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第91話 ネガティブ勇者、闇に眠る




 周囲の闇が消え、王の間に残されたレインズとアイン。

 状況を整理したい。だが頭の中がグチャグチャで冷静になれない。

 勇者のこと。魔王のこと。ダナンエディア国のこと。

 今まで信じてきたものが、信じられなくなっている。


「ナイ……ナイは、どこに……魔王はなんであの様なものを見せたんだ」


 何よりショックだったのは、ナイの過去だ。

 彼が元の世界で辛い経験をしていたことは察していたが、あそこまで酷いものだとは思っていなかった。

 ナイがこの世界に来たときに泣き出したこと。ずっと人に対して怯えていたこと。それは、あんな環境にずっといたせいだった。


 レインズは後悔した。あんな思いをしていた彼に想いを告げたこと。

 性的虐待を受けていた彼に他人からの恋愛感情なんて理解し難いものだったかもしれない。

 あの時、ナイがどう思っていたかなんてレインズに分かるはずもないが、それでももっと関係を築いてからにするべきだったと思わずにはいられない。


 だが今はそんな後悔をしている場合じゃない。


「それにしても……魔王は彼の記憶を見せれば私達が逃げ出すとでも思ったのか?」

「……違います、レインズ様。我々がどう思おうと関係ないんです」

「どういうことだ?」

「魔王の狙いは勇者です。アイツは自分の過去を知られたくなかった。自分の傷を見せたくなかったんです……だから魔王は確実に心が折れるのを分かって、あんな事をしたんです……アイツを最後の魔王にするために」

「最後の……そうか。確かに我が国が彼らにしてきたことを思えば、それもやむを得ないのだろうな」


 宝剣が生まれた理由。それは魔王を、元勇者を倒すためのものだった。

 それがこの身に宿った宝剣。忌まわしい過去の産物。

 その力は確かに魔王を断つもの。

 今度は、ナイにそれを向けねばならないのか。


「あの魔王の話を鵜呑みにするのであれば、ナイはすぐに魔王となるわけではないんだよな?」

「恐らく。今までの、歴代の魔王……いえ、異世界の少年たちの記憶や怨念と同調して、体にその力が馴染むまでは動けないんだと思います」

「今度もまた150年もかかるかどうか分からないし、もしかしたら明日にでもナイが魔王として目覚めるかもしれない……早くナイを見つけなければ……」


 ナイを見つけ、異世界の少年に課せられた呪いを解かねばならない。

 もうこの世界に勇者なんて必要ない。

 もう魔王が生まれることもない。


 今度こそ、勇者の役目を終わらせなければいけない。


「どうにかしてアイツの居場所を見つけましょう。闇の中にいるのであれば、引っ張り出さないと……俺は、アイツから離れないと約束したんだ……」


 アインは拳を握りしめた。

 背中を預けてくれと自分から言ったのに。離れないと約束した。それなのに、約束を違えてしまった。


 酷く後悔するアインに、レインズは彼の背中にそっと触れた。

 彼もまた、自分と同じくナイを大切に思っている。

 我々の勇者を、助けたい。

 このまま彼に世界を滅ぼさせるなんて、させたくない。


「アイン。ここからテオ様に連絡は取れるか?」

「テオ様に?」

「私達だけで手をこまねいていても埒が明かない。協力を仰ぐべきだ」


 ナイを救う方法を探さないといけない。

 二人は魔王城を出た。外は黒い雪が止み、空からは昔のように白い雪が降っていた。

 あの黒い雪も魔王の魔力が影響していたのだろう。今はそれら全てをナイが吸収したため、結界がなくても外に出ることが出来る。


「ここだけ見れば、世界は救われたと皆は思うのかもしれませんね」

「そうだな……だが、まだ終わってない。確実に魔王を倒さなくてはいけない。魔王という、呪いを」


 元はと言えばダナンエディア国が原因で生まれた呪いだ。

 だったら、その子孫である自分が責任を取らねばならない。

 レインズは覚悟を決める。知らなかったなんて言い訳はしたくない。


 大切な人を守るために、戦う。





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