第三十二話
どうも、パオパオです。
今回は少しグロいかもしれません。
――勇者とは、突き進む者である――
建物の入口の扉を蹴り飛ばして開けた。既にボクの存在はばれてしまっていただろうが、構わなかった。どちらにせよ、ボクは人が集まっている所に向かわなければならなかったのだ。
騒々しい音とともに弾け飛んだ扉は、向こう側に居た相手に直撃し、昏倒させた。近くに居た連中の一味がボクの登場に驚いて硬直した。そんな隙を逃す気はなかった。
「ってめぇ、何もんだ!ここがユニフィシオさんの」
そこまで喋った所で、その男の頭は胴体から切り離された。ボクが抜き放った一撃が、男の首を斬り落としたからだった。そこで止まることなく剣を振るい、呆然とする男たちの命を次々と絶っていった。
何人かは即死させられなかったせいで、悲鳴を上げられてしまった。そういう男もすぐに体が炎に包まれて焼け死んだが、侵入に成功したことがばれるのは少し失敗だった。もっとも、成功するとは最初から思っていないことだったが。
出会う敵を一々斬り捨てながら、建物の奥へとどんどん進んでいった。こちらが子供なことに油断しているのか、ボクと出会った敵はどれも気構えもせずに剣を振っただけだった。流石にボクでも、その程度の敵にやられるほど落ちぶれてはいなかった。
斬る瞬間に炎を発生させ、守りごと敵を斬り捨てた。死体を確認することなく足を動かし、その間に炎を消した。炎の剣より、鉄の剣の方が開いては油断していた。当然と言えば、当然だったが。
ある程度進んだあたりで、後ろからも声が聞こえるようになってきた。ボクが進まなかった所にいた敵や、見張りをしていた奴らだろう。挟み撃ちにされる危険性を考慮したが、一瞬で切り捨て足を前に進めた。下手に足を止めて、ネビアさんの命を脅かす時間が増えることには賛成できなかった。
と、その時、廊下の奥から何かが飛来してきた。瞬時に足を止め、持っていた剣で防いだ。甲高い音とともに、何かが弾き落とされた。それは、小型の矢のようなものだった。
「あれ?まさか防がれるとは思ってなかったよ。ってうわあ、まだ子供じゃないか。何でこんな所まで入り込んでるんだよ?全く、馬鹿どもは何をしていたんだか」
ぶつぶつと愚痴を零しながら、奥から一人の男が現れた。その男は全身を土色の外衣で包み、右手に小型の石弓を持っていた。
どこか人を小馬鹿にしているような雰囲気を放つその男は、その手にある石弓に矢を番えながら、ボクの様子を観察しているようだった。その視線がボクの全身を舐めるように見回すと、驚いたような声を出した。
「へぇ、それだけ返り血を浴びてるってことは、君が侵入者でいいんだろうね。でもさ、一つ疑問があるんだよね。君、何で血の付いてない剣しか持ってないの?」
ボクは全力で飛び出した。小さくはない負荷が足にかかるが、気にしている場合ではなかった。ボクの異常さに気付いたのは、この男が初めてだった。つまり、この男は他の有象無象とは違うということだった。
男は気負った様子もなく、持っていた石弓をこちらに向けた。ためらいなく引き金を引き、発射された矢がボクに迫った。ここで剣で防いでしまえば、次の攻撃に繋げられなかった。故にボクは、少しだけ体を捻り、急所への直撃を避けた上で、耐えることにした。
矢がボクの脇腹を再び抉った。激痛に顔をしかめながらも、止まることなくボクは男に近付いて行った。流石に、男は驚きを隠せない様子だった。まさかボクが、避けずに突っ込んでくるなんて思っていなかったのだろう。
ボクは剣に炎をまとわせつつ、男に向けて振り下ろした。男はボクが出した炎に驚いたが、一瞬で防げないと悟ったのか、空いていた左手を腰に伸ばした。剣が男に触れる直前、男の左手が突き出された。
ボクの剣が男の体を両断するのと同時に、ボクの右肩に焼けるような痛みが走った。あの一瞬のうちに、男は腰に提げていた短剣を投擲して命中させたのだった。既に死体となったそれは、やはりかなりの実力者だったようだった。
短剣を抜いて最低限の応急処置を施した後、ボクは再び走り出した。
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