15話 初めてのマトモな戦い
しばらく休んでいると問題が発生した。ダンジョンで一人でしかも高レベルモンスターがうじゃうじゃいる時どう寝ればいいんだろう?ラノベとかではあまり書かれてないけどまさか寝てないとかじゃないだろうし。
「これが雑魚しかいないならまだしも、今まで不意打ちとか死にかけのしか相手してないしなぁ。……なんかセコイな、僕って。ここが森林系のダンジョンだったりしたら隠れられたりするんだけど……。ただの迷路だし。あ、たまにモンスターの来ない休憩エリアがあるってラノベではあったっけ? ……いや、ダメだ。ここ人が来ないからそんなの無いだろうし。土魔法が使えれば通路を塞ぐとかできたんだろうけど。使えるのは火・水・風・氷・音だし。氷で何とかできる……かな?」
あれこれ考えてはいるけどいい案がない。幸い音響定位で調べると奏の周りにモンスターはいない。しかし、何時、どのくらいモンスターがくるかはわからないので早急に解決したい問題だ。しばらく考えているとふと1つの案が浮かぶ。
「魔道具とかがある隠し部屋は安全かな? でも探すとなるとモンスターに遭遇するだろうし、そもそもここが自然にできたのか分からないから無いかもしれないし。……あー独り言が多いなぁ。あんな目にあったのに、寂しいのかな……? まぁいいや、それはいつか考えよう」
そしてしばらく考える。
「探すかな」
そう言うと立ち上がり今まで進んだ方向の通路へ向かった。
しばらく考えて気づいたことが2つある。
1つは歩くときに水と火の魔法を使って霧を発生させて視界を悪くする。別に音で感知できるから奏にとっては不便ではない。スキル『無音』も使えばある程度は大丈夫なはずだ。相手に知能がなければだけど。
2つ目は最初にオークやゴブリンを倒した後に壁を壊して出ればよかったのではという疑問。魔法を今できる最大火力で壊せば出られたかもしれない。
それに気づいた時泣きたくなった。なぜ気づかなかったのか、そしてなぜ今更気づくのか、と。
とりあえず壊せなかったらモンスターが集まって死んだかもしれないと無理やり納得することにした。
しばらく歩いているけどモンスターには会っていない。というのも今までまともに戦っていないから戦う勇気がない。だからできるだけいない道を音響定位で選んでいる。
だけどそれもどうやらここまでらしい。前にでっかい芋虫のモンスターがいるのが分かった。数は4体だ。後ろは十字路でほかの道にもモンスターがいるからこの道を選んだのに。
解析で見てみると
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メルトキャタピラー
レベル 53
体力 860/860
魔力 940
筋力 880
物耐 1340
敏捷 320
魔攻 1210
魔耐 540
スキル
溶解液 皮膚硬化
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まずいな。傷ついてないし攻撃が強いし物理が全然効かない。魔法で行くしかないけど数が多いな。あっちもこっちに向かっているようだから先手を打たないといけないけど。
まずは虫系の苦手そうな火魔法を用意する。
「“火を纏いし 矢と成りて 我が敵を射抜け 火矢”」
魔法を詠唱しできる限り全力で放つ。それを何度も繰り返す。1度に8発ずつを4回繰り返し様子を見る。
「やっぱりまだまだか」
メルトキャタピラーのステータスを見ると減ってはいるけど特に気にした様子もなく、むしろ敵に気付いて速度が増した。
少しずつ後ろへ下がりながらひたすら魔法を放つ。
「くっそ! 全然体力が減らないや。 “あらゆるものを穿ち 燃やし尽くせ 火槍”」
このままだと倒せはするけど後ろへ下がりすぎるとほかのモンスターにやられる恐れがある。かといって近寄って剣で戦ってもあまり効果が出ないで敵の攻撃の餌食になる可能性がある。何か倒すヒントがないか考える。
「何か無いかな? 何か……」
すると後ろから咆哮が聞こえた。距離はあるけど本格的にヤバイ。奏は急いでどうするかを考える。忌避音だと怯ませられるが逃げることはできないだろう。かといってほかに今のところ打開策がない。
音解析でさっきの咆哮は不意打ちで倒した炎狼だと分かった。まだばれていないが時間の問題だ。
「うわっ、ホントどうしよう。…………ん? 狼?」
魔法は体系化されているものしか使えず、新しい魔法を作るのは難しいと聞いた。中には古代魔法と呼ばれるものもあるが文献には残っておらず使えるものはいない。
「じゃあ、あの狼の魔法は古代魔法なのか?」
だけどここは800年前にできた場所だ。古代魔法はそれよりもはるか昔のものだ。しかし炎狼の使う体に火を纏わせる魔法は聞いたことはない。
「もしかしたら体系化された魔法しか使えないっていうのは違うのかな?」
そう思い火属性の魔力を手に集め、手に火を纏わせるイメージをする。しかし、何も起こらない。
「やっぱり、魔法名は必要なのかな? えーとじゃあ『火纏』 …………で、できた!!」
【スキル 火纏 を獲得しました】
手に火が纏わせることができた。少し焦げ臭い気もするけど。もしかしたら魔法はイメージが最も重要で次に魔法名そして詠唱なのかもしれない。
だけどまさかスキルになるとは思わなかった。炎狼はスキルではなかった。どういう原理なんだろ?
