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12話 少女たちの後悔

 私は何が起こっているかわからず体が動かなかった。



 彼と出会ったのは元居た世界、地球の小さな島国、日本のとある中学校でだった。


 私には双子の兄がいる。だけど私は兄である勇真が好きでない。理由はすごく単純で兄は小さいころから人気者で周りからちやほやされていたため、自分中心の思考となりなんでも自分勝手に解釈するからだ。しかもそれで基本良いことしかしないから性質が悪い。


 彼と私は中学3年で同じクラスになって知ることになった。彼は私より慎重が低く、少し女の子みたいな顔立ちをしていた。そして彼はクラスの男子数人に虐められていた。理由は虐めている男子が彼の幼馴染に好意を抱いているかららしい。


 彼はいつも耐えていた。私は少しくらい反撃すればいいのにといつも思っていた。でもいつも彼は何もしなかった。やがて勇真が止めて彼を虐めている男子たちは離れていく。それで終わりかと思いきや勇真は


「お前にも原因はあるんだぞ」


 と言っている。あぁ、彼も勇真の犠牲者なんだ、私はそのくらいにしか思っていなかった。



 私たちのクラスは突然教室が光り、自分を神だとかいうよくわからない女性と会い、よくわからないまま異世界へ召喚された。友達の中にはラノベみたいとはしゃいでいる子もいたけど今一分からなかった。


 その後国王とかいう人に国を救ってほしいと頼まれたが、要は戦争の兵になれというようなものだった。あまりしたくなかったが勇真のせいですることになった。


 次の日ステータスプレートを作ったが、私の職業は『侍』だった。なんとなく剣に関係あるものだろうと思っていたけど『侍』とは。理由としては私は地球で小さいころから剣道や居合道を習っていたからだ。ちなみに、勇真は習っていなかった。私は昔は内気な性格でそれを変えたくて習い事をしようとしたが、近所のお姉さんがかっこよくてそれにした。しかし残念なことにこの世界に刀はあまりないみたいだ。


 そして私は彼と初めて話をした。彼は『歌姫』というよくわからない職でこの世界の人に煙たがられていた。彼は桃華ちゃんや渚、奈央ちゃんたちの紹介で受け流しを教えてほしいとのことだった。私は渚とは小学校からの友達で教えることとなった。彼はあまりにも筋力が低くまともに受けたら飛ばされるとのことだった。


 私達はそれからよく話すようになった。彼は最初私が勇真と双子だから似た性格だと思っていい感情を持っていなかったようだ。仕方ないと思うが、腹は立った。

彼は少しでも皆に追い付くようにたくさん努力していた。夜に自主練しているのもたまに見かけた。


 やがて彼の紹介でリエラ王国第二王女であり、騎士団所属のクリスと友達になった。彼女はいつも夜に彼と模擬戦などをしているらしい。

 そんなことなら私に声をかければ彼の練習相手になるのに……。



 彼はこの世界でも虐められていた。しかも召喚した側の騎士たちも特になんとも思っていない感じ。だから私が守ってあげなくちゃいけない。


 気づけばここに来て大分経つ。そして、私たちはダンジョンへ行くことになった。ダンジョンへ向かう馬車は私と彼と騎士団の人たちだけだった。私は彼とたくさん話を聞いた。最近彼といるのは楽しく感じてきた。もっと話がしたいが時間がたつのは早い。


 ダンジョンへ潜りこむと順調に進んでいった。正直言ってここのモンスターは弱い。すぐに5層まで進んだ。5層の途中で彼が道が違うのでは?と騎士に聞いていたが、そうでないらしい。


 私は昨日から何か違和感があった。皆ピリピリしている。ダンジョンへ入り下層へ行くごとに緊迫感が強くなっている。まぁ、死ぬ危険もあるからかもしれない、その時はそう思っていた。


 やがて彼から聞いた『始まりの終わり』という場所についた。ここは入ると危険でそのため近くにここの本来のモンスターは近寄らないと聞いた。ここで騎士団長のドルマが休憩を指示した。


 ……その時だった。


 彼が急に吹き飛んだ。恐らく魔法だろう。大分抑え込まれていたようで彼はまだ生きていたが、彼がいたのは『始まりの終わり』の中。彼は急いで出ようとしたがクラスメイトや騎士が彼に魔法を放っていた。


 そして彼が何とか穴まで来たが結界に阻まれた。すると彼を虐めていた八重沼とかいうグループが前に出てきた。彼らが言うには彼は『災禍の供物』として生贄になるらしい。聞き間違いだと思ったがどうやらそうではないらしい。彼は幼馴染たちに助けを求めていたが皆彼を見捨てた。私に視線がむかなかったのは残念だけど、何が起こっているか整理できず混乱していたから何もできなかったと思う。


 そこに勇真が


「生きて帰ってくるのを信じている!!」


 と戯言を言っていた。勇者のくせに他人を切り捨てて何を言っているんだろう?


