第十六話
――勇者とは、答えを得る者である――
若い男性に連れて行かれた先は、建物の片隅にある小部屋だった。部屋の中には様々な武器防具、道具がまとめられていた。傍から見ると物置でしかないこの部屋に、ボクを連れてきた理由がわからなかった。
若い男性は物の間を縫うように進み、ボクも体をぶつけないように気を付けてついて行った。そして、少しだけ開けた空間に着いた。
若い男性はボクの手を離すと、その場でしゃがみ込んだ。何をするつもりかと見守っていると、若い男性は床板を掴んで引き上げた。床板の下には、地下へと続く階段があった。
驚いているボクの手を掴み、若い男性は地下へと降りて行った。転ばないよう気を付けながら、仄暗い階段を降りて行った。カツ、カツ、と二人分の硬質な靴音が周りに響いた。
階段を降りた先で、若い男性は誰かに話しかけた。
「おい、新人が来たぞ。よろしく頼む」
暗くて姿が見えない相手は、若い男性に返答した。
「ん?新しい囚人か。何やったんだそいつ」
「こいつか?確か三~四人殺したんだと思うぞ」
「思うぞって、何、詳しく聞いてないわけ?」
「ああ、まあな。こいつの話にネビアってやつが出てきたら、隊長がなんか準備するからって言って、こいつを連れていくよう命令されただけだし。」
「ネビアか?ふーん、そろそろけりが付くのかな。何にしろ、お前は戻って出る準備しとけ」
「なんだ、あんたもそいつのことを知ってるのか。それじゃあ俺は戻るよ」
「おう、頑張れよー」
若い男性はボクを残して階段を上っていった。どうすればいいのかと首を傾げるボクに、若い男性と話していた男の人が近寄ってきた。
「逃げんなよ?まあ、逃げてもこっち側からは開けられないんだが」
その男の人には左腕がなかった。顔をしかめたボクに、隻腕の男性が声をかけた。
「おら、こっちだ。ついて来いよ、新人」
先行する隻腕の男性は、左右にふらつきながら奥へ進んでいった。よくわかっていないまま、ボクもそれに続いた。
離れた場所でバタンという音が鳴り、明るさがより一層落ち込んだ。出入口が締められたんだ、と直感で理解した。
前を歩く隻腕の男性に、ボクは意を決して話しかけた。
「あの、一つ聞きたいことがあるんです」
「ん?なんだよ坊主、言ってみな」
「えっとですね……」
それは、この建物に入ってからずっと疑問だったこと。
「ネビアさんって、何者なんですか?」
それは、ボクが犯罪者になった理由。
「知っているなら、出来れば教えてほしいんです」
ボクは騙されたのか。それとも違うのか。
「んー、ネビア、ねぇ」
隻腕の男性は前を向いたまま、頭を掻きながら答えた。
「ネビアと繋がりがあるのに、あいつのことを知らないってのも不思議な話だな。それもまたあいつらしいが」
隻腕の男性はボクの方に振り返って、
「あいつは、重犯罪者だよ。元憲兵隊副隊長の、な」
そう答えた。
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