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性の対象?

人というのは、こんな表情になるのか。俺は驚くと同時に、ちょっとした感動を覚えていた。目の前に立ち尽くす周防の眉毛が、まるで階段のようになっていたからだ。


神戸に帰ると俺は早速周防に、佐野という男がアナタに興味を持っている。ついては、写真の一つでも送ってはどうだろうと言ってみた。すると、彼女は前述のような表情になった。


間違ってもプラスの感情ではないことはわかる。池端、何言ってんの? と思っているに違いない。そう思われることは織り込み済みだ。ただ、この社内で、彼女にも興味を持つ異性がいるというのを伝えたかっただけなのだ。


潔癖症のために、他人、ましてや男の子の体に触るなどとんでもないと思っている女子に、そんな話をしても無駄だと思う反面、オレ、見ているゼ、という言わば味方のような存在がいるというのを知っておくだけでも、仕事に対するモチベーションが違ってくるのではと思ったのだ。しかも、相手は京大卒の俊英だ。東京大学とは釣り合いが取れないと考えるかもしれないが、仕事はできる男だ。いまのところ独身で、顔も悪くはない。詳しくは知らないが、きっと彼を狙う女子は多いはずだ。おせっかいだが、そんな男とお近づきになるチャンスが来ているのに、そのままにしておくというのはもったいないと思ったのだ。


「何ですか、それ。意味がわかりません」


まるで汚いものを見るかのような目で彼女は俺を睨みつけた。


「まっ、イヤならいいよ。きっと、周防は嫌がるだろうと言っておいたから、佐野も特に何も言ってこないだろう」


「当たり前ですよ。そんなことでとやかく言ってきたら、私、通報しますから」


「……通報する前に、一度、私に報告してくれ。ところで、佐野君の写真撮ったけれど、見るかい? あ、別にいいか」


周防は少し考えていたが、やがて、手のひらを裏返すと、人差し指をクイクイと動かした。なんて失礼な奴だ。


「見るのか、見ないのか。どっちだ」


「一応、見ます」


「来い」


彼女を後ろに控えさせると、俺はスマホを取り出して保存していた画像を見せる。


「ほら、これが佐野君だ。俺はイケメンだと思うけれどな」


「……」


周防は腕を組んで考えている。しばらくして、彼女はゆっくりと口を開いた。


「私の画像を送るということは、この人は私を、性の対象として見るということですよね?」


……何て?

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