表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/100

第84話 ネガティブ勇者、決意を固める。



 食事を終え、ナイとアインは外でレインズを待った。

 魔王城は以前にも行ったリーディ鉱山よりもさらに北、豪雪地帯にあるという。

 常に吹雪いているその場所は元々は真っ白で幻想的な地だったが、魔王城が現れてから黒く染まってしまったらしい。

 黒く染まった雪は侵入者を阻み、踏み入れた者に死を与えるという。


「……そんな場所、行って大丈夫なの?」

「そんな場所に行けるのは勇者の結界だけだろ」

「あー、そっか」

「正直、俺が行っても足手まといになるかもしれない。邪魔になったら置いて行けよ」

「え」


 いきなりそんなことを言