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22話 エルフとの対峙

「お前たちは何者だ?」


 その声に奏とミユは話を中断し、声のした方に顔を向けた。

 アリアはそんなことお構いなしに奏にちょっかいをかけて遊んでーという感じにせがんでくるが。


 正直に言って奏は誰かが来るのには気づいていた。地上に来てからしばらくして音響定位に引っかかったからだ。最初は今の場所などの詳しいことを聞こうと思っていた奏だが、それが10人程の集団であると気づきしかもガチャガチャと僅かに武器の音が聞こえ、面倒くさそうだと思い、さっさと逃げようと考えた。

 しかしミユがひたすら余計なことを言うもんだから逃げ損ねた。


 奏達の前に11人の男がいた。全員髪は金、水色、緑、銀のどれかで顔は整っていた。衣服は皆緑系統のもので何よりもミユ同様に耳が尖っていることからエルフであることがわかった。基本的に殆ど弓と短剣を持っているが、槍や盾を持っているものもいる。


 エルフは自分の里から基本的に出ないのでここはエルフの里の近くだとわかった。エルフの里は様々で結界として霧を発生させ、侵入者を拒むものや侵入者を知らせる結界を張って迎撃したり、逆に何もしないなど里によって種族に対する考えが異なっているらしい。彼らがどのように対処するかは知らないが面倒にならなければいいのだが。


 そして奏はどうしようかとミユに視線を向けると、ミユは顔を俯かせ、肩が震えていた。不覚にもどうしたのか気になってしまったが、


「おい! 今の状況がわかっているのか?さっさと自分が何者か言え‼︎」


 と先頭の金髪のエルフが苛立ったように叫んだので取り敢えずそちらに意識を向けることにした。


「唯の旅人だよ。ここにはたまたま通りかかっただけですぐに出て行くよ」

「それはお前だけか? 先程何やら言い争っていたようだがそこの女は?」

「知らない。さっき出会ったばっかりだし」


 嘘は言っていない。事実奏はミユについて何も知らない。


「お前は何者だ?」

「……」


 金髪エルフはミユに問いかけるがミユは俯いたまま何も喋らない。そんなミユにイライラした様子で近づき、無理やり顔を上げさせる。

 ミユは涙を浮かべ、ただでさえ白い肌がさらに青白くなり、今にも倒れそうな感じだ。


 しかし驚いたことに金髪エルフはそんなミユの顔を見ると息を飲み、数歩後ずさった。そして近くの水色髪のエルフに何かを伝えている。その水色エルフは話が終わる目を見開き森の奥へ走って消えていった。


「な、なぜお前がここにいる、ば、化け物め‼︎ お前は封印されているはずだ。こんなところにいるはずが無い!」


 そんなことをわめいていた。よく見ると周りのエルフ達もミユの顔を見て、キョトンとしていたのが段々と震えたり青ざめたりしている。


「何で封印が解けて……? も、もしやお前がこの化け物の封印を解いたのか?」


 と奏の方に矛先が向かってきた。奏としては自分に意識が向くことなく済めばいいと思っていたがそんなに甘くはいかないようだ。


「封印? 化け物? なんなの、それ?」


 取り敢えずとぼけてみる。


「嘘つくな‼︎ お前が封印を解く以外にこいつがここにいるはずかない! お前が封印を解いたんだろう‼︎」


 と顔を真っ赤にして奏にわめき散らす。そして奏に襲い掛かってくる。話している最中に解析を使っていたが、エルフの集団はダンジョンに比べて、全く脅威とならない。それ故に金髪エルフを無力化するのに時間はかからない。まず武器を持つ手を掴み、後ろに捻り、足を引っ掛けて地面に転がす。


 というか彼らは聖竜が守護していたのを忘れたのかな?明らかに竜に勝てないレベルで僕に挑むなんて。それに封印を解いた者が既に何処か行っており本当に偶然居合わせたと思わないのかな?


