プロローグ
「スリク、寝てしまったのかな?」
懐かしい声に目を開ける。
昔僕が大好きで使っていたチョコレートのシャンプーの香りが鼻孔をくすぐり、胸一杯に広がる。僕を温めてくれる彼の体温。そしてとても安心する…鼓動。不規則なリズムで僕は懐かしい仲間の背中で揺れていた。
「起きてるよ」
僕はいつもそう答えるんだ。
すると君が、
「起こしてしまったのかな?」
って言うんだ。
あぁそうか、これは夢か。そうでなければ僕はこれから死ぬ…いわゆる走馬灯ってやつか。
懐かしい、昔の思い出だ。広い庭に遊びに行っては帰り道にはよく眠ってしまっていたものだ。
「レクア、俺代わろうか?ずっとは疲れるっしょ」
「だめよ、イアクになんて任せてられない!私が代わる!」
「何か言ったか、リア?」
誰が僕の面倒を見るかでよく喧嘩していたのも今では良い思い出だ。この2人は違うことでもしょっちゅう喧嘩していたし。
「僕、自分で歩くよ!」
2人で喧嘩を始めてしまうとどちらかに任せるというのはさらに喧嘩を引き起こす原因となるので、僕が起きていればちゃんと自分で歩いたっけ。だけど結局、まだ眠いから躓いて転んでしまうんだ。
「大丈夫!?痛いところは!?」
あの2人はすぐ走ってきて、彼は後からだけど慌てながら凄く良く怪我がないか見てくれて。それでみんなに心配されて。だけど僕もまだその頃は幼かったから、泣くことしか出来なかった。
結局また彼の背中で揺られて帰る。
「あ、見て見て!」
あぁ、これはあの時のか。
「何だよリア、大声なんか出して」
「ほら、この前スリクが転んで踏み潰しちゃったお花、あれ私達で育ててて大きくなったから庭に植えたじゃん!それに蕾がついてるよ!」
「あ、ほんとだ!」
多年草だって聞いて、これから先の蕾も全て守ってあげようと決心したんだっけ。たとえ雪でも嵐でも。
あの頃は蕾も自分の掌にやっとの思いで収まるくらいだったが、いつの日か片手でも優しく包み込む事が出来るようになりたいと思った。
それでも、今目の前にあるその花は僕には大きすぎて、両手でも溢れてしまうほどに成長した。
それと同時にまた来年も、そのまた再来年も、いつまでも咲き続けていられるようにと、かけがえのない物へとなっていくのを僕は感じていた。
『Ambassador rain』始まりました!
感想や御指摘などお待ちしております。
これからよろしくお願いします!
次回更新は早くても12/9(月)になると思います!