第二十一話
どうも、パオパオです。
今回も戦闘回です。
自分の物は戦闘描写って呼べるのでしょうか?
とりあえず、楽しんでもらえると嬉しく思います。
――勇者とは、戦う者である――
顔を羞恥で真っ赤に染めつつも、それを振り払うように剣を振るった。型も構えもなく滅茶苦茶に振るわれる剣は、ただ空を切るばかりだった。その間に、ボクの敵たちは戦う準備を終えていた。
ネビアさんはボクを見て一瞬辛そうな顔をした後、剣に寄りかかりながら腰から短刀を取り出した。敵たちに気付かれないよう、自身の影へと。
そんなネビアさんを見て落ち着きを取り戻すと、ボクは剣を正眼に構えた。汗で滑る柄を握り直し、溜まった唾を飲み下した。
「よくも仲間を不意討ってくれたな、こんのガキがぁ!」
敵の一つは叫びながら、もう一つがただ怒りを滲ませながら、同時にボクに向かって来た。向けられる殺意で体が竦んだ。ボクには加護があるから関係ないと思い込んで、視界を閉ざして剣を振るった。
運よく間合いに入っていたのか、一つの剣を弾き飛ばし、もう一つを押し返した。ボクは逆に驚愕した。敵たちは子供の一撃も満足に防げない程疲弊していたのだから。
敵を逃さず仕留めるために、両腕に力を込めて再度剣を振るった。剣を失い体勢を崩していた敵の体を両断した。もう一方に防がれてしまったのは、剣が炎が出ていなかったからだろう。反撃を受けないように、ボクは数歩後退した。
「ガキっつっても、てめぇも一端の殺人鬼かよ……。殺すことに迷いが見えねぇぞ、おい。だが、子供が大人に勝てると思うなよ!行くぞっ!」
下がったボクを追うように、二つの敵が新たにこちらへ走り出した。いくら相手が疲れていると言っても、数の差が十分にあれば、元々の技術や経験の差でボクは勝ち目がなかっただろう。故に、ボクが取れる選択肢は一つだった。
剣を左上段に構え、右目だけで間合いを計った。三つがボクの射程圏内に入りこむ直前、ボクは全力で剣を振るって薙ぎ払った。左側に居た敵が防ごうと剣を傾けた。その剣ごと、一太刀で三人を斬り裂いた。六つの肉塊が、火だるまになってその場に散らばった。
肉が焼ける悪臭と、先程までとは比べ物にならない程あっさりとした手応えに、ボクはちゃんと炎をまとわせられたことを把握した。片目で剣に視線をやれば、血を浴びていた刀身は橙色の炎に包まれて、どこか幻想的なように輝いていた。ネビアさんと残る二つの敵は、信じられない光景でもみたかのように目を丸くした。
「な、何故……そんなただの鉄の剣に、発熱の魔法がかかっているんだ!?しかも炎で溶けないだと?ありえぬ!」
「ま、魔法?これって魔法なんですか?」
「知らずに使っていたのか?なんと贅沢な奴め」
「……あれが、あの子の言っていた加護、なんでしょうね」
「?ネビアさん、何か言いましたか?」
「いや、何も。……羨ましいな」
敵の親玉が憤り、ネビアさんが何かを小声で呟いた。残る一つは初めて見る魔法(?)が信じられないのか、口をだらしなく開けていた。
ボクは話はここまでだと、無言で切っ先を敵の親玉へと向けた。敵の親玉もそれを察したのか、剣を構えることで応じた。
ボクと敵の親玉は互いに向かって駆け出した。擦れ違うように剣が交差し、互いの一撃が繰り出された。ボクの剣は僅かな手応えとともに進んでいった。しかしその直後、ボクの左肩が焼けるような痛みに襲われた。
激痛で膝立ちになったボクに、残る一つの敵が怒声を上げながら向かってきた。ぼやける思考の中で、必死になって剣を突き刺し、敵の体を貫いた。
そのまま剣を手放し、痛みの元へと顔を向けた。そこには、根元が溶けた剣が刺さっていた。勢いよく流れ出る自分の血を目にして、ボクの視界は急速に暗くなっていった。
地面に倒れたボクに、倒したはずの敵の声と、風を切る金属の音が聞こえた。直後に覆い被さってきた重量に押しつぶされるように、ボクの意識は断絶した。
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