第三十一話
どうも、パオパオです。
今日で投稿開始から丁度一月になります。
累計PV 5,610アクセス、ユニーク 886人と、たくさんの人に読んでもらえているようでありがたいです。
拙い文章ですが、これからも頑張っていこうと思います。
――勇者とは、疾く行動する者である――
ボクは剣と街の地図だけを持って、仄暗い街並みを走り抜けていった。地図は黒い男の人の手書きらしいが、中々正確なものだと思えた。地図には目的地の他に、見つかりにくい道や注意点も載っており、そのおかげでボクは何の問題もなく連中の溜まり場に近付くことができていた。
目的の建物が視認できる距離まで近付いたあたりで、何人か見張りらしき男を見つけた。それらしき男を見つける度に道を変えていったが、やはりすぐに限界は訪れた。誰にも見つからずに辿り着くことは、ボクの技量では不可能だった。だから、目撃者を出さざるを得なかった。
どちらにしろ、ボクがやるべきことは連中の殲滅だった。けれど、ネビアさんという人質が相手に存在する以上、ボクは助け出すまで必要以上に雑魚に構っている暇はなかった。
だから狙うのは、一番警戒心が薄い見張り。これまでに見た見張りの中で、一番腑抜けていた相手が居る場所は少し離れているが、それくらいは苦になるはずもなかった。この程度のことに苦戦していたら、連中の殲滅などできるわけがなかった。
やはりというか、目星を付けていた見張りにはやる気が感じられなかった。連中を襲う相手など今までに現れなかったのだろう。警戒心と言うものがまるで感じられなかった。
緊張で唾液が溢れ出し、鼓動が高鳴った。溜まった唾をごくりと飲み込んで、精神を集中させた。目を閉じて外界から一時的に意識を切り離し、体を戦闘態勢に持っていった。
再び目を開けた時、ボクは思わず呆れかけた。ボクが狙っている見張りが、船を漕いでいたのだ。不要な思考を一瞬で切り捨て、好都合だと自分に言い聞かせた。
足音を立てないよう、細心の注意を払って、見張りに近付いていった。一歩、また一歩と、その進みはあまりにも遅かったが、こんな所で失敗する要因を作る気はなかった。
見張りがボクの剣の射程範囲内ギリギリに入った時、ボクは沿背負っていた剣を抜いた。態々炎を出す必要はなかった。むしろ出してしまえば、ボクの存在が連中にばれてしまっただろう。
ボクは地図を懐に仕舞い、両手で剣の柄を握り締めた。そうして剣の先を男の方に伸ばし、一度小さく深呼吸をした。ボクは少しだけ男から剣を遠ざけ、直後に勢いよく首をはね飛ばした。男は苦悶の声一つ漏らせないまま、静かにその場に倒れた。
物が落下する音と、何かが倒れるような音は、流石にボクではどうにもできなかった。その場で息を殺し、近付いている人間がいるかを探った。一分近く待っても足音が聞こえなかったので、どうやら誰にも聞かれていなかったようだった。
成功したことに安堵の溜息を漏らし、同時に精神集中を少し解除した。辺りには真っ赤な鮮血が飛び散っていた。血の臭いに引かれて誰かがここに来る前に、急いで連中の元へ行かなくてはならなかった。
最低限血を振り落とした後で剣を背負い直し、ボクは駆け出した。身を隠すことを考えず、目的の建物へと、一直線で。
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