第十八話
どうも、パオパオです。
最近、というか最初からですが、なんだか迷走している気がします。
こんな状態で収拾がつけられるのかとても心配ですが、気にせず勢いで投稿します。
――勇者とは、行動の指針を立てる者である――
「ネビア……さん」
「うん、ネビアさんです。さっき振りだね」
ネビアさんは、快活な声音でそう言った。こうして本人を前にすると、やはり恨みごとの一つや二つは浮かんできた。けれども、結局ボクは何も言わずにいた。
ネビアさんは頬に人差し指を当て、小首を傾げた。
「うーん。ねえキミさ、これからどうしたい?」
「え?」
「だから、これから。牢から出たいんだったら出してあげるし、出たくないんだったら置いて行く。それとも他に案があれば、聞いてあげてもいいと思ってるし」
ネビアさんはジャラジャラと鍵束を揺らして、ボクに訊ねた。それは元々隻腕の男性が持っていたのだろう。鍵束から飛んできた液体が、数滴ボクの顔に付着した。
そんなことを気にもかけず、ボクはネビアさんに問いかけた。
「どうして、ですか?」
「うん?」
「どうして、まだ会ったばかりのボクに色々してくれるんですか?」
「いやぁ、そんなに好意的なことをした覚えもないんだけどなぁ?どうしてこうなった……」
ネビアさんは少し困ったように苦笑した。ネビアさんの言う通り、ボクは騙された被害者のようなものだった。そんな相手から信頼されるなんて、あまりないことだろう。
でも、ボクはこの人を信頼していた。ある意味で刷り込みに近いものかもしれないが、そんなことは問題じゃなかった。ちゃんとボクを気にかけてくれた。そんなことがボクは嬉しかった。
「そうだね……うん、なんて言えばいいのかな。最近さ、少し疲れてたんだよ。キミのことは、愛玩動物を拾った、みたいな感じなのかもしれないね。言ってみれば、キミにしたのは躾かもね」
冗談のようにそう口にしたネビアさんに、周りに居たネビアさんの仲間たちが一斉に噴き出した。ボクのことを愛玩動物扱いしたのがよっぽど可笑しかったらしい。けれどもボクは、躊躇なく答えた。
「それでも、いいかもしれないです」
「はい?」
「嫌なんです。一人で、旅するの。まだ旅を始めてから十日も経ってないくせに、やめたくてしょうがないんです」
「別にやめればいいんじゃないの?それくらい、自由でしょう」
「それは、できません。そんなことをしたら、神様に何をされるかわかりませんし。ボクが使命を果たしていかないといけないんです」
ボクの言葉を聞いて、ネビアさんが一瞬にして顔色を変えた。
「神、様?ねぇ、キミ、今神様って言った?」
「?ええ。言いましたよ。それが何か」
「何で、キミみたいな子供が、神様のことを知ってるの?……あっ、アイウト村の信仰みたいなやつかな?だったら」
「だってボク、神様の加護を受けて――」
「待って!」
地上にまで届きそうな大声で、ネビアさんがボクに静止をかけた。ボクは驚きで背筋を伸ばし、周りに居た人たちもネビアさんに注目した。ネビアさんは周囲に何でもないと手を振っていたが、不審な視線はいくつも残った。
ボクがポカンとしていると、ネビアさんは牢の鍵を開けた。ガチャリという音の後に、鉄格子の開く音が響いた。ネビアさんは驚いているボクに近付いて、耳元で囁いた。
「それは、秘密にしなさい。絶対に、何があっても、人に聞かせないようにしなさい。じゃないと、キミが危ないから」
「……えっと、忠告はありがたいんですけど。ネビアさんはどうしてそこまでボクのことを気にかけてくれるんですか?」
「……何となく、じゃ駄目?」
「いいえ、大丈夫です。ボクが不躾なだけですから」
ネビアさんは優しい顔になって口を開いた。
「そう?ありがと。それじゃ改めて聞くけど、キミはこれからどうしたい?」
「ボクは……」
数秒程無言で考え、答えを口にした。
「ネビアさん、ボクを連れて行ってください」
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