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≪第廿四話≫  No.28 < 主な登場人物>

≪第廿四話≫      No.28

夕刻に高野和久が(うたげ)の席を設けてくれたので、両家の親睦が更に深まった。俊高は越後の男でありながら酒は好まなかった。先々代の俊兼が大層の酒豪で鳴らし、其の為、寿命を減らした事や、父の俊秋が胃臓の病で早死した事もあり、云わば本能的に飲酒を避けていた。それでもこの様な祝いの席では口にしないではいられなかったが、そこを和久が取成してくれた。宴は夜半まで続いた。

慣れない酒の廻りもあって、離れの客間で俊高は寝入っていた。どれ程の時が流れたのか、腑と物音で目が覚めた。思わず、床に備えていた小刀を握りしめた。辺りを警戒しながら床から離れると、障子を開けて廊下に出た。夜はまだ底冷えのする時期である。廊下には板戸(雨戸)が閉められていたが(かんぬき)を外して庭に出た。三月・弥生の半月が薄蒼く夜景を照らしていた。庭には(かがり)()が燃えているだけで、人気(ひとけ)はなかった。

静かな夜に寒さを忘れて月を眺めていると又、物音がして後を振り向くと廊下に小さな人影が立っていた。「何者だ!」と小声で(つぶや)くと俊高は身構えて凝視(ぎょうし)した。「大兄者(おおあにじゃ)・・・」小さく(かす)れた声で妹の三和がそこにいた。「三和!」俊高の声に小さな影は庭を走り、俊高の胸に飛び込んできた。

幼い時、三和は小太郎俊高の事を「大兄者」、喜久次高喜の事を「小兄者(ちいあにじゃ)」とよんでいたのである。声を殺して三和は泣き続けた。「辛い事があるのか!?」俊高が耳元で(ささや)いた。三和は首を振りながら答えた。「いいえ、叔母さまは良くしてくれます。・・・・でも・・・」「でも、どうしたのだ?」少し間をおいて「私、稲島に帰りたい。兄者たちと暮らしたい・・・」二人は春の薄寒い月光の中で抱合って泣いた。

「俺が必ず迎えに来てやる!」俊高は震える声で三和を励ました。その姿を少し離れた廊下の隅で和久・雅代夫婦が見詰めている事を二人は知らなかった。



主な登場人物

≪稲島家≫・・・稲島

◆初代・俊明・・・・5代・俊兼、 6代・俊秋(父)34歳(他界) 母:美知の方(他界)

●7代・当主:小太郎・俊高16歳 (あや) ()(俊高・正室)15歳・・・草日部氏(赤塚)

●喜久次・高喜 14歳

●佐野久衛門・俊種 52歳:筆頭家老  

●真島弥七郎高義 28歳     ●清水寅之助19歳

●横山重光50歳        ●朱鷺の権坐37歳:根来の忍び

●吉田三左衛門豊郷 48歳   吉田嘉助豊則(嫡子) 30歳  

遠藤佳(よし)() 45歳  遠藤佳臣(嫡子) 29歳       


≪佐藤家≫・・・白根

●当主:政綱52歳  政時(四男)33歳

●忠政(政綱の弟)45歳  忠勝(嫡子)29歳

●児玉監物忠文:次席家老、37歳 策士  ●坂下主膳:筆頭家老53歳


≪高野家≫・・・岩室

●当主:和久38歳 (辰実の次子) 正室:雅代(俊高の母方の叔母) 

 ●三和(俊高の妹)11歳

荒田惣(あらたそう)衛門(えもん)(たつ)()(和久の父) 筆頭家老57歳

≪笹川家≫・・・中之口

●当主:(つね)(ゆき)45歳   常満(嫡子)18歳

●行貞44歳 常行の実弟  ●木島勘平20歳 常満の側近


≪柿島家≫・・・味方

●当主:(のぶ)(よし)42歳  信政(嫡子)21歳 妻:希恵 23歳  妹:芳葉 15歳

 

≪草日部家≫・・赤塚

●当主:英郷32歳   ●鼓寄の方

●本田与一益丈51歳  ●菅田須衛門30歳  ●楓18歳


*年齢は、主人公・俊高の16歳時に設定






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