第六話
どうも、パオパオです。
今回も短いくせに、説明などが入ります。
――勇者は、敗北を受け止める者である――
翌日、照りつける太陽の光を浴びながらボクは目を覚ました。強張った体を思い切り伸ばし、節々から解していった。寝惚けた頭も徐々に起き出して、ボクは自分がどこで眠っていたかを思い出した。
傍にある袋の中から固いパンを取り出した。何度も咀嚼する間に思考はいつものものとなったので、水を飲んでパンを流し込んだ。布団代わりに使っていた布を片付けて、再び街道に沿って歩き始めた。
昨日のことを反省し、動物を探すことに真剣になり過ぎないようにしながら進んでいった。動物たちも強烈な視線を感じなくなったためか、何匹か目にすることが出来た。とは言っても、どれも食べられるところの少ない小動物ばかりだったため、遠目で見るだけに留めておいた。
途中で二回ほど休憩を挟み、昼食も終えて少し経った頃、遠くにある草むらが大きく揺れ動いた。今度こそ食べられそうな動物かと期待しながら見守っていると、草むらの中から一匹の巨大な狼もどきが姿を見せた。
ボクの命は、急速に危険へと晒された。狼でさえ危険なのに、よりにもよって狼もどき。即ち、魔物だった。
ボクはこれまでに数回魔物を見たことがあった。村を襲いに来た魔物を、大人たちが撃退していたのだ。その時に、魔物には普通の動物とは違うところがあると学んでいた。
一つ目に、魔物は普通の動物とは体の色が違う。例えば、野生の犬は体毛が茶色だが、魔物の犬は体毛が黄色だったり橙色だったりと明らかな違いがある。
二つ目に、魔物は非常に好戦的だ。魔物という生物は、どうやら敵を殺せば殺すほどに成長するらしく、強くなるために出会う生物を片っ端から殺しにかかる。長い歳月を経た魔物は、国の一つや二つは平気で滅ぼせるらしい。
そして三つ目に、魔物は魔法を扱う。扱うらしいのだが、ボクは未だに見たことがなかった。かつて村に来た魔物たちは、大抵見つかった瞬間に殺されていたからだ。もっとも、ボクは魔法と魔術の違いもわからなかったのだけれど。
そんなわけで、ボクの命はまさに風前の灯火だった。さんざんいつ死んでもおかしくないとか考えていたボクだけれど、流石に旅立ちから二日で死の危機に陥るとは思っていなかった。ボクの額から冷や汗が流れ落ち、緊張から呼吸が荒くなっていった。
結論からいえば、ボクは死なずに済んだ。遠くに居た狼もどきは、一度もこちらを気にすることなく去って行った。あれだけ大きな個体だったのだ。強さは相応のものだろうし、ボクに気が付いていないわけがなかった。
ボクは見逃されたのだ。その事実を受け止めた瞬間、ボクは崩れ落ちた。どうやら、恐怖で腰が抜けてしまったようだった。ボクの口から零れる乾いた笑い声は、段々と大きくなっていった。
生き残れたことへの嬉しさが込み上げ、僕の頬を一筋の涙が伝った。
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