第二十七話
どうも、パオパオです。
今回は途中で切れて、次に続きます。
相変わらずの説明回で申し訳ないです。
――勇者とは、未知を減らしていく者である――
天井の隙間から射し込む太陽の光の眩しさに、ボクは目を覚ました。起き抜けの頭で周囲を確認し、自分が居る場所と昨夜の出来事を思い返した。
高速で飛来してきた何かに脇腹を貫かれ、その直後にネビアさんが拉致されたこと。そしてボクは名も知らぬ黒い男の人に傷を治療され、新しく少女がやってきた後に少しだけ話して、ボクは彼に知識を教わることになった。
不意に、芳しい匂いが近くから漂ってきた。その香りに誘われるように脚を動かし、匂いの発生源に近付いて行った。その匂いは、機嫌のよさそうな少女が作っている料理から発せられていた。
鼻歌交じりに調理していた少女は、ボクに気が付いた途端に不機嫌になった。じろり、と警戒するように睨みつけられ、ボクの意識は完全に覚醒した。直後に感じる居心地の悪さを振り払うように、ボクは少女に声をかけた。
「あ、あの、おひゃようごじゃりますっ!」
ぶふっ、と少女が噴き出した。口元を両手で覆う少女と、舌を噛んだことで悶えるボクは、どちらも顔を赤くした。片や感情の昂りで、片や羞恥で。それも、軽く涙目になる程に。
火にかけられている料理から煙が立ち上り、それに気付いた少女は慌てて火を止めた。異臭に気付いてやってきていたのか、黒い男の人が杖をつきながら、何をやっているんだと呆れたような目でボクらを見た。ボクと少女は何も言わなかった。
半分程焦げてしまった料理を食べ終え、ボクと黒い男の人はボクが眠っていた部屋で対峙していた。ここに来るときにようやく気付いたことだが、黒い男の人の左足は膝から先を失っていた。吹き込んだ風が黒い外套を捲り上げたことで、痛々しいその脚が外気に晒されることになった。
そのことにボクが気付いても、黒い男の人は顔色一つ変えたように感じなかった。きっと、慣れていたのだろう。障害を持った人間に対する、嫌悪の混じった視線と言うものに。そのことが、ボクにはひどく辛く感じられた。
そんなボクを気にすることなく、黒い男の人は話を始めた。
「まず、基本的なことから始めるとしよう。君は、魔術と魔法が違うということがわかっているか?」
その問いに、ボクは頷いて答えた。一応、その二つが違うということだけは知っていた。
「そうか。それじゃあ、その二つの違いを説明することはできるか?」
首を横に振った。辛うじて、ボクの剣が発生させるのが魔法らしいと聞いているだけだった。
「ふむ、じゃあそこから説明していくとしよう。まあざっくり言うと、魔術っていうのは先天的な異能で、魔法っていうのは後天的な異能のことだ。能力はその二つごとに大まかな傾向はあるものの様々で、世界に一つしかない魔術・魔法も存在する」
そこで黒い男の人は一旦区切り、ボクを見詰めた。おそらく、ボクの加護はその世界に一つしかないものに当てはまっただろう。何せ、勇者。それが固有名称とやらなのかはわからないが、その大仰な名前にも理由があることがわかった。
「魔術と魔法の違いの一つに、発動場所の違いが挙げられる。魔術は自らの肉体の内側に、魔法は肉体の外側に発動するものだ。そしてもう一つ、これは確証もない一説だが、魔術を使うと身体的疲労を、魔法を使うと精神的疲労を伴うそうだ。それに、この意見を支持する者は多い。それなのに確証が得られないのは、魔術と魔法の二つを使えた者が居ないからだ。実際に差があるのかはわからない」
「えっと、ボクは魔法らしきものを使った時に、精神的疲労なんて感じていないんですが」
「それは、ただ小規模な魔法だっただけだろう。それでも、確かに消耗はした筈だ。嘘だと思うなら、連発でもすればわかると思うが」
「そうだったんですか……」
ボクが今まで気軽に使っていたものの得体の知れなさに、ボクは思わず身震いした。気が付かないところで代償が支払われていたなど、想像することさえできるはずがなかった。
黒い男の人は少し休憩するかと聞いてきたが、ボクは首を振った。今は、少しでも多くの情報を知っておきたかった。黒い男の人はボクの様子を窺った後、話を再開した。
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