第五十六話
どうも、パオパオです。
今回、ほんのり?エロめです。たぶん。
というか、自分、ネタに困ったら主人公に殺人させすぎな気がします。
うむむ、どの辺りが勇者なんだろう、こいつ。書いている本人すらわかんないです。
――勇者とは、迅速に行動する者である――
男のお願いというのは、実に簡潔明瞭なものだった。
「衛兵たちに連れて行かれた私の妻を、どうか助けてください」
つまりは、そういうことだった。衛兵たちの欲望の捌け口に、この男の妻が選ばれてしまったのだろう。もしかしたらそうはなっていないのかもしれないが、弄ばれていることは間違いないだろうと思った。
男の言葉を聞いて、ボクは考えもせずに答えを口にした。
「できるだけのことはします。万事任せてください、と言うには少し難しいかもしれませんが」
「あ、ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
「まだ何もしていません。礼を言うのは、終わってからにしてください」
苦笑しながら、ボクは男を宥めた。状況からして、ボクに受けないという選択肢はなかった。勇者として困っている人を放っておけないと思えたし、何より男の境遇がルバートでのボクと似通っていた。あれ程酷い状況では、ないといいけれど。
そういうわけで、ボクは今、衛兵たちの溜まり場になっているという建物の前で立っていた。かつては街の指導者たちが政務を行っていたらしいその建物には、門番の一人さえ見えなかった。
街人たちが来ないと油断しているのか、はたまたそれ以外の理由があったのか。中から聞こえてくる叫び声ともとれる嬌声から判断すると、後者のようではあったが。
剣を抜いて右手だけで構えながら、半身のまま扉を思い切り蹴り飛ばした。老朽化していたのか、僅かな抵抗の後に扉は中へと吹き飛び、近くに居た男に直撃した。背後から痛撃を受けた男はそのまま倒れ、気絶したようだった。
騒音に気付いてこちらを向いたのは、今熨した男を含めて七人いる男の内、たったの三人だけだった。残る三人は、逃げられないように手足を縄で縛られた女性たちに覆い被さっていて、意識をそちらだけに向けているようだった。女性たちは泣き叫びながら、全裸の男たちに蹂躙されていた。
咽返るような男女の臭いに、ボクは鼻を押さえた。男性の獣のような臭いと、女性の甘ったるい匂い混ざり合い、長時間嗅いでいると吐き気を催しそうな香りが生み出されていた。建物の外の新鮮な空気が、すぐさま恋しくなった。
衛兵、だという男たちは、誰ひとりとして鎧を身に着けていなかった。そもそも、何かを着ている人がこの建物の中に居なかった。男たちにとっては楽しい宴が、女たちにとっては地獄にも等しい監禁場所が、そこにはあった。
何を思ったのか、男たちは扉が開けられたのに気付いてまずしたことは、剣を手に取ることではなく、腰布を巻くことだった。これなら街人たちでも余裕で勝てるだろうな、とボクは呆れることしかできなかった。
偶には殺さないように戦ってみるとしよう。そう思いついて、ボクは駆けだした。未だに剣を持ってすらいない男たちに向かって、わざと浅く剣を振るった。出血で死なないよう、刀身に薄く炎をまとわせながら。
一閃で二人の男の片腕と片足を、もう一閃でもう一人の男の体を真っ二つにした。殺さないようにと決めた直後に殺してしまい、自分の技量のなさに自嘲した。
口元を歪めているボクの姿を見て勘違いしたのか、先程まで女性たちを襲っていた男の一人が、ようやく現状に気付いてボクを見た。
「このガキがっ!一人で来るとか舐めてんのかっ!」
「舐めているのはそっちでしょう、がっ!」
喋りながらも剣は止まらなかった。手と足を失くして悶えている男たちを無視し、女性と絡んでいた残る二人に斬りかかった。万が一にも女性たちに燃え移らないよう、火の出力を最小限に絞って男たちの首だけを飛ばしていった。三つの首が順番に宙を舞い、立っている人間はボクだけになった。
周りを見回して、奇襲がないことを確認した。近くにあったのは、涙目で見上げてくる女性たちと、呻いている隻腕隻脚の二人の男、気絶して扉の下に潰れている男、ごろごろと転がっている人間の欠片、そして部屋中を汚している白っぽい粘液だった。
有体に言って、あまり留まっていたい場所ではなくなっていた。いくら高価そうな調度品が飾ってあったり、質のよさそうな絨毯が敷かれていると言っても、それらには部屋の悪臭がたっぷりと染み込んでいそうだった。
他の衛兵たちが街中にまだ残っているはずなので、女性たちをこの場に残しておくわけにはいかなかった。そもそも、女性たちを助けることがボクがお願いされたことだった。
女性たちを拘束していた縄を剣で切断し、部屋の中を漁って出てきた布で露になっている体を隠させた。まだ麻痺して動けない女性たちを一人ずつ立たせ、男と約束した場所へ向かって足を進めた。
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