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第94話 ネガティブ勇者、君のもとへ。



 王の間の中央でリオは膝を付き、地面に手を当てた。

 ナイが纏っていた黒い影の霊気を探っている。目に見えそうなほどの集中力に、皆は黙って彼を見守った。


 ナイが消えた場所。最初の魔王が生まれた場所。

 改めてこの場に立ち、レインズは魔王だった少年の言葉を思い出す。


 この世界で起きたこと。

 先祖の罪。

 ただ友が欲しいと願った王子の願いが、悲しい運命を築いてしまった。

 王子は何を思っていたのだろう。友を奪われ、友を殺せと命じられ、それに従った彼の気持ち。

 当時のことは何一つ分からない。語られた言葉の中に彼の心はどこにもないのだから。


 もし自分が同じ立場だったら、何を思うのだろう。

 自分の願いで呼び出した少年を、守ってあげることが出来ただろうか。

 親の、国王に歯向かうことが出来ただろうか。

 自分だったらそんなことしない、なんて簡単には言えない。王族には王族の立場がある。勿論、彼らがしたことは許されないことだ。だけど、王子の願いを間違いだと一蹴する気にもなれない。


「……あー、くそ」


 苛立った声が聞こえ、レインズはそちらへと振り向いた。

 リオが頭をガシガシと掻きながら、地面を蹴った。


「どうした、リオ」

「どうもこうも、深すぎて掴みきれねー! アイツ、出てくる気ないんじゃねーの!?」

「どういう意味だ」

「ここには確かに霊脈がある。それも根深いものが! 多分この奥にあのガキがいるんだろうけど、そこが深過ぎて辿れないんだよ」


 かなりイラついてるのか、眉間に深い皺が寄っている。

 何でも楽観的に考えて難しいことも楽しもうとするリオがここまで苛立ちを顔に出すのも珍しい。

 それほど苦戦しているのだろう。

 しかし、レインズが気になったのはそこではなかった。


「出てくる気がないっていうのは?」

「あのガキが魔王にシフトしたのはついさっきだろ。闇に潜るってのは、要は自身の心の中に籠ることだ。アイツはまだ完全に魔王の呪いに飲まれたわけじゃないはず。それなのにここまで深く潜ってるってことは、アイツ自らがわざとそうしてる可能性がある」

「……まさか、ナイは目覚める気がないと?」

「アイツなりにこの歴史を終わらせるつもりなのかもしれねーな」

「そんな……! それじゃあ、意味が……意味がない! 私はこの世界の平和のためにナイを犠牲にしたいわけじゃない!」


 感情を露わにするレインズに、リオは少し驚いた。

 いつも落ち着いていて、笑顔を絶やさないみんなの王子様。それが一人の少年のためにここまで必死になっている。

 《みんなのために》ではなく、《誰かのために》。


「リオ様」


 ずっと黙っていたアインが口を開いた。

 真っ直ぐ、いつもと変わらない様子で。


「なんだ、アイン」

「……こっちから連れ戻せないのなら、俺がアイツのところに行くことは可能ですか?」

「は? 人間の心ん中に入る気かよ! これはただの深層心理じゃない。過去の霊やら何やらが作り出した闇だ。お前まで食われちまうぞ!?」

「構いません。俺は、アイツを一人にさせない。決して離れない。今度こそ、絶対に」


 燃えるような瞳が、その想いを訴えている。

 こんな勝率の低い賭け、普通なら断るところだ。


 しかし、そんな賭けに今まで勝ってきたのがこの男。


「良いだろう、乗った。お前の心意気に賭けてやろうじゃねーか」




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