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(二) 裏切りの城 ≪第八話≫  No.8-Ⅱ

(二)裏切りの城

 ≪第八話≫                     No.8-Ⅱ

 あちこちで梅の花が(ほころ)び出した頃、権坐からの報せが早馬で届いた。白根に2,000を越す三条・斎藤勢が向ったと云う報せであった。悪い知らせは、更に届けられた。岩室で謀反が起って、幽閉されていた荒田照(てる)()が高野和久・雅代夫婦を惨殺(ざんさつ)して、天神(てんじん)(ざん)城に立て籠った。背後に斎藤氏が動いていたのである。長者原山で俊高達を襲った刺客(しきゃく)も調べた結果、斎藤家の廻し者であった。

 いよいよ、この地方一帯の最強者である斎藤義政・義兼・(よし)(おき)三代が動き出したのである。義政は8年前に隠居していたが、実権はしっかり握っていた。政務や軍事は嫡男の義兼と孫の義興が押さえていた。

 この数年、西蒲原一帯の政変に手を出さなかったのは、栃尾(とちお)五十嵐(いからし)氏が勢力を増し、斎藤領の西部方面を(おびや)かしていたからである。その攻防も一段落が着き、義興率いる斎藤軍は、その後、直ぐに白根城を囲み、佐藤政綱に降伏を迫った。3度に亘る稲島合戦で、致命的な傷を負った佐藤氏であったが、さすがに政綱も武士であった。

先代までは、斎藤家の筆頭家老職に就いていた家柄である。政綱の時、斎藤家は、新津・秋葉家との度重なる戦に勢力を弱め、その(すき)を利用して主家から離れて戦国城主となったのである。

 意地もあったが、政綱はどうしても、再び頭を下げたくはなかった。どうせ死ぬのなら、一国の(あるじ)として城を枕に討死したかったし、また稲島俊高に、最後の息子であった政時や主だった家臣の殆んどを倒されてしまい、活きる気力の殆んどが、失せていた。だから、最期は、侍として散りたかったのだ。

 義政の戦略で白根攻めと同じくして、岩室攻略の命が下っていた。俊高にとり、和久・雅代夫婦の死は心に重く突き刺さった。昨年の亀城攻防戦後、高野和久は、亡くなった実父の荒田惣衛門や兄の照美寄りの家臣団をまだ、掌握(しょうあく)出来ていなかったので戦後、更に俊高とは毎月縁を深めていたし、子供のいない雅代の方の願いで、妹の三和を養女にして近隣から婿(むこ)を取る準備をしていた。三和も今年17歳となり、大層大人びて美しい娘に成長していた。和久・雅代夫婦は心から、三和を可愛がってくれていたので、今まで淋しい思いばかりさせていた兄・俊高としては、安堵(あんど)していたのだ。

 そして、その三和に縁談が調(ととの)った。10年来、(きゅう)(てき)であった岩室の高野家と5家の和合が出来たので、更に良き絆を結びたいと、笹川常満が従弟(いとこ)笹川行(ゆき)(みち)を推挙してきたのである。18才のこの青年は、背も高く常満のような豪胆(ごうたん)さはなかったが、誠実でけれんみが無く俊高も気に入ったが、三和自身も喜んでくれた。祝言は雪解けを待って4月初めとなっていた。

 その矢先の悲劇であった。斎藤家の援護を借りて、照美派は、幽閉されていた照美を救い出し、一挙に当主館を攻めて、和久・雅代夫婦を殺し、三和を人質にして、天神山城に凡そ300人で立て籠もった。

 俊高は中之口川を挟んで、佐藤領に接している笹川・柿島両家に白根大橋と曽我橋の入口を閉鎖させ、守備の兵を配置させた。そして直ぐに、5家の重臣たちを長者原城に集めて、(いくさ)評定(ひょうじょう)を開いた。

笹川家からは当主の常満・弟の(つね)(とよ)、侍大将の木島勘平、そして三和の許婚(いいなずけ)となった行充が来た。柿島家からは、当主の信政・家老の酒井建脇、草日部家からは、当主・英郷の嫡男・(たか)(ひで)、筆頭家老の本間文丈・侍大将の永島公英が参加した。稲島からは、弟で今は支城の平沢城主・高喜、筆頭家老の佐野高兼(旧姓・真島弥七郎)、侍大将の真島良高(旧姓・清水寅之助)、勘定方・遠藤佳臣、そして高野家からは、和久夫婦救出の折、援助した清水雅兼と長谷川芳直が参加して、俊高を含め総勢16名が以前の亀城評定の間の3倍はある新設中の大広間に向かい合って並んだ。



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