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修理屋の悠々 ~故障品再生スキルで転生スローライフ~  作者: 相有 枝緖
第二章

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第44話 「あれが威嚇攻撃かよ」

数十分、息を潜めて待った。


ふと、視界の端で何かが小さく動いたと思ったら、ライナーがハンドサインで上からくると教えてくれていた。

小さくうなずいたカイは、周りを見た。


アウレリアもエーミールもフィーネも、気配を殺したまま武器を手に持っている。

そのまま息を詰めて、木の陰に隠れて待った。


ぶわり、と空気が押された。


上空から一直線に落ちるように飛んできたグリフォンは、地面すれすれで体勢を立て直したらしい。

周りの木々がざわりと揺れ、カイは風圧に思わず目を細めた。


グリフォンは、荷馬車の上に降り立ち、カイたちの方をじろりと見た。

探るような視線で、羽を広げたまま威嚇してくる。


「ぎゅわっぎゅわっぎゅわっ!!!」

喉を揺らしたグリフォンは、鋭いかぎ爪のついた前足を軽く振った。


「ふっ!」

アウレリアが、さっと避けた。


すると、アウレリアの立っていた地面が風で叩かれた。

グリフォンが風魔法を使えるというのは本当らしい。


「風?!最悪じゃない」

眉を寄せたフィーネは、一歩後ろに下がった。

火魔法と風魔法は、相性が良すぎて対峙するのに向かない。

下手をすると敵も味方も業火にやられてしまう。


くるりと周りを見たグリフォンは、アウレリアが一番危険だと判断したようだ。

予備動作もなく、一瞬でグリフォンがアウレリアに迫った。


「はぁっ!」

鋭い爪が迫るのに対し、アウレリアはハルバードで受け流した。

どうにか攻撃を逸らしている。


攻撃を躱されたにもかかわらず、グリフォンは焦ることなく周りも見ながらアウレリアに攻撃を重ねる。

一発食らうだけで大けがをしそうだが、アウレリアはすべて避け、受け流し、はねのけていく。


決定的な攻撃がないので、まだ様子見なのかもしれない。

しかし風魔法に前足での攻撃を織り交ぜてくるので、油断はできない。


「受けるぞ!」

途切れない攻撃を受け続けるアウレリアに、エーミールが加勢しようとした。

「頼む!」

アウレリアも了承し、エーミールの盾の後ろに回った。


ところが、グリフォンはエーミールを無視した。

というより、いないものとして扱った。


グリフォンの魔法は、エーミールの盾を避けて回り込み、アウレリアに迫ったのである。

「しつこい!!」


少し無理な姿勢から、アウレリアはハルバードを振って風魔法を切り割った。

「ぐっ」

ギヂヂ、とゴーレム部位が鈍い音を立てた。


アウレリアはしばらくそのまま対峙しようとしたが、エーミールが盾になることで逆に視界が狭まってしまったようだ。

「エーミール!下がってくれ!」

「わかった!」


エーミールが下がろうとしたときに、グリフォンは初めてエーミールを攻撃した。

「ふんぬっ!」

風魔法の攻撃を盾で受けたエーミールは、踏ん張って耐えた。

砂塵がふわりと舞う。


しかしグリフォンは、風魔法とほぼ同時にエーミールに迫った。

「させるかぁっ!」

アウレリアがエーミールの前に出て、ハルバードを振った。

刃先の軌道が、光の線を描く。


かぎ爪を向けていたはずのグリフォンは、ひらりと空中で一回転して攻撃を避けた。


「ちっ!避けられた」

グリフォンの真下には、ライナーがいた。

後ろからの攻撃を狙っていたらしいが、グリフォンが上空に逃げたので空振りしたらしい。


何度かぶつかり合うのを見ているうちに、カイは首をひねった。

「あのグリフォン、僕たちを追いやろうとしているみたいですね」


それに、近くにいたフィーネがうなずいた。

「そうよね。本気でやりに来てないわ。……下がってみましょう!荷馬車から離れる方向!!」


カイとフィーネはゆるゆると下がり、アウレリアたちも攻撃を躱しながら少しずつ荷馬車から離れた。



かろうじて荷馬車の端が見える程度のところまで行くと、グリフォンがひらりと木の間から空に舞い上がった。

そして、荷馬車の方へと戻っていった。


「あれが威嚇攻撃かよ」

肩で息をしたエーミールが言った。


「とんでもないな」

アウレリアが首を横に振り、フィーネも肩をすくめた。


「よし、そっと戻るぞ。なるべく隠れながら、様子をみたい」

ナイフを持ったまま、ライナーが言った。