「うぅ、それにしても加減が難しいね。少し手が焼けている気がする。でもこれで近接戦闘もできる。だけど紙防御だから注意しなきゃ」
広間で休憩しているときにアイアンゴーレムの皮膚とオークの骨で作った剣モドキを取出しそれに火を纏わせる。奏は不格好だけど慣れない割によくできたと思っている。
「よしっ、準備はできた!」
思い切って走りだす。一応魔法を使いながら近づくがメルトキャタピラーもスキル『溶解液』でこちらに対して反撃してくる。一応敏捷が高いおかげで避けられる。そろそろ次の段階に行かないと。
「〝忌避音”!!」
よし、で敵が集中力を切らした。その隙に火纏で火を纏わせた剣で切り裂き、さらに火魔法を纏わせた足で蹴りつける。その時に魔法では攻めるのも忘れない。
「だいぶ上手くいってるな。中級魔法が制御できればいいんだけど……まだ不安があるしね」
中級魔法はまだ失敗するときもあるからあまり使いたくない。そんなことを考えているとメルトキャタピラーが溶解液を吐き出したのに反応が少し遅れ、剣と腕にかかった。
「あ、熱!! “水の浄化”、“水の癒し”」
すぐに下がり治療をする。その時、メルトキャタピラーが突っ込んできた。普段は遅いのに瞬間的に早く動いたため奏は攻撃まともに喰らってしまった。
「うがっ! げほっげほっ。やばい。肋骨折れたのかな? 肋骨が折れたことないからわからないけど。……やっぱり賭けに出るしかないのかな。」
そう言って奏は構える。
「“天地の全てを焼き尽くし 灰と帰す 火柱”」
そう言うと地面から火柱が立ちメルトキャタピラーを飲み込んだ。
火柱が消えるとそこには焦げたメルトキャタピラーの死体があった。
「ふぅ。何とか初めてのまともな戦いは勝てたけど。やばいなぁ。早くここも移動しないと狼が来ちゃうし」
身体を回復させながら移動を急ぐ。しかしそう上手くはいかない。
「ワオォォォォン!!」
先ほどまで戦闘していたからばれたらしい。魔法を後ろへ放ちながら走る。
「けほっ、こほっ。きっつい。・・・はぁ、はぁ」
ひたすら走るが怪我しているため本気で走れず、すぐに距離が詰められていく。音響定位ではもう追いつかれる距離だ。
近すぎて魔法が当たりやすくなってはいるが全てに当てられるわけではない。
あと8メートル程の所で急に炎狼はとまった。突然止まって近づいて来なくなったので首を傾げるがよく分からない。
心なしか震えている気がする。そして後ろへ向きを変えて走り去っていった。
理由は分からないがラッキーと思い回復しながら先へ歩く。奇妙な事にこの先には音響定位で調べてもモンスターはかなり先の方になる。
さらに奇妙な事があった。進んでいる途中、壁に大きな扉が埋め込まれていた。
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