私の裸を想像するんでしょ?
「やだ、気持ち悪い。気持ち悪いよ、そんなの……」
周防は顔をゆがめながら首を振っている。俺は思わず口を開いた。
「キメぇのは、お前だよぉ」
「ハア? どういうことですか?」
「何だよ、その性の対象ってのはよ」
「だってそうじゃん。この佐野ってひとは、私の画像を見て、私の裸になった姿を想像して、私を無理矢理手籠めにしている姿を想像するんでしょ? 何だったら、私がこの人を好きになっている場面なんかを想像して、ニヤけるんでしょ? キモいよそんなの。よくそんな男に私のことを話したよね。最低じゃん、まじで。最低だよ」
「……あたしゃ、お前の、上司だよ? それで、いいのかい?」
「……すみません。でも、絶対に、私は、イヤです。課長なら私の姿を隠し撮りしてこの男に画像を送る可能性もありますけれど、それをやったら、私、本気で課長を訴えますから。民事、刑事、両面で訴えますから」
「お前さんは、そんなに、俺のことが、嫌いかい? それなりに、お前さんの面倒を見ているんだがな」
「課長がそんな変態的な話をするからじゃないですかぁ!」
「周防、ウルサイ」
小春さんが小さいながもよく通る声で注意してくれる。グッジョブです、と心の中で礼を言う。事務所内だからいいが、人のいるところでそんなことを叫ばれた日には、俺の人生が変わってしまう可能性がある。まったく、コイツのキレ芸は何とかならないものだろうか。
「お前さんね、よく聞きなさいよ」
俺はそう言いながら、手で俺の机の前に来るように促す。渋々ながら彼女は移動してきた。
「どうしてそんな考えになるんだ? ただ単に、お前さんに興味があるから見たい、と言うだけだろう。確かに、確かにだ。女性の画像を見て、お前さんの言うように妄想する輩がゼロとは言わん。言わんが、それはごく少数だ。佐野はそんな男じゃないぞ、知らんけど。たぶん、おそらく、きっと、そういうことは、ないと思うんだよね。それとも何かい? お前さん、なにかこう言うことで、トラウマか何かを抱えているのかい?」
女性の裸を想像するのは、いわばアイドルのようなかわいい女子じゃないとやらねぇんだよと言うのを遠回しに伝えたかったのだが、どうも伝わっていないようだ。彼女は俺の質問にさも面倒くさいと言わんばかりの表情を浮かべながら口を開いた。
「大体私、写真写り悪いんです。すごく、不細工に写るんです」
「ほう、そうなのか。ちなみに、その社員証の写真はどうだよ」
俺は彼女が首からぶら下げている社員証を指さした。入社時に撮影されたものだ。それをちらりと見た周防は、首を左右に振った。
「これなんか、典型ですよ。すっごく不細工に写ってますよ。悪意すら感じます」
……そうかな? 俺はむしろ、そっちの方が、清楚でいいと思うけれどな。
俺は心の中でそう呟きながら、俯いた。




