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19話 ミユという少女

ヒロイン名前変えました。

アリアと被ってたので

 目が覚めると胸に重みを感じた。戦いで無理をしたのかと思っていたがそうではなかった。奏に布団が掛けられており奏と布団の間にアリアが眠っていた。どうやら気絶した奏に布団を被せてくれたらしい。なんとも微笑ましいことだ。


 体を起こし、アリアを降ろすと周りの確認をした。奥の方に階段があった。どうやらあそこから先に進むことができるらしい。


「あーもう、本当『狂喜乱舞』はおかしくなるから使いたくなかったのに。やっぱり無理だよね。はぁ」


 確認した後は聖竜から素材を剥いだり、鬼啜りに血を吸わせて修復し、余った血を取り敢えず瓶などに入れておいた。頭部は破裂させて勿体無いことをしたと思ったが、何とか牙や角が途中からだがあったので回収した。


 回収の終わり頃アリアが起きてキチキチと嬉しそうに張り付いてきた。その時に休憩と食事をとることにした。


 アリアは現在肉を食べるので肉で大丈夫なはずだが結構な頻度で奏の魔力を食事にしている。まぁ大量にあるのでアリアに吸われてもいいのだが。奏は聖竜の肉や今まで倒した獣系の肉を食べている。


 休憩が終わるとやる事もないので先に進むことにした。階段を下りていくと段々植物が増えていった。音響定位で調べると特に生物がいる感じはしない。周りは森になっており、床や壁、更に天井にまで木の根が張り付いているのにだいぶ先には開けた場所があるのが気になったが。


 罠らしきものも特になく進むのには何の障害もなく進めた。やがて目的としていた場所は開けた場所だった。周りには草や花があるが他と違って木が生えていない。

 中心にある巨木を除けば。


 そして巨木から何やら視線を感じる。よく見ると巨木の中から何かが見える。


「あれは……手?」


 巨木の中から手のようなものが見え、近づいてみた。

近づいて気づいたことはまず、巨木は中が空洞であり、所々穴が開いている。そして中に人が入っていることだ。中の人は目を閉じており眠っているようだ。中の人の手足には木が絡み付いている。そして何より気になったのはその人の胸に数本の剣や槍が刺さっていたことだ。解析で調べようにも全てが「―」表示になっていた。


「何だ、これ? こんなので生きているの?」


 その疑問が届いたのか中にいる人は目を開いた。


「あ、貴方は誰?」


 か細く震えた声が聞こえた。どうやら中の人がそう言ったらしい。


「君こそ誰? ここで封印されてるのって君?」


 あまりにも怪しいので名乗らず相手の素性を尋ねた。

 相手はすぐには答えず少し迷っていたが、どうしようもないと思ったのか口を開いた。


「わ、私はミユです。……封印されているのも私で、間違いないです」


 そう俯いて言った。


「そう、僕は寿奏……じゃなくてカナデ=コトブキ。早速だけど僕はここから出たい。ここを守っていた聖竜は僕が殺したよ。それが君の封印を解けば出れるとか言ってたけど本当? もし殺すことで出られるなら殺すことも、厭わないよ」


 裏切られ厳しい環境を生き抜き、多くの命を散らした奏にとって殺すことにあまり躊躇いは無くなっていた。寧ろ殺らなきゃ殺られる、その価値観がここで培われていた。


「聖竜はやはり死んだんですか……。あの子も可哀想に。……はい、ここを出るには私の封印を解かなくてはなりません。これはそういう、古代の封印術式ですから」


 悲しそうに話すミユ。


「ねぇ、如何したら封印を解けるの?」

「そ、それは……」


 封印の解除の方法を尋ねると口ごもってしまうミユ。それに疑問を持つ奏。


「どうしたの? まさか僕の命を代償にとか言わないよね?」

「ち、違います。ただ解除するにはけ、契約が必要でして……」


 奏の疑問に慌てて答えるミユ。


「契約……? それって?」

「古代に神が人に封印を解かせるために使ったといわれる契約です。所謂主従契約です。ですがその主というのが……私にならないといけないんです」


 段々と声が小さくなっていくミユ。そして自分がここを出るにはミユの従者にならなければならないと言われ考える奏。


「ねぇ、今更だけど君はどうして封印されてるの」


 そう尋ねる奏にミユはおずおずといった感じで話していった。


「……私は数あるエルフの里の1つで育てられました。そこで私は……巫女として、生きるように言われていました。それは私が持つユニーク属性が、原因だったのですが……。生まれた時から私は木属性という魔法属性を持っていました。それで皆の役に立つように、育てられました。……ですが、今は分かりませんが、当時は男性が女性よりも地位が高いというものでした。それで若いエルフには良くないことを考える人もいて……。私の木属性を狙ってある日男性数人で襲ってきました。私はその時突然の事と恐怖とで動けませんでした。やっとの思いで何としようと思ったらやり過ぎてしまって、相手を殺すまではいかなくても、大怪我を負わせてしまって。……それでその相手の中には里長の息子さんも居て私は危険だと言われて。里の皆の対応がそれから急に変わって、幽閉されて。やがて私を封印するという話になって。それからここにいます」


