しますし周囲からの評価も下がります。似たようなもので指名依頼ですが、これは依頼者が冒険者を指名した依頼です。指名する分普段より報酬が増えますが断ることも可能です。次に依頼失敗ですが、依頼を失敗すると依頼の報酬の2割をギルドに払ってもらいます。これはギルドの信用を落とした迷惑料だと思ってください。また、基本的にギルド内での乱闘は禁止していますが、してしまった場合は罰金と器物の破損や周囲にけがを負わせた場合は賠償など払ってもらいます。たびたび、問題を起こせば降格処分や最悪除名となります。もし鍛錬がしたければ修練場をお使いくださいと言いたいところですが、当ギルドはお金と土地がないので村の外で行ってください。また冒険者には 大きな集団としてクラン、小さな集団でパーティというものがあります。パーティは基本的に依頼を受けるときの小集団のことです。そして素材の買い取りは大きなところは買い取り専用のカウンターがありますがうちは小さいのでここで行います。さて長くなりましたがこれで最後です。冒険者ギルドによっては年齢制限や年齢に応じた試験で冒険者になれるかどうか決める場所もありますが、当ギルドではそういった制限は設けてません。なので依頼で何が起ころうとも自己責任でお願いします。冒険者はいつ死ぬかわからない危険な職業ですがそれでもなりたいというのであれば……ぜひ歓迎させていただきます」


 最後にためを作り、笑顔を作ったエルカ。


「うん、こちらこそよろしく。……あ、そうだ。魔獣を連れているんだけどどうすればいいのかな?」

「魔獣ですか? 魔獣なら登録していただければ十分ですよ」

「それだけでいいの? もっと何かつけさせたりとかしなくていいの?」

「ええ、中にはドラゴンやスライムを使役する方もいるので。でも極力離れないようにしてください。わかっていると思いますが、従魔が問題起こせばその持ち主が罰則を受けます。最悪従魔が殺処分ということも有り得ます。ではこちらの用紙にご記入ください。もし代筆が必要なら言ってください。それとパーティ登録が必要なら行ってください」


 そう言って渡された用紙には名前、種族、性別、年齢、使用武器、魔法属性、出身、従魔を記入する欄があった。


「パーティ登録お願いします。これって無記入があってもいいのかな?」

「別に構いませんよ。魔法属性を一つしか書かない方もいますし、秘密にしたがる方は少なくないです。それでたまに受けられない依頼が出ますがそれは本人次第ですね」


 空欄があっても構わないということなので名前、種族、性別、年齢、魔法属性、従魔のみを書いた。この世界では基本的に姓は貴族のみが持つのでカナデのみで、魔法属性は火と水、風にしておいた。出身はこの世界の詳しい地名はわからなかったため書くことはできなかった。


 そしてミユも同時に書き終わったようで一緒に提出した。エルカは奥へと引っ込んで行く。それから少しするとエルカが急ぎ足で戻ってきた。


「あ、あの作るには作ったんですけど……カナデさんは出身はどちらなんでしょうか? 書き忘れていますが……?」

「? いや、別に書き忘れなんかじゃないけど」


 エルカがどういう意図で質問したのかわからないが奏は正直に答えた。するとエルカは引きつった笑みを浮かべていた。


「なっ!? まさか非民だなんて」


 エルカの一言に周囲の人は各々の行動を止め、奏たちに視線を向けた。そして何人かはひそひそと話している。その内容は、「非民だってよ」「まじかよ」といった内容だった。奏もミユもどういう状況かがわからない。そのため『非民』についての情報を集めようとする。


「あの……」

「ひっ! 近寄らないでください!!」


 奏がエルカに話しかけたら思いっきり拒絶された。このままでは埒が明かないので奏はミユに目配せすると、察したようにミユがエルカに話しかけた。


「あの、『非民』ってなんですか?」


 ミユが話しかけるとエルカは一瞬キョトンとするが、すぐにミユのほうへ向いて口を開いた。


「……ああ、ミユさんはエルフだから知らないんですね。『非民』とは出身地のない人のことを言うんですよ。非民は周りのことを考えない自分勝手で卑しいスラムよりも立場の低い存在で、一部の地域では災いを呼ぶと信じられ、非民を見つけたらすぐ殺すという場所もあります。非民はどこにいっても信用されませんし差別を受けます。本当にどうして非民に人権があるのか不思議でなりませんよ。ミユさんも非民と一緒にいないほうがいいですよ。……そういえばさっきそこの非民はミユさんを主人って言ってましたね。ということは奴隷かなんかですか? それならそんなの早く切り捨てたほうがいいですよ」