 そして穴が塞がった。皆それに安堵の表情を浮かべていた。中には罪悪感で暗い表情をしているのもいたけど。


「どういうこと? あなたたちは自分が何をしたのかわかっているの?」


 振り絞って出した声は震えていた。すると近くにいた女の子が説明してくれた。


 そして分かった。彼は仕組まれたものだったと。勝手に呼んだくせに使えなければ切り捨てる。そして彼、寿奏では殺された。


「よし、お前ら行くぞ! 今日は一度宿に戻る」


 ドルマの声が響いたが、私はどう帰ったのかよく覚えていない。


 宿のベットでボーとしていた。ご飯は食べていない。そのうち暖かいものが流れてきた。涙だと気付くとだんだん抑えられなくなり、枕に顔をうずめて泣いた。泣き止むとだんだん自分が情けなくなってきた。自分が守らねばと思っていたのに一歩も動けなかったからだ。


 その時ドアがノックされた。誰にも会いたくなかったがノックの主は去ってくれない。仕方なく開けると、そこには隣部屋の桃華ちゃん、さらにその隣の奈央ちゃん、そして向かいの渚が立っていた。その手には晩御飯だろう、パンとスープがあった。中に入れると


「美咲、ご飯食べないとダメだよ」


 渚がそう言った。その言葉に段々怒りが湧きあがってくる。


「どうして?! あんなことがあったのにどうして平気でいられるの? あなた達は自分が何したかわかっているの?」


 つい叫んでしまった。

 


-----------------------------------------------


「どうして?! あんなことがあったのにどうして平気でいられるの? あなた達は自分が何したかわかっているの?」


 私は今友達の美咲ちゃんに責められている。いや、厳密には私ではなく私たちだが。


 理由は分かっている。幼馴染である寿奏を見殺しにしたからだ。


 彼とは私が小さいころから隼人君と一緒にいる。いわゆる幼馴染というものだ。そして彼は少し乱暴な隼人君と違っていつも私を気遣ってくれた。最初はいつも後ろをついて行ってばっかでお兄ちゃんみたいな存在だった。だけどいつの間にか恋愛対象として、男女として見るようになった。

 彼はいつも助けてくれた。私は引っ込み思案だけど安心させてくれた。


 なのに彼が虐められているのを止めることができなかった。いつも虐めている八重沼君たちが去って行った後に心配の言葉をかけるしかできなかった。原因が私であることを知っているのに。

 私は八重沼君に中学2年生の時同じクラスになって告白された。でも私はそのころには彼が、カナちゃんが好きだったから断った。八重沼君は誰か好きな人がいるのか?と聞いてきた。だから本当のことを言った。そしたら、しばらくしてカナちゃんが虐められるようになった。それでもカナちゃんは優しくしてくれた。


 そして今回もそう。突然異世界に来て不安な私を気遣ってくれた。


 なのに今日私はカナちゃんを見捨てた。自分の命欲しさに大切な人を、守ってくれた人を見殺しにした。彼が助けを求めたにもかかわらず、目を逸らしてしまった。


 今日はそれで宿に戻ることになった。できるだけ何も考えないでいつも通り過ごすようにした。じゃないと罪悪感でつぶされそうになるから。ご飯の時美咲ちゃんだけ来なかった。だから私たちで運ぶことになった。


 ドアをノックしたけどなかなか出てこない。それでも続けると、ドアが開いた。そこには目を赤く腫らした美咲ちゃんがいた。中に入って渚ちゃんが心配そうに声をかけたら美咲ちゃんは叫んだ。


「「「…………」」」


 私たちは最初驚いたが誰も答えられない。美咲ちゃんはそれに何も言わないで待っている。


「ぼ、僕たちだって本当はこ、こんなことやりたくなかったよ。で、でもそうしないと僕達が代わりに死ぬんだ!」


 奈央ちゃんが何とか答える。それに続いて渚ちゃんが言う。


「それに美咲だって事前に聞かされてたんでしょ? なのに動かなかったじゃん!」


 それに対する美咲ちゃんの答えは私たちの予想していないものだった。


「きかされてないわよ」

「「「……えっ?」」」

「私はそんなこと聞かされてもいないし、知らなかったわよ!」


 私たちは思考が固まる。まさか知らなかったとは思っていなかったからだ。


「貴方達にとって彼はその程度のものだったってことなのよね。あなたたちは知ってて見殺しにしたのよ。幼馴染のあなたでさえ、ね。……あの時動けなかった私も同じように見殺しにしたようなものだけれど」


 美咲ちゃんは悲しそうに、悔しそうにそう静かに言った。


 その言葉を聞いた瞬間、私はものすごい後悔が湧きあがってくるのが分かった。と同時に心の奥に突き刺さった。


 あぁなんて馬鹿なことをしたんだろう。自分が生き残りたい事しか考えてなかった。何度も助けて安心させてくれたのに。あんなにも大切だったのに……もう一度会いたい。自分で見捨てたのにそんなことを思ってしまった。同時に涙が流れるのを感じた。一度流れ出すと止まらなかった。

 隣の二人も自分のしたことの重さに後悔して泣いているようだった。


「私はいずれ城を出るわ。そして彼を探す」


 ぽつりと美咲ちゃんがつぶやいた。

中途半端な感じもしますがとりあえず終わりです

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