ほかの全員が、ゆっくりとうなずいた。



息が整うのを待って、木に隠れながら荷馬車の方へ向かった。

あまり近づかず、木の隙間から確認すると、グリフォンは荷台の上でぐるぐると足踏みをしながら回っていた。

そして周りを一瞥してから、上を向いた。


「ぎゅいぃぃぃいいいっ!!」

グリフォンは甲高い声で鳴くと、いそいそと荷台を確認し、足を折って座り込んだ。


「っ」

カイは、声が出そうになって慌てて両手で口を塞いだ。


上から、さらに三体のグリフォンがやってきたのだ。

そのグリフォンたちは、先に荷馬車に座り込んだグリフォンの横に無理やり降り立ち、一緒に座り込んだ。


「グリフォンのすし詰め……」

荷馬車の板がギシギシいうのが聞こえるが、下に土台があるおかげでなんとかもっているらしい。


もしかしなくても、最初の女将たちの馬車が壊されたのはこういう状態になったためなのだろう。

あんなにグリフォンが乗ったら、普通の馬車なら押しつぶされて壊れる。


なんというか、体が獅子だからか、狭い段ボール箱に無理やり何匹も入り込む猫のように見えなくもない。

ぎちぎちに荷馬車に詰め込まれたグリフォンたちは、満足そうにお互いの体に頭を乗せていた。



そして、グリフォンたちはゆるゆると昼寝を始めた。



ライナーを見ると、ハンドサインで後ろに下がるようにと言ってきた。

カイたちはうなずき、ゆっくり下がっていく。


グリフォンたちが見えなくなり、さらに離れたところで一つ息を吐いた。


「ねえ、あれ、どういうこと?」

フィーネが小さく聞いた。


エーミールが軽く振り返った。

「どう見ても、巣にしてたぞ」


ライナーもちらりと後ろを見てからうなずいた。

「ああ、そうだな。どうやら馬車が気に入っているらしいが……。まだ今すぐ判断はできない。しばらく、様子を見てから考える」


「わかった」

アウレリアは、そうっとハルバードを背中に背負った。





「えっ?!グリフォンの目の前に?何もなかったの?」

デニスに報告してから、カイは商店に立ち寄ってヒルダに説明していた。


「僕は荷馬車を補強したくらいで、あとはそこにいただけだから」

グリフォンは、カイのことなど見向きもしていなかった。

それはそれで何とも言えない気分だが、無事だったのだからなんでもいいだろう。


ヒルダは、カイを左右から見てうなずいた。

「良かった、ケガはなさそうね。アウレリアさんたちも、大丈夫だった?」


「うん。アウレリアさんはちょっとグリフォンと戦ってたけど、あっちも本気じゃなかったみたいで、後ろに引いたら向こうも追いかけてこなかったんだ」

ぐるぐると確認されて苦笑しつつ、カイは手を広げて無事だと示した。


それを聞いたヒルダは、ほう、とため息を吐いた。

尻尾がゆらゆらと揺れている。

「絶対危険な状況だから遠慮したいけど、アウレリアさんたちの戦いはちょっと見てみたかったわ」


「アウレリアさんのハルバード、すごくかっこ良かったよ。エーミールさんの盾も迫力があるし、フィーネさんの魔法は緻密だし、ライナーさんの索敵は全然見えないときから分かってるし」

カイが思い出しながら言うと、ヒルダは目を輝かせ、耳をピンと立てた。


「いいなぁ!落ち着いたら、ちょっとだけ訓練とか見れないかしら」

ヒルダの言葉に、別の声が答えた。


「朝の訓練は庭でしていることが多いから、別に見に来てもかまわないぞ」

「アウレリアさん!」

ヒルダは、パッと身をひるがえした。


カイは、ニコニコのヒルダと楽しそうなアウレリアが話すのを横から聞いていた。

だからだろうか、少し目についた。


(アウレリアさん、左手どうかしたのかな)


大したことはないのだが、ゴーレム部位の手首をぐりぐりと回しているのがなんとなく気になった。

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グリフォンのサイズ(重量も込みで)と生態的に自分で巣を作るの面倒だからそれらしい巣穴とかあったら今回のケースみたいに縄張りにしようとしてるのかねぇ・・・w 安心してゆっくりできる場所って警戒心高いのも…
ほわぁあ!囮のつもりで馬車を強化したらグリフォン達のお昼寝場所になっちゃった!?な、なんて可愛いんだ……戦法は全然可愛げがなくって流石グリフォンって感じだったけど……。
グリフォンの下半身は獅子だから半分猫みたいなもん 猫は狭いところが好き そういうこと!?
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