第十三話
どうも、パオパオです。
なんだか回を重ねるごとに勇者らしくなくなっている気がします。
今回は少しR-15気味です。
グロいのとか苦手な方は見ない方がいいかもしれません。
――勇者とは、剣を振るうことをためらわない者である――
ネビアさんから仕事を受けて、ボクは今貧民街と呼ばれる区画に居た。建物の間を縫うように進んで行けば、どこかしらの貧民街に辿り着く、とはネビアさんの言だった。唯一の心配事は、貧民街から戻れないことだったが、陽が沈む頃に街の中心にある広場に迎えに来てくれるらしかった。
そう言えば、貧民街と言うのは結局何だったのだろう。ネビアさんの話には出て来なかったが、この町に住む人でも知らない人は知らないそうだった。この仕事が終わったら、ネビアさんに聞いてみようと思った。
現在のボクの服装は、この町に入って来たときと同じ汗と土で汚れたいつもの服だった。ネビアさんによれば、ボクの服なら貧民街の住人と間違われてもおかしくないらしかった。村に住んでいた頃のボクと比べ、酷い生活を送っている人なんていくらでもいるようだった。
ボクの仕事の内容は、貧民街を歩き回り、絡んできた相手(大人の男だといいらしい)を可能な限り殺すことだった。荷物袋は邪魔になるかもしれないので、ネビアさんに預かってもらっていた。
ゆえに今のボクの本来の持ち物は、一本の剣と封筒だけだった。はじめの二つだけは、常に身につけていないと心配でしょうがないということもあった。
ボクは人を殺すという緊張感に飲まれかけていた。やめたいと思う自分も心のどこかに存在したが、これは仕事だからとそんな自分を押し殺した。
心臓を大きく高鳴らせながら、ボクはお世辞にも綺麗とは言えない道を歩いていた。そこかしこにゴミが散らばり、時にはかつて人だった者の欠片もあった。見つける度に気分が悪くなるが、吐き気を飲み下してどうにか耐えていた。
顔を若干青くするボクに、二人組の男が近付いてきた。男たちは汚い服に身を包み、ニヤニヤとした笑みを浮かべてこちらへ近寄ってきた。
ボクが最初に殺す相手が決まった。
「おい、ガキ。おめー、あぶねーもんもってんじゃねーか。俺が預かってやるから、その剣こっちに渡しな」
「ハッ!お前預かるとか言って、返したことねぇだろうが」
「うっせーな、そんなことねーっつーの。あれだよ、あれ。あれはちゃんと返したろ?」
「あれってなんだよお前。馬鹿じゃねぇの?」
「んだとコラ」
耳に入る雑音を無視し、ネビアさんから教わった精神集中法を実行した。神経を研ぎ澄ませ、体を戦闘態勢にしていった。
男のほうに顔を向けながら、背負っていた剣を右手に持って巻いていた布を取り外していった。こちらに気付いていないのか、男たちは諍いをしていた。何を考えているのかは知らないが、好都合だった。
「大体よぉ、お前ってやつはいつも……あん?」
「お、どうした」
「いや、ガキがいっちょまえに剣なんか抜いちまってるからよ」
「はっ、そりゃーこえーなー」
ここに至ってもまだ笑い声を上げてられる感性に驚きつつ、露になった刀身を近くに居たほうの男の胸に向けて突きだした。いきなり刺されるとは思っていなかったのか、男は顔に怒りと驚愕を浮かべたいた。構わずに剣を引き抜いた。
「お、おい、大丈夫かっ!」
血を吐きながら倒れた男に声をかけているもう一人の男に、赤い汚れの付着した剣を向けた。男は懐からナイフを取り出し、鞘を投げ捨ててこちらへと向けた。
「舐めた真似しやがってぇ……てめぇ、ぶっ殺してやる!」
男は怒声を上げながら走り寄ってきた。ボクは両手で剣を握り締め、勢いよく袈裟懸けに振り下ろした。男はナイフで防ごうとしたようだが、発生した炎によってナイフごと真っ二つになった。
炎によって付いていた血はとっくに蒸発していた。剣を地面に刺し、代わりに剣を包んでいた布を拾い上げた。既に炎が霧散している剣を布で包んで背負うと、落ちていたナイフを一本手に取った。
仕事の達成証明として、殺した相手の耳を切り取ってくるよう、ネビアさんに言われていた。渡された小袋に切り落とした三つの耳を入れた。後で殺した方の男の耳は、炎のせいか原形を留めていなかったからだ。
袋の口を縛ると、ボクは大きく溜息を吐いた。緊張した。初めて人を殺して、出てきた感想はそれだけだった。ネビアさんの言う通り、仕事として殺したのが良かったのだろう。改めてネビアさんに感謝を言わなければならないと思った。
触れているだけで不快な感触のする袋を腰に提げ、ボクは再び当て所もなく歩きだした。
陽が沈むまでにもう三人を殺し、合計で九つの耳を集めた。仕事をこなしたのに、何故だかちっとも達成感はなかった。
首を傾げながら、ボクは広場へと向かっていった。
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