第二十話
どうも、パオパオです。
今回は少しグロいかもしれないです。
というか、駄文とはいえ自分がここまで筆まめでいられるとは思っていませんでした。
他の作家さんたちに比べると、内容とか描写とかが拙いにも程がありますが。
それでは、楽しんでもらえると幸いです。
――勇者とは、赴く者である――
――ガッ、ギィン、ガキィィン
剣戟が響いた。
――チッ、クソッ、グァアアァァァッ
叫び声が飛び交った。
ボクは何も見なかった。見ていられなかった。三十人にも上る人たちが殺し合う光景は、ボクには到底耐えられるものではなかった。秒単位で誰かが傷つき血を流した。分単位で誰かが倒れて動かなくなった。周辺が塗り潰されるように赤く染まっていった。
地面に倒れ伏し、そのまま立たなくなる物が四つ目になっただろうか。ボクは詰所の中に逃げ込んだ。もしボクが狙われでもしたら、一太刀で撫で斬りにされてお終いだっただろう。無手のボクにできることなどなかったのだから。
別に向かう方向を決めていたわけではなかった。ただ道がわかっていたからなのか、それとも本能的に求めたからなのかはわからないが、ボクが結局辿り着いたのは物置となっている小部屋だった。
一瞬の迷いもなく扉を開け、ボクは部屋の中を見回した。剣、槍、鎧、縄、袋、鎧、工具、剣……あった。見つけた物に近付き、掴み取った。ボクの剣を。ボク以外の人ではきっとわからない、ボクだけの剣を。
剥き出しになっている刀身を見て、ボクは何か覆うものを探した。前に巻いていた布が外されてしまっていたからだ。代わりの布を探そうとした所で、まとめられた剣がボクの視界に入った。
ボクは徐に一本の剣を抜き取ると、鞘を取り外して元に戻した。そして、ボクの剣を鞘に仕舞った。まるで元から専用のものだったかのように、剣は過不足なく納まった。
剣を取り戻して加護を再び得たからか、ボクも戦わないといけない気になっていた。加護があるのなら、死ぬことだけはないはずだったから。納めた剣を背負って、その異常なまでの充足感に感嘆しながら、ボクは来た道を逆走した。
詰所を出る直前にボクが見たのは、七人を残して他は全部倒れている光景だった。大量の血液から漂うむせ返るような臭いが、ボクを不快な気分にさせた。
そこで立っていたのは、ネビアさん、ヴォトさん、それと五人の憲兵だった。立ち位置からして、ネビアさんの味方は残っていなさそうだった。
七人は誰もが満身創痍だった。立っているのが精一杯な様子の七人の中でも、ネビアさんは特に末期的だった。遠目からでもわかる程に大量の汗を流し、少なくはない傷を負い、荒い息を吐きながら、剣を地面に刺してどうにか立っていた。
ネビアさんが殺されていないのは、戦いの始まりにヴォトさんが口にした言葉のせいだろう。今の状況と被害の数を考えると、ネビアさんを生かしておいたことは愚策だと思った。いくら相手が敵の親玉だと言っても、ネビアさんの存在が敵の拠り所だったのは間違いなかっただろう。
覚悟を、決める時だ。不思議とそう思った。ボクは一度大きく深呼吸して、不快な空気に気分を悪くしつつも、敵を見据えた。
ボクは慎重に剣を抜くと、一番近くに居た憲兵に斬りかかった。疲れていたためか、ボクに気付いた様子はなかった。ボクは唇を噛み締めながら、袈裟懸けに剣を振り下ろした。
鈍い手応えを感じた直後、ボクは人肌の温もりに包まれた。目にかかったのか、激痛が左目に走った。無事な右目で剣を見ると、炎ではなく血液に覆われていた。剣速が足りなかったために、炎が出なかったのだと判断した。
ボクは鼓動が高鳴るのを感じながら、なけなしの勇気を振り絞って、こちらを向いた六人に声をかけた。
「ボ、ボ、ボ、ボクだって、や、やって、やりぇりゅんれしゅ!」
冷たい風が、淀んだ空気を僅かに押し流した。
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