第四十一話
――勇者とは、追われる者である――
それから数日、ボクたちの気が休まる日はなかった。あの少女が居たことから、追手はルバートの人間だということはわかった。けれど。ボクは彼らに襲われる理由が思いつかなかった。
ネビアさんもわからないようだった。ほとんど情報がないために、推理のしようもないらしかった。ネビアさんは結局、あの街で一般人と交流する時間はなかったのだから、当然だった。
少女たちに襲われた日の二日後、再びボクたちは襲撃を受けた。相手は六人。ボクたちを殺しに来た三人が帰らなかったことで、警戒心を高めたのだろう。こちらとしては迷惑な限りだった。
その六人が来たのは太陽が沈みかけた夕暮れだった。遠くから馬が駆けてくる音がしたので、とりあえずボクたちは隠れた。すると、二人の男が馬に乗って近くを通り過ぎていった。ボクたちのことは気付かれなかったようだった。
しばらくすると、また新たに二人の男が馬に乗って駆けていった。急いでいる様子は見えなかったので、先に行った男たちを追っているわけでなさそうだった。それに今の二人の服装は、先に行った二人と、更に言えばボクたちを襲った三人とも似通っていた。
そしてまた、二人の男が馬に乗って通り過ぎようとしていた。この辺りで一度、相手を叩いておいた方がいい。ネビアさんとそう決めると、ボクたちは互いに短剣を持って機会を待った。
二人の男が通り過ぎる瞬間、ボクとネビアさんは同時に短剣を投げつけた。狙い違わず馬に直撃し、乗っていた男たちは暴れる馬から叩き落とされた。男たちは口から大量の空気を吐き出し、その場で痙攣していた。気絶したようだった。
暴れる馬を斬り伏せると、男たちに近付いて速やかに首を斬り落とした。周囲に血を撒き散らせながら、ボクは素早く元の位置に戻った。
ボクたちはその場から近くも遠くもないものの、自分たちがさっきまでいた場所が見える位置に移動した。程なくして、さっきの男たち四人が戻ってきた。彼らは打ち捨てられた四つの死体を見て驚き、すぐに馬から降りると、散開してボクらを探し始めた。こちらにとってとても好都合だった。
運悪くこちらにやってきてしまった二人組を、奇襲して一度に斬り捨てた。片方に叫ばれてしまったため、もう残る二人にこの手段は使えなくいが、問題はなかった。もう一対一の構図になっているからだった。
燃える剣を持っているため、ボクの位置はすぐにばれた。叫び声でおおよその位置は元々割れていただろうが。残っていた二人の男は、怒声を上げながらこちらへ駆け寄ってきた。
ボクの射程範囲に入る直前、男の一人が倒れた。ネビアさんが投げた短剣が足に刺さったようだった。一瞬足を止めてしまった二人めがけ、ボクは剣を振り抜いた。
肉の焼ける臭いと、辺りを一色に染め上げる鮮血だけが、その場に残った。
読んでくれてありがとうございます。
意見、感想、評価などをもらえると嬉しいです。