第1話
「やばいやばいやばい」
僕は教室へと続く廊下を全速力で駆けていた。毎朝清掃員さんによってピカピカにされるタイルは今の僕には強大な敵だった。初めてこの学園に入った人が何人か迷子になったこともあるこのカクカクとした廊下も言わずもがな僕の敵だ。
『ガラガラバタンッ』
「皆おはよう!」
大きな音と共に登場した僕を1度チラリと見て、皆は挨拶を返してくれるわけでもなく皆だけで話し始めた。
僕は少し疎外感を感じ、静かにドアを閉めた。
「あの…おはよう」
僕がもう1度、今度は落ち着いてそう言うと、カリスが振り返って驚いた顔をした。
「あ、あぁ…悪い。おはよう」
先程振り返った時は全く僕に気付いていなかったという感じだ。
カリスというのはカリス・センナス。このナイト学園の生徒の中で最年長20歳のお兄さんで剣士だ。赤の長い髪が凄く綺麗で、いつも高いところで1つにまとめている。
因みにナイト学園というのはこのミステナ国にいる悪心を持つ者という殺人グループと戦うための教団のようなものだ。
「お、スリク!お前いたのか!悪いな、ぼーっとしてて。おはよ!」
カリスの肩をポンポンと叩き、リスクがいつもの笑顔で僕の肩を組んだ。
リスクとはリスク・ライン。カリスに次いで2番目にお兄さんな16歳だ。金色の短髪が似合う、剣術のアシス先生と親子なのではと噂になっている剣士だ。
「リスク…?」
僕はリスクの笑顔と肩を組む力にいつもとは違うものを見つけた。
「ん?どうした?」
「肩…痛いよ。それに、唇から血が…」
リスクは唇を舐め、少し気まずそうな顔をするとニコリと微笑んだ。
「大丈夫だよ」
全然大丈夫なんかじゃない。
きっと何かあったんだ。
「皆どうしたの?今日、なんか変だよ?」
だって、いつもならこんな遅刻ギリギリの僕に注意の1つや2つなんて当たり前だ。それなのに何も無い。
呆れられた、嫌いだから注意しないというのも考えられるが、それなら完全無視のはずだ。
すると、ラルが溜め息をついて1歩前に出た。
「あなたが知らないのは無理もないわ。私達だって今朝知ったんですもの」
皆が暗い顔になる。一体どうしたというのか。
ラルとはラル・ア・ミステナ。この学園で女子生徒では最年長の15歳のお姉さんだ。薄いピンク色の短髪が綺麗に整えられていて、名前の通りこの国のお姫様で回復魔法使いだ。
「スリクさん…何か知っている事はありませんか…?」
ミカリがおどおどと聞いてくる。
ミカリとはミカリ・フリス。この学園の女子生徒でラルの次にお姉さんな12歳だ。薄い黄緑色の短髪の攻撃魔法使いだ。
因みにスリクは僕。名前はスリク・ルナンス。銀色の長髪を高いところで1つにまとめている、この学園の最年少10歳。剣士だ。
「何かあったの?どうしたの?」
僕の言葉に沈黙が起こる。少し口が開いてはすぐに閉じてしまうばかりだった。
本当にどうしたというのだろうか。皆いつもと雰囲気が違う。何か…怖い。
中々破られない…その沈黙を破ったのはカリスだった。
「なくなったんだ」
そうぽつりと呟いた。
「何が無くなったの?」
僕がそう言うと、カリスはゆっくりと首を横に振った。
「何が、じゃないんだ」
「えっ…じゃあ…」
僕は嫌な予感しかしなかった。
カリスの言葉は僕に重くのしかかった。
「校長先生が亡くなったんだ」
読んで下さりありがとうございます!
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いきなりこんなはじまり方で良いのかと思いましたが、これから…ですね!
次回更新は12/10(火)に更新できればと思います!
遅くなってしまったらすいません(汗)
よろしくお願いします!