第十五話
――勇者とは、真実を話す者である――
「それじゃあ先に自己紹介をしようか。私の名前はフェリーダ・ヴォトという。この街の憲兵隊で、体長などをやらせてもらっている」
「その、ラマです。十歳です。多分、旅人です」
ヴォトさんの先程の言葉に動揺しつつも、ボクは自分のことを話した。
「まだ十歳なのか……。正直、こんな子供が何人もの命を奪ったとは考え難いが……」
ヴォトさんはボクの背負う剣に目線を向けた。
「とりあえず、その剣は預からせてもらう。振り回されて怪我でもさせられたら困るからな」
「あ……はい。お願い、します」
ボクは震える手でおずおずと剣を差し出し、ヴォトさんはそれを受け取った。ヴォトさんは徐に剣から布を取り払って、刀身を露にした。刀身に光を当てたり、軽く振ってみたりと何かを調べているようだったが、ヴォトさんは溜息を一つ吐いた後で刀身を布で包んだ。
「何の変哲もない、ただの鉄の剣……か?血が付いていないことと言い、どうにも違和感があるな」
そう言ってヴォトさんは剣を床に転がした。わかっていたことだが、今のボクに加護はなかった。加護を付与する剣が遠ざかったことで、ボクは言いようのない不安感を覚えた。
「ふむ。聞きたいのだが、君はどうやって人を殺めたのかな?聞く所によれば、どの死体も刃物による傷を負っていたそうだが」
「……え、えっと、その剣で、切ったり、刺したり、して、殺し、ました」
上手く口が回らず、つっかえながらも手段を口にした。ヴォトさんは無言で、ボクの目を覗き込むように凝視した。本当は目を逸らしたかったが、こういう時に目を逸らしちゃいけないときつく言われていたので、ボクはヴォトさんの瞳を見続けた。
ヴォトさんは一つ頷いた後、口を開いた。
「成程、嘘は吐いていなさそうだな。それで、君はどうして人を殺めたんだ?襲われでもしたのか?」
「ち、違います。その、仕事、で」
「仕事だと?君にそう持ちかけた野郎がいる訳か」
「いえ、野郎では、ないです。ネビアさんは、女性、ですし」
ネビアさんの名前を口にした瞬間、ヴォトさんの目の色が変わった。
「ネビアだと?あいつが関わっているのか!?」
「え?は、はい。ボクは、ネビアさんから、仕事を、頼まれました」
ヴォトさんは顔を手で隠しながら天井を仰ぎ見た。ボクにはその行動の理由がわからなかった。そして、これからの展開も。
「なんてことだ……!マーレ、この子供を牢に突っ込んでおけ!私は皆がいつでも出られるよう準備を始めさせる!」
「え?は、はい!了解しました!」
ヴォトさんはボクの近くで直立していた若い男性に指示を飛ばした。若い男性には詳しいことが伝わっていないようだったが、上司の命令に従っていればいいと考えたようだった。
若い男性はボクを無理やり立たせると、痛い位に力を込めながらボクの手を引っ張った。入り口の扉が開き、ボクと若い男性が部屋を出た。
背後では、ヴォトさんの怒声がしばらく続いていた。
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