第3話
無機質な白い天井、視界の隅にはちらりと見える赤い線。
「カ…リス…?」
その赤に手を伸ばすと、しっかりと握りしめてくれた。
「大丈夫か?まだ痛いところはないか?」
そう言って僕の顔を覗き込む。深い藍色の瞳と目が合った。
僕はゆっくりと起き上がり、何が起こったのかと状況を整理した。
ここはナイト学園10階にあるカリスの部屋だ。どうやらここまで運んできてくれたらしい。
たしか警備していた時に襲撃されて…。それで、戦ったんだ。でもラルとミカリが捕まって ー
「ラルとミカリは!?」
僕は叫んで辺りを見回した。
カリスは気まずそうな顔をして目をそらした。
「おいカリス。これから助けに行くのにそんな弱気でどうすんだ」
ふとドアの方から声が聞こえた。そこにはリスクがコップの乗ったお盆を持って立っていた。
リスクはずかずかと部屋に入るとカリスの頭を軽く叩いた。
「シャキッとしろ!最年長がそれでどうする」
「悪かったな、こんな奴が最年長で!」
リスクに叩かれたところをさすりながらカリスは小さく笑った。
リスクが持ってきてくれたコップの中身を飲んで話を聞くと、どうやらラル達は『悪心を持つ者』の本部に連れていかれたらしい。しかし気絶してしまった僕を1人には出来なかったらしく、取り敢えず作戦を練っていた…ということだそうだ。
頬を触ると湿布がされており、そのおかげもあってかもうあまり痛くはない。きっとリスクがやってくれたのだろう。ナイト学園に入学する前に医学を学んでいたと聞いたことがある。
「それで…スリクの体調が良くなり次第助けに行こうと思うんだ。勿論3人だけで。 先生方を待ってるというのも1つの手だけれど、ラルとミカリがそれまでやられないという確証はない」
カリスは思い詰めた表情で俯いた。
それをリスクがまた軽く後ろから頭を叩き、腕組みをする。
「今まだやられてないという保証もないからな。早いに越したことはないし。スリクが準備出来次第、僕は行こうと思ってるけど」
「オレも同じ意見だよ。だからと言って、スリクも無理する必要はないからな。心配だが…先生が帰ってくるまで待ってても良いし」
僕はグーパーと両手を動かした。
ここで見栄を張ってついていき、2人の足手まといになるわけにはいかない。そうすれば自分どころか2人を危険な目にあわせることになる。
近くにあった剣の柄を握る。大丈夫だ。ちゃんと戦える。
僕は頬の湿布を剥がすとベッドから降りて立ち上がった。それを見て2人は頷いた。
「お前のことだから足手まといになるとかなんとか考えてたのかもしれないけど、辛かったら休むこと。皆で帰ってくるんだから」
「そうだぜ!さっきの戦いのせいでお前が本調子じゃないことくらい僕達分かってるんだぜ?それをカバーするのが僕達仲間の仕事だ!ってな」
自分の剣を握りしめて不安を和らげていた僕に、カリスは頭に優しく手を置き、リスクは笑って軽く背中を叩いた。
第8区、それが奴等の本部のある場所だ。
なぜそこまで分かっていて何も対処していないかは、奴等の規模の大きさや情報の少なさにある。だから迂闊には近付けないのだ。
「初めてだな…本部まで乗り込みに行くのは」
先端が見えないほど高くそびえ立つ目の前の塔を見上げ、カリスはぽつりと呟いた。
「もしかしたらナイト学園史上初かもしれないぜ」
不安を紛らわすためかそれとも本心か、リスクはうっすらと笑みを浮かべて両手に構えた短剣を回した。
この先にはどんな敵がいるのか分からないんだ。いつも戦っている敵はかなりの下っ端で、ここにいるのはもっともっと強い敵なのかもしれない。僕達なんて相手にならないかもしれない。
それでも、行くしかない。
ラルとミカリを助けるんだ。
「行こう」
僕は自分に言い聞かせるように、強く、そう言った。
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次回更新は12/17(火)です!
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