第三話
どうも、パオパオです。
出来る限り毎日更新を目指して、文量の少なさを誤魔化していこうと思います。
今回も短いです。
――勇者とは、聖剣を持つ者である――
旅に出ろ。そう伝えられてボクはひどく混乱した。ボクは本当に勇者なのかもしれないが、それ以前にまだ十歳になったばかりの子供でしかなかった。そんな子供に一体何ができるというのだろうか。そう父さんに伝えたところ、父さんは表情を変えることなく言い放った。
お前は今日まで何をやってきた。体も鍛えさせたし、勉強も教えてやった。旅に出るには十分だろう、と。
その言葉に思わず反発しかけたが、どうにか堪えることができた。村の中で村長の決定とは絶対の法だったし、父が自分の言葉を覆したことはなかった。ボクがいくら反論しようと、意味がないのはわかりきっていたのだ。だからボクは父さんに訊ねた。
ボクはいつ出発すればいいのか。誰が付いてきてくれるのか。旅立つ上で何か注意などはあるのか。
けれど返ってきた答えは、ボクを更に混乱させただけだった。
父さんは端的に、今日中に、一人で、何も、と答えただけだった。愕然としながらも、渋々ボクは出発の準備のために家に戻った。
手伝うと言ってくれたネミコと一緒に家へもどってきたボクは、手早く荷物をまとめ始めた。元々ボクの荷物はそれほど多くなかった。ボクに趣味と呼べるようなものはなく、家具などのかさばる物は旅に持っていけなかったから。ボクは淡々と着替えや生活用品、保存食や旅で役立ちそうな本などを袋に詰めていった。
一時間も経たないうちに荷物整理は終わった。片づけられた部屋の中を見回すと、ベッドの下に光るものが見えた。近付いて確認してみると、それはむき出しの剣だった。ネミコを呼んで確認したが、彼女が持ち込んだものというわけでもないらしかった。
首を傾げるボクを置いて、ネミコは剣を握ろうと手を伸ばした。しかし剣に触れる直前に、ネミコの手は勢いを失った。ボクはどうかしたのかと訊ねたが、彼女は何でもないとしか返さなかった。
よくわからないネミコを不思議に思いつつ、ボクも剣に手を伸ばした。一メートル近い刃がついている割に、見た目ほどの重さはなく、ボクでも問題なく振れそうな重さだった。
その剣はどこにでもありそうな雰囲気を見せながら、その実世界に一つしかないものだとボクに確信させた。窓から射し込む陽の光に剣を向けると、刀身がキラキラと光を反射した。ボクはその光景に、何とも言えない神聖さを感じた。
数分ほど剣に見惚れていた僕の精神は、ネミコによって現実に引き戻された。心配そうに僕を見つめる彼女を見て、大丈夫だと一声かけた後、手近な布を刀身に巻き付けた。不思議そうに見つめる彼女に、むき出しのままだと危ないからと説明すると、彼女は納得してかふーんと喉を鳴らした。
他に何かないかと思ってベッドの下に手を突っ込むと、紙のような感触をカサリという音と共に感じた。引っ張り出してみると、それは手紙を入れるための封筒だった。中に手紙らしき物体があるのを感じて、ボクは中身を取り出した。
手紙には、短く要件だけが書かれていた。
"お前に渡したその剣は、私の加護が込められた武具だ。
この加護はお前にしか意味はないが、身につけてさえいれば、お前に対して絶大な効果を発揮する。
この剣を持って世界各地の困っている人々を救え。
なお、この封筒は私からお前への手紙が転送されるので、封筒は捨てずに中身を処分しろ。
間違っても手紙を溜めこんでおくことはしないように"
宛名も差出人の名前もない、手紙と呼べるほどの文量もない文章を読んで、多分あの神様(自称)からの贈り物なんだろうなと直感した。
読んでくれてありがとうございました。
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