第三十話
どうも、パオパオです。
今回は少し短めです。
時間がなくてかなり雑になってしまっています。
――勇者とは、準備をする者である――
武器もない子供に倒される程連中と言う相手は優しくないらしく、今は黒い男の人の伝手でボクの剣を探しもらっているところだった。見た目がただの鉄の剣なせいか、手当たり次第にかき集める形となるため、難航しているようだった。
少女は少女で、自分の出来る範囲で黒い男の人を手伝っているらしかった。外に出て聞き込みするのではなく、訪れる相手から噂話を聞き出していた。この建物そのものが病院と認識されているらしく、この場所はある種の中立地帯となっていたのだ。そのためか、この場所を訪れる人は少なくなかった。
暇を持て余しているボクが何をしているかというと、何もしていないとしか答えられなかった。現状、ボクに出来ることは傷を完治させ、体を万全の状態に整えておくことだった。鍛錬はするもののやり過ぎてはいけないため、小一時間もやれば止められてしまっていた。
ボクに趣味と呼べるものがないために、ボクは時間を潰す手段を探すことで時間を潰すという、とても不毛なことをしていた。見かねた少女は黒い男の人の持ち物らしき本を何冊か渡してくれたが、難しすぎて理解できなかった。
黒い男の人は、今日も何本もの鉄の剣を持って帰ってきた。この街で彼は最も信頼されているらしく、持ち物を借りることも難しくないようだった。
ボクの剣は加護が込められた品である以上、滅多なことでは傷つかないそうだった。故に集められるのは、完全な状態の鉄の剣のみ。しかし、今日のものにもボクの剣はなかった。ボクと黒い男の人は、落胆を隠せなかった。
少女が用意してくれた食事を、三人で黙々と食べた。食事の内容は、日に日に質が悪化していった。これでもボクは、この街ではかなり恵まれていたのだろう。この街の食糧状況は、悲惨極まりなかったのだから。
そうしてボクがここに運ばれてから一週間、ほとんど変わらない日々が過ぎていった。けれど遂に、変化が起きた。ボクの剣が見つかったのだ。
見つかったのは偶然だった。患者として運ばれて来た男が、背負っていた剣。それこそが、ボクの剣だった。そのことを黒い男の人に伝えると、彼は苦い顔をして溜息を吐いた。
黒い男の人は、患者から治療代として剣を差し出させた。患者の男は渋々ながらもそれに従った。患者の男が渋った理由は、何を斬っても刃毀れしない凄い剣だから、だったそうだ。
何故か誇らしげにそう語る患者の男に、黒い男の人は呆れたような顔を見せていた。自分ではわからないが、ボクも似たような表情をしていただろう。何せ、自分の剣の説明を、他人がさも自分のもののように語ったのだから。
ボクたちの反応が思っていたものではなかったためか、患者の男は不機嫌にしながら、剣を投げ捨てて去っていった。ボクは打ち捨てられた剣を拾い、その刀身を露にした。曇り一つない、ボクのための剣。それとの再会に、ボクはしばらく陶酔していた。
ともかく、これで準備は出来た。ボクには剣だけがあればよかった。他の荷物があっても、邪魔になるだけだとわかっていた。子供のボクには、余分なものを持てる程の力はなかったから。
そして、ボクは、これから連中を斬りに行く。
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