第六十八話
どうも、パオパオです。
今回、自分で何を書いたか理解していません。
ちょっと、白い記録帳Ⅱをやってたら情緒不安定になりまして。
自分でも理解できていないくらいなので、変な所も生温かく見逃していただけたらと思います。
――勇者とは、絶望に窮する者である――
「あ……は……?」
体から平衡感覚が失われつつあるの感じをながら、ボクはネミコの言葉を聞いていた。魔術。それは、限られた人間だけが使える奇跡。
それを使うのは、魔物の王。つまり、魔法生物たちの王。その名を冠しているネミコが、魔法を使えないわけがあるだろうか。
ネミコの持っている大剣。あれはもしかして、ボクの剣と同じ、何かしらの加護の込められた一品なのではないだろうか。
魔術と魔法を同時に使う、世界で初めての人間。史上その存在を確認されていない絶対強者を相手に、ボクに一体何ができただろうか。答えの出ない問いがボクの中を廻り、ボクは何もできなくなった。
「……あら、少し刺激が強すぎたかしら?」
目をぱちくりさせながら、ネミコはボクを見てそう言った。ネミコはボクがこうなるとは、想像できなかったようだった。
ボクの足元には取り落とした剣が転がり、ボクの瞳は虚空を見つめていた。木偶と変わらなくなったボクを見て、ネミコは不満そうに頬を膨らませた。
「何よ、私がただ魔法も魔術も使えるってわかっただけでそんなに絶望しちゃって……。いいの、それで?勇者たるラマが諦めるんだったら、私はもう世界滅ぼすわよ?そのための力はここにあるんだから」
挑発するようにネミコが発した言葉にも、ボクの心は動かされなかった。そう、ボクに出来ることなんてもうなかった。ボクの唯一の攻撃手段は意味がなく、そもそもボクの命さえ始めからネミコの掌の上にあった。そんなボクに出来ることなんて、元々なかったのだ。
「……ちょっと、ラマ、いいのね?あなたは私にまだ五十回攻撃してないから生かしておくけど、他の人間は容赦なく潰していくわよ?それで、本当にいいのね?」
――?ちょっと、待って。何で、ボクが殺されないんだ?
ボクが生きてどうなる?いつか強くなってネミコを倒す?そんなことは不可能だった。幼い頃からの喧嘩でさえ、一度として勝ったことのない相手に、ボクが勝てるはずがなかった。
ボクは生きてどうすればいい?人のいなくなった世界で、ただ緩慢に死を待ち続ければいいのか?いつネミコの気が変わって殺されるかわからない魔物たちの世界で、ボクに毎日を怯えて暮せと言うのか?
「……だ」
「そう。ラマ、何もしないと言うなら、そこで指を咥えて待っていなさい。ここを基点として世界を滅亡へ導いてあげるから」
「……めだ」
「もう少し、ラマは根性のある男の子だと思っていたんだけどね。まあ、それなら添れでもいいかも――」
「駄目だっ!」
「きゃっ」
ネミコの言葉を遮って、ボクは一喝した。駄目だった。そんな未来予想図はボクには認められなかった。
「ボクは、生きるんだ」
「は、はぁ?えと、ラマ、あなたは何を言ってるの?私はあなたを生かしておくと言ったのだけど」
ネミコが疑問の声を上げた。それに答えるように言葉を変えて、剣を拾うとボクは周囲の魔物たちに告げた。
「生かされるんじゃなくて、生きるんだ!」
「……へぇ」
そうして、ネミコの双眸が面白いものでも見つけたかのように細められた。妖しい雰囲気を放つそれらに見つめられながらも、ボクは意思を強く持って見返した。
「いいじゃない。それもまた一興、といった所かしら?とりあえずあなたに言いたいのは、御託はいいからさっさとかかってきなさいってことね!殴られっぱなしはもうなし。私も今からは、真剣に相手をしてあげるわ!」
担いでいた大剣を構えつつ、ネミコはそう言った。その立ち姿からは、先程までの油断は欠片も感じられなかった。
ボクは心の奥深くから湧き出てきたような何かを、全て炎に変換して放出した。橙色ではなく、青色の炎がボクの剣を覆い隠した。
「行くよ、ネミコ。ボクの本気はここからだ!」
「今までも本気だったんでしょうが、私は優しいからそういうことは追及しないでおいてあげるわ。さあ、細かいことはいいからかかって来なさい、ラマ!」
ボクとネミコは、同時に地面を蹴ってぶつかり合った。
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