第四十五話
どうも、パオパオです。
とうとう、PV五桁、ユニーク四桁突破しました。
完結までにPV六桁、ユニーク五桁を目指して頑張ります。出来るかどうかは非常に怪しいですが。
読んでくれている皆さん、ありがとうございます。
――勇者とは、生を渇望する者である――
体が突かれる感覚に、ゆっくりと意識が浮上していった。少しは体力が戻ったのか、少しなら体も動かせそうだった。もっとも、体力源を補給していないので、戻ったと言っても本当に極僅かだったが。
ボクは突かれることに抵抗するように、唯一動かせる右手を突かれている場所に当てた。もう二、三度突かれた後、突いていた物体は遠ざかっていった。
薄く眼を開いて、ちょっかいをかけていた相手を確認した。もしかしたら、助けに来た相手かもしれないと、淡い期待をして。すぐ傍に二足で立って、じっとこちらを見ていたのは緑の熊だった。
当然と言えば、当然だった。眠る前に見ていた妄想など、現実でそうそう起こるわけがなかった。それに、もし誰かがここに来て熊を倒したとしても、ボクみたいな死にかけの子供をわざわざ助けたりはしなかっただろう。
ボクは覚悟を決めた。この場所で死ぬ覚悟だった。もう間もなく、ボクはあの熊たちの餌になるのだ。現実逃避は、ここまでにしようと思った。
しかし、偶然か、はたまた神様の加護のおかげなのか、ボクの命は長らえた。ボクが生きていることを確認した熊たちは、ボクを置いて別のものを食べ始めたのだった。一体どういうことだろうか。
しばらくして、一つの考えが浮かんだ。もしかすると、死んでいる動物の方が、生きている動物より腐敗が早いと知っていて、それでボクを放置しているのではないか、ということだった。あながち、間違いでもないかもしれなかった。
相手は普通の熊ではなく、魔物だった。魔物は総じて、元になった動物より強く、賢い。経験則で腐敗のことを知っていてもおかしくはなかった。
もちろん、ボクの考えが間違っているということも十分に考えられたが。やはりこれも、意識を保つためにやっている時間つぶしに過ぎなかった。こんなことをして何になるのかと自問するが、やはり眠ってそのまま起きなくなる、ということを考えたくはなかったのだ。
日々増していく死への恐怖に、ボクは徐々に侵されていった。
それから、何度も、何度も、浅い眠りと短い覚醒を繰り返した。十回までは数えていたが、それからはもうわからなかった。数えるのが嫌になったのではなく、純粋に記憶しておけなかった。
繰り返す度に、起きていられる時間も、眠る時間も短くなっていくようだった。始めの頃は明るさの変動や熊たちの様子も変化が大きかった。けれど後になると、周囲の変化はボクにはわからなかった。
今のボクは、視界はぼやけ、耳は雑音を拾い、鼻はきかず、感触は薄かった。まとまらない思考の中で考えたのは、何故自分が死んでいないのかだった。加護、という単語が頭を過ったが、機能していない頭では理解することはできなかった。
体に力が入らないので、自殺することもできなかった。けれどボクは、出来たとしてもする気はなかった。
慣れてしまったのか、痛みは既に気にならなくなっていたが、動かしてもいないのに体は重かった。体調は狂いそうなほど辛く、楽になりたいという欲求が生まれ続けていた。
苦痛が続いていく中でも、それでも、ボクは生きたかった。そんなことを考えながら、またボクは意識を失った。
読んでくれてありがとうございました。
意見、感想、評価などをもらえると嬉しいです。