第五話
――勇者は、計画を立てて行動する――
村を出たボクは、まずは街道に沿って歩いていくことにした。定期的に商人が村へとやって来るので、おそらく道なりに進んで行けば街があると思ったからだ。
焦ることなく、ゆっくりと歩みを進める。走ったりして無駄に体力を使うつもりはなかった。先はまだまだ長いどころか、どれくらい進めば最初の町に着けるのかさえわからなかった。ボクには、知識が足りなさすぎた。
太陽が真上に浮かんだ頃、ボクは休憩がてら近くにあった木の下で昼食をとることにした。いつも通り朝食の時に用意しておいたパニーノだ。お世辞にも柔らかいとは言えないパンを、一口ずつよく噛みながら食べていったが、食べ終えるのに五分もかからなかった。パサパサなパンを食べて渇いた喉を、自家製の水筒から水を飲んで潤した。
食休みも終えて、ボクは再び歩き出した。しばらく歩いた後、夕食をどうしようか、不意にそう思い立った。家から持参した食料は、少なくはないが何日も持つ程ではなかった。もし街が遠くにあったら、ボクは飢え死にしてしまうかもしれない。旅がそんな形で終わってしまうのは嫌だった。
歩きながら、周囲を見回し始めた。食べられそうな動物を探すことにしたのだ。けれど、日が暮れる頃になっても小動物の一匹も見当たらず、ボクは無駄に精神を疲弊させることになった。
夕食には、干し肉を火で炙ってパンに挟んだものを食べることにした。しかし、ここで早速問題が発生した。火が起こせなかったのだ。ボクが持ってきたものの中に火打石はなく、ゆえにボクが火をつける手段はなかった。
仕方なく、ボクは干し肉をそのままパンに挟んで食べた。昼のものより更に固かったので、何度も噛んだところで水と一緒に流し込んだ。それなりの満足感は得られたが、一日中歩き続けた男児としてはもう少し食べたかった。もっとも、満腹になるまで食べてしまったら、今後の食糧事情はより辛くなるだろう。結果として、ボクは食欲にどうにか勝利した。
既に周囲は暗くなり、夜空では月と星とが輝いていた。ボクは静かにその光景を眺めていた。少し経って、ボクは欠伸を一つ零した。一日中歩き詰めだったのは、思っていたより体の負担になっていたらしかった。
ボクは草花の上に大きめの布を広げ、その上に荷物袋を置いた。更にもう一枚、さっきのものより少し小さい布を袋から出した。袋の口を締めた後、ボクは大きな布の上に横になった。小さめな布を体にかけて、重い瞼を閉じた。
夢は、見なかった。
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