 そこまで言ってミユは口を閉じた。奏は今聞いたことを含めて考える。


 話してる時に脈拍や声のトーンに特に変な事は無かった。スキルであるなら分からないのも仕方ないかもしれないけど解析もできないし。もし話が本当でもあまり人を信じれる自信は無いし。でもそうしないと出れないってあの子だけじゃなく聖竜までもが言ってたし。


 などと1人でずっと考えていた。いずれは人と接するし仲間もできるかもしれないが、今というタイミングは正直微妙な気持ちというのが奏の本心だ。


 でもただ仲間になるよりはまだ契約とかがあった方が安心できるのかな。自分が下になるのは……仕方ないといえば仕方ないのかな


 そこまで考えて気になることを聞いてみることにする。


「ねぇ、僕が従者に成ったとして君は僕に何かさせようと考えていたりするの? もし君が先に死んだらどうなるの?」

「いえ、特に何かをさせようとは考えていません。強いて言えばずっと1人で寂しかったので側に居てもらえたら、と。あと私が先に死んでも契約が解除されるだけです」


 途中は少し声が小さくなったが奏は特に問題になる内容では無い為気にしなかった。


「最後に1番大事なことがあった。……君はここから出たいの?」


 その質問に一瞬キョトンとした様子だったがすぐに答えた。


「はい、出来ることならここから出たいです」


 そうしっかりと言った。


「そう、分かった。僕もここから出たいしそれしかないなら契約しよう。如何すればいいの?」

「ッ‼︎ い、いいのですか? ありがとうございます! 契約の仕方は貴方が私の血を飲めば終わりです。ただし血を飲む時に私の詠唱が必要です。……あの、ナイフなどで私の手を切ってくれませんか?」


 そう言ってこちらへ伸びたミユの手を軽く切る。一瞬ビクッとなっていたが特に問題はないようだ。手からは綺麗な赤い血が流れてきた。奏は手に口を付け、血を飲み始める。


「『汝、我が血の契約に応じ我が手足となれ。火のように熱く、水のように荒々しく、風のように穏やかに、土のように固く、雷のように鋭く、氷のように冷たくあれ。』」


 すると段々と奏の体が熱く、頭痛や目眩がしてきた。苦しさに目を閉じる。やがて首から左手までに熱が集中していく。次第に収まっていき、頭痛や目眩も無くなっていった。

 目を開くとミユに絡み付いていた木や胸に刺さっていた剣がボロボロになり、塵となっていった。


 その時初めて奏はミユの全貌を見た。髪は銀髪のロングで瞳は水色、エルフと言うだけあり顔もスタイルも一部を除いて整った美少女だった。

ただし裸であるが。


 本人は封印から解放された喜びで涙を流して気づいていない。奏はミユの体に目が釘付けになり動かない。

 奏も立派な思春期男子である。


 少しして奏へと視線を向けたミユはお礼を言った。


「うぅ、ありがとうございます! ずっとあのまま一人だと思っていました」


 そこまで言って奇妙なことに気づく。いつまで経っても奏が目を合わせようとしないのだ。というか顔を背けている。奏は現在髪は伸ばしたままで顔も女性っぽいのでミユは男性だとは思っていない。


「あ、あのー、どうして顔を背けるんですか?」


 と単純に疑問として尋ねた。女性同士ならそこまでする必要はないのではないか、と。


「えぇっとー、君は今裸なんだよね」

「はい。ですけど女性同士なら別に見られても構いませんよ」


 そこで一瞬固まる奏。


「い、言い難いんだけど僕、男だよ」

「……へ?」


 ミユは首を傾げて何を言ってるかゆっくり理解していく。そして段々と赤くなっていく。


「えぇぇぇ!? だ、男性だったんですか?」


 そう言って体の大事な部分を手足でかくす。


「す、直ぐに僕の家族に服作らせるから待ってて」

「は、はい」


 しかし運悪く地響きが聞こえた。


「な、何だろう?」


 周りを見渡すと原因はすぐ分かった。ミユが封印されていた巨木が崩れ天上や床、壁に張り巡らされた木の根がボロボロとなり崩壊していた。ミユにはアイテムボックス内にある奏の服を着せ、出口を探す。

 音響定位などで手掛かりを捜すが見つからず焦っているときに、ミユが巨木があった場所に魔法陣が描かれているのに気づいた。


 急いでリアに尋ねたところ転移用の魔法陣だとわかった。魔法陣はダンションでも一部の階層でしか使われず、また戦闘用のもあるがそれよりも普通に魔法を詠唱する方が普及しているため殆ど使われていない。しかし魔法陣は魔力を流せば使える為自分の属性以外が必要な時に重宝される。


 奏達は急いで魔法陣に魔力を送った。魔法は鈍く光ると奏達はその光に包まれていった。








 ――その日『始まりの終わり』が崩壊し、それに連結した『始まりの迷宮』も世界から失われた。

 多くの騎士見習い、新米冒険者、モンスターの命と共に。

次は王宮を書く予定です

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