第四話
どうも、パオパオです。
相変わらずかなり短いです。
――勇者は、故郷から旅立つ――
指示通り手紙を破り捨てた後で、剣も含めて完全に荷物整理を終えたボクは、ネミコに別れの言葉を告げた。彼女は呆然としつつも、ボクが彼女を連れていかない理由を訊ねてきた。だがむしろ、ボクにとっては彼女を連れていくという方がありえなかった。
この時のボクは、旅に出ることに対して不安しか感じていなかった。ノウハウも何もない子供が旅に出て、何もかも順風満帆に進んでいくという光景を想像することが出来なかった。足りないと思われるものが多すぎて、本当に足りてないものさえわからなかった。
ネミコは、ラマは弱いから私が守ってあげる、と親切にも言ってくれたが、ボクには無理だろうとしか思えなかった。自信満々にそう言ったネミコは、旅というものをひどく楽観視しているようにしか見えなかった。
正直なところ、ボクは安全に旅ができるなんて思っていなかった。ボクはきっと、自分の身を守ることすら覚束ないだろう。神様(自称?)の加護がある勇者だとしても、ボクはただの子供でしかない。数人の野盗に囲まれでもすれば、ボクはなす術もなく殺されてしまうだろう。そんなボクにネミコがついてくるなんて、冗談だとしか思えなかった。
もしボクが彼女を連れていったとしよう。ネミコはボクよりも強い。だからと言ってその強さは、理不尽を撥ね除けられるほどのものではない。野党にでも襲われれば、彼女もボク共々やられて、慰み物になるか奴隷として売られるかがオチだろう。
そういう意味のことをぼかして伝えたが、ネミコはボクの言うことを一切聞かなかった。仕方なくボクはネミコに、ボクの帰る場所を守っていてほしい、ボクが立派になったら帰ってくるからその時まで待っていてほしいと、そう約束した。それを聞いて、彼女は渋々ボクの言うことに従ってくれた。
本音を言えば、ボクはこの約束が果たせるとは思っていなかった。きっとボクはどこかで野垂れ死んでしまうだろうと、希望も持たずにそう思い込んでいたからだ。果たすことの出来ない約束だろうと、ボクのほとんど唯一の友人を無駄に危険に近付かせずに済むなら十分だった。
ネミコの求めに従って指切りを済ませた後、ボクは荷物を持って家を出ようとした。扉を開け放って足を外に踏み出そうとした時、ネミコがボクの名前を呼んだ。振り向いたボクの顔が彼女を両手に掴まれ、抵抗も出来ないまま、ボクの頬に温かい感触が触れた。一瞬の接触の後、彼女は頬を赤く染めて恥ずかしそうに顔を逸らした。
ボクはネミコに、行ってきます、と告げて外に出た。背後からは、いつも通りの元気な彼女の声が聞こえた。
行ってらっしゃい、と。
そのままボクは村を出た。
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