 金髪エルフは最初は驚いていたが、直ぐに拘束から抜け出そうとする。ウザったいと思う奏は躊躇なく腕を折った。ボキッという音とともに腕が本来曲がってはいけない方向に曲がっている。


「動けばどんどん痛い思いするよ」


 と言い片足を無事な方の腕の肘の上に乗せ、少し力を入れると呻き声を上げて大人しくなった。しかし他の者たちは隊長を離せと言って攻めてくる。どうやらこの金髪エルフは隊長らしい。どうしようかと考えていると土の鎖が奏の体に巻き付く。金髪エルフはその隙に逃げようとするので肘を思いっきり踏み付ける。ゴキャッというおとが金髪エルフの腕からなった。多分砕けただろう。金髪エルフはそれでも頑張って奏から離れることに成功したが、特に脅威にはならないだろう。顔に汗を浮かべ、鼻水を垂らして必死に回復させているが聖属性使いが居ないようで少ししか治っていない。


 奏は体中にまだ鎖が巻き付いたままでそれを好機と思ったのか矢や魔法を放ってくる。しかし奏には届かない。奏の前には氷の壁ができていた。それが全ての矢と魔法を防いだ。


「はぁ、気が変わった。無視しようと思ってたけどさっきからの様子だと君らは何かしら関係してそうだし危害を加えてくるし。いろいろ詳しい話でも聞かせてもらうよ。1人残せばいいかな」


 奏はあまり気乗りしていない様子で静かに呟いた。

 氷纏で土の鎖を凍らして壊す。そして腰の鬼啜りを抜き、膝を曲げて腰を軽く落とす。エルフ側の槍や盾を持っている者よりも早く動き、一気に間合いを詰める。

予想以上の速さだったのか、エルフの前衛四人は一瞬反応が遅れる。奏は前衛の2人の長槍使いに斬りかかり、1人はそのまま腹を切り裂く。もう1人は何とか防御は間に合うが体勢が崩れたため奏はそこに氷製のナイフを投げる。ナイフが顔に刺さりそうになるのを避けたため奏から視線をそらす。その隙に横薙ぎに切り裂こうとするが、危機察知が反応する。後ろから短槍を持つエルフが突き刺してくる。その穂先を掴み地面を蹴りエルフの上を飛び越えながら首を切り落とす。そのままエルフの死体を先程ナイフを回避したエルフに蹴りつけそのまま風槍(ウィンド・スピア)を放つ。その後風槍の放った場所に氷弾(アイス・バレット)を放つ。すると風槍で死体に空いた穴を氷弾が通り、そのまま槍使いのエルフを貫く。槍使いのエルフは視界が見えないまま何が起こったのかわからず散っていった。


 その後後衛はようやく準備がてきたようで奏に魔法と矢が飛んでくるが、魔法は全て避けるか鬼啜りで弾くかし、矢は数本掴み他は鬼啜りで叩き落す。そのうち幾つかは叩き漏らしたりするがアリアが糸を使って防いでくれる。そのまま矢を後衛がいる方向に投げると案の定魔法で防ごうとするが、アリアが魔吸糸を用いて無効果し、矢はそのまま後衛を射抜く。


 残るは速さに追いつけず自分の仕事をこなせなかった重装備の盾役が1人。あまりの出来事に目を見開いていた。


「な、なんだお前は! ば、化け物じゃないか‼︎」


 どうやら戦意を喪失したらしい。一歩ずつ近づくと悲鳴を上げながら少しずつ後退りしている。すると急に盾を持ったエルフは後ろ向きに転ぶ。


「盾が聞いて呆れる。敵を前に仲間を守ることもままならず、あろうことか何もせずに逃げることしかできないなんて」


 アリアの糸を木につけて転ばしてもらった。一気に間合いを詰め、そのままの勢いで突き刺す。


「これでゆっくり話が聞けるね」


 そして奏は金髪のエルフに視線を向ける。

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