16話 妖刀 鬼啜り
「これってやっぱり次に進む扉だよね。うーん、でもなぁ」
奏が躊躇する理由は1つだ。扉の奥から魔力が感じられる。それはでかいが、それよりも中に入るのは危険だと奏の中で何かが告げている。今まで一度もそんなことなかったからこれは相当なものだろう。
「しかもモンスターが全く近寄らない。これは今の僕じゃ勝つのは無理だね」
はぁとため息をつき、腰を下ろす。
「そういえば、『火纏』が使えるなら他の属性もできるはずだよね?」
試した結果は『水纏』『風纏』『氷纏』がスキルとして使えるようになった。
『水纏』『風纏』『氷纏』はその名の通り水・風・氷を纏う。その時に特殊効果もそれぞれ発動する。音属性はできなかった。
「これはだいぶ戦いの幅が広がったなぁ。まぁ扉の中の何かにはまだまだだろうけど。何時になったらここから出られるんだろう? それまでひたすらレベル上げかな?」
そこでふとあることを思い出す。
「あっ! そういえば安全に寝る場所を探してたんだった‼︎ ここはモンスターが寄ってこないし大丈夫だよね。」
そう言って横になる。
「はぁ、ホントどうして異世界になんかに召喚されたんだろう」
ポツリと呟いて眠った。
「やっぱりタチの悪い夢とかじゃないよね。……よし、今日は予定通りレベル上げしよっと。」
奏は立ち上がると今まで目指した方向へ歩いていった。
しばらく歩くとモンスターが段々確認できるようになった。
最初に戦ったのはケンタウロスだった。一体ではあったけど手には斧をもち、スキルに怪力、斧術、狂化を持っており、最初癖や攻撃リズムを掴んだのに途中から狂化を使われて攻撃するタイミングが取りづらかった。
次に紫の猿の群れと戦った。名前はパープルモンキーとそのまんまだったが雷魔法を使ってきた。しかし遠くから魔法を放つだけだったから近づけば今までで一番早く殲滅できた。
今までは余裕が無かったけど今は割と余裕ができたから、魔石の回収もできるようになった。
他にも大きく麻痺毒も持つ二つ首のツインスネイクなどもいた。
そして今石人形と戦っている。ゴーレムは数は20体程だがアイアンゴーレムより弱い。
奏が戦っている理由は称号に不動の守護者となっていたからだ。
ゴーレムは土魔法とスキル『再生』を使って少し面倒臭い。何回も壊しても復活してくる。とは言っても既にあと1体しかいない。他は氷纏を使って凍らせた。ずっと魔法やスキルでひたすら壊したり燃やしたりして塵ににまでしたのにこの方法を見つけた時はちょっとガクッときた。今までの意味は……と。これは攻撃した箇所を凍らせる使い勝手のいい効果があるから重宝している。
「や、やっと、おわっ、たー。正直最初楽だと思っていたのにこんなに掛かるなんて。再生とか僕も欲しいなぁ」
最後の1体を倒したが特に扉が現れるとか宝箱が出てくるとか無かった。
「おかしいな? 称号だと何か守ってるはずなのに……。まさか無駄とかないよね⁈」
周りを見るが特に何もない。音響定位でも特に反応もしない。いや、よく見ると一部分だけ若干色が違う。そこを押してみると壁にポッカリと穴が空いた。
そこに入ろうとした途端音が聞こえた。嫌な予感がして穴から出るとさっき奏がいた場所に数十本の矢が刺さっていた。
【スキル 危機察知 を獲得しました】
「危なかったー。それにしても……1本どころか数十本って確実に殺しにきてるね。だけど何かあるのは確かだね」
そう言って足を踏み入れる奏。危機察知があるからそれなりに罠も気にせず進むことができる。やがて一番奥だろう行き止まりに辿り着いた。
そこには一つの宝箱が置かれていた。
一応気を付けて近づき、罠が無いか確認して箱を開けた。
罠らしい罠は何も無かった。宝箱の中には一振りの刀が入っていた。奏がそれを手に取った瞬間背筋がゾクッとした。
罠かと思い周りを注意するが何も起こらない。だが背中の悪寒は消えない。
周りに気を付けながらも刀を鑑定する。
-----------------------------------------------
銘 鬼啜り
種類 刀
等級 伝説
妖刀。多くの吸血鬼と一角鬼の血を使って打たれた刀。吸血鬼の再生能力を持ち、刃が折れても血さえ吸わせれば何度でも修復可能。さらに一角鬼の硬さを併せ持つ。
-----------------------------------------------
「……当たりだ‼︎なんか凄いいいの手に入っちゃった。でも妖刀か。だから背筋がゾクッとしたのかな?でも呪いとかなくてよかった! 何も考えずに触っちゃったし。危なかったぁ」
奏一瞬性能の良さに頭が一時停止した。一角鬼についてはよく知らないが、主要武器に相応しいものを手に入れることができた。
奏君、背筋がゾクッとしたのに大丈夫かな?
日間7位と週間24位でした。
勝手にランキングも5位に入りました。
総合評価やブクマ、アクセスやユニークもどんどん増えてます。
正直ここまでとは最初思ってませんでした。
応援本当にありがとうございます!
これからも頑張るので暖かく見守ってください
ちなみに今入院中でペースが遅くなると思いますができるだけ頑張ろうと思います!