 言い終わると同時にエルカは奏をにらみつける。奏に対する態度が先ほどとは一変している。エルカの言葉にミユは何とも言えない表情をしていた。というよりも話に追いつけていない様子だった。話の中心の奏自身も追いつけていない。城での授業では『非民』については一言も聞いていなかったからだ。


「あの、どうして『非民』はスラムの方々よりも立場が低いのでしょうか? あまり変わらないように思いますが」

「そんなの決まってます! スラムは自分の出身はありますよ。得体のしれない『非民』とは全然違います!!」


 エルカのあまりの剣幕にミユは少し引いていた。

 奏としては今から、そしてこれからどうするかを話し合いたい気分だったが、状況的に口を挟まないほうが良いだろうと判断して傍観を決め込んだ。


「非民は依頼を受けられないんでしょうか?」

「……いえ、常駐依頼といったいつもある依頼は受けられますよ。他は依頼内容によります」


 これには奏もミユも安心した。これで依頼も受けられないとなれば目も当てられない。


 結局奏たちは依頼は受けず、モンスターの素材の買い取りを森で狩ったものを少ししてとりあえず宿に帰ることにした。



 宿に着くと奏とミユは部屋に戻って話し合いをすることにした。


「奏さん、これからどうしますか? すぐにここを出ますか?」

「それについては悩んでる。……宿(ここ)の代金も数日分払っているし、どこに行くにしても冒険者カードは見せなきゃいけないだろうから僕に対する扱いはあまり変わらないと思う」

「そ、それならカードを作り直すというのはどうでしょうか?」


 奏の落ち着いた回答に何とかひらめいた打開策を提案するミユ。


「それは一応考えたんだけど……、難しいと思う。ミユは目立つ存在だし、ギルドはどこも情報が共有されてるから僕たちのことも知られているはずだよ」


 奏の一言でミユは自分のひらめきに希望を持って輝かせていた顔を曇らせる。


「まぁ、とりあえずは、しばらく様子見しかないか……。そろそろご飯食べに行くよ」

「……はい」


 奏が立ち上がると、ずっと床で一人で遊んでいたアリアが足から一気に頭まで駆け上がる。

 奏たちの部屋は三階にあり、一階に降りると数人の食事をしている客がいる。彼らは奏たちを一瞥するとすぐ眼をそむけるか見惚れるかしていた。


「やあ、あんたたちは何を食べるんだい?」

「何を食べる?……おすすめがあればそれ2つでお願いします」

「あいよ」


 入って席に着くと女将さんが注文に来たのでミユに聞くが首を振られ、とりあえず何でもよかったので女将さんに任せることにした。


(……とりあえずあまり大きくない村だから話は早く広まるだろうと思っていたけど、まだ大丈夫か。でも明日には広まってるだろうな。それにしても出身がないだけでここまで差別されるなんて、おかしいすぎる)


 そう考えながらアイテムボックスからアリア用の肉を用意する。アリアは頭からテーブルまで降りてきて奏が小さく切り分けてつまんだ肉を必死に咀嚼する。その姿が微笑ましくてゆっくりと頭を撫でる。するとアリアはどうしたの?とでも言いたげに奏を見つめて首をかしげる。なんでもないよと笑うとアリアはそのまま食事に戻った。


 しばらくするとパンとスープ、野菜と肉を炒めたものを宿屋の息子、娘が持ってきた。ちなみに息子がジェン、娘がジェシカだ。二人は愛想よく、料理を運ぶとほかのお客さんに捕まり、談笑している。それを女将さんに叱られるまで続けるが、日常茶飯事のようだった。

 料理はあまり豪華とは言えないが、しっかりした味付けで、久しぶりに満足することができた。食事の後はやることもないのですぐに布団に入って眠った。久しぶりの布団だからかすぐに意識が薄れていった。


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