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駐車場から徒歩3分は地獄風味
その日は、雪がどっさり降っていた。
「くしゅん」
芙実はかろうじてかわいいの範囲内のくしゃみをする。朝から薄着でドタバタしていたせいだ。それを聞いて3年後輩はしたり顔で笑う。
「せんぱい、そんなうっすーいコートで出社するからですよ」
「いいの。車の中はあったかだからっ! 社内は制服だし! カーディガンあるし!」
しかし、暴風吹き荒れる駐車場徒歩3分は暴虐な雪も伴い極寒地獄だった。芙実は帰りを思うとどんよりする。気温低下より、暗くてどこが凍っているのかよく見えないのが問題だ。従業員用なので裏手で余計暗いのが良くない。
「去年違うこと言ってましたよね。なんなら昨日も」
「くっ、わたしもそんなつもりはなかったのよ。昨日までは!」
「昨日なにがあったんです?」
「愛するコートちゃんが家出したんだから仕方ないじゃないっ」
「……ああ、クリーニングに出しっぱなしで、消失。可哀想なコートちゃん」
「かわいそうなのは私だ」
芙実は渋い顔でそう呟いた。




