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偽善の体現者  作者: パオパオ
第三章
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第十一話





 ――勇者とは、物事に巻き込まれる者である――











「話、ですか?もちろん大丈夫です」


 ボクは女性の言葉に耳を貸すことにした。ボクの答えに気を良くしたのか、女性は笑みを浮かべてボクを手招きした。

 そんな動作を見せた女性に、今まで見守っていた二人の男性が話しかけた。


「なあネビア、こんな見ず知らずのガキにやらせるつもりかよ?いくら何でもそりゃあねえんじゃねぇのか」


「そうですよネビアさん。こんなガキ使わなくても、俺がやってやりますって!」


「今まで出来てないんだから仕方ないじゃない!それじゃあキミ、ちょっと付いてきてくれないかな」


「はぁ、とりあえずわかりました。付いていけばいいんですね?」


「うん。詳しいことは行った先で話すから、待っててね」


 詳しいことも何も、まだ何一つ聞いていなかったが、気にすることなくボクは先行する女性の後を追った。背後から向けられる二人分の視線が、ボクの後ろ姿を射抜いていた。


 広めの道を四人で歩いていくと、一軒の建物の前で女性が立ち止まった。女性は建物の扉をためらいなく開け、堂々とした足取りで中へと入っていった。ボクは若干戸惑いながらも、女性の後に続いて扉を潜った。

 最後に入った男性が扉を閉めた。女性は部屋の奥に靴音を鳴らしながら進んで、ゆっくりと振り返った。


「それじゃあ、話を始めようか」



 とりあえず、ボクには何よりも先に聞かなければならないことがあった。


「具体的な話だけど――」


「話を遮ってすみませんが、まずは自己紹介をしませんか?ボクは貴方の名前も知らないんですが」


「うん?あー、そう、そうか。そうだね、私の名前はネビア。ネビアさんとでも呼んでね。それじゃ、キミの名前は?」


 女性の簡潔すぎる自己紹介を聞いた後、それに倣ってボクも端的に自分のことを話した。


「ボクの名前はラマ。ラマ・ロンポ・パドローネ。しがない一村人だった者で、今は多分旅人です」


「長い名前だね、キミ。まあいいや。それじゃあ早速話を始めようか」


「お願いします」


 うん、とネビアさんが頷いて、


「……えっと、何処まで話してたっけ?」


「そもそもボクがここに連れられて来た理由すら聞いてません」


「……」


「……」


 二人の口が閉ざされ、沈黙が場を支配した。


 コホン、とネビアさんは態とらしい咳を一つした後、何事もなかったかのように話を再開した。


「えっと、それじゃあまずキミがここに連れて来られた理由だけど、キミにちょっと頼みごとがあるからなんだ」


「頼み?」


「うん。簡単なお仕事。少ないかもしれないけど、成果に応じてちゃんと報酬も出すよ」


「それはありがたいです。お金もないことですし」


 村の中では金銭取引なんて滅多になかったので、ボクの荷物に金なんて入っていなかった。


「あれ、そうなんだ。それで、肝心のお仕事の内容なんだけど」


「はい、何でしょう」


 女性は一拍置いた後、


「貧民街で、人を何人か殺してほしいんだ」


 そう、端的に告げた。


読んでくれてありがとうございます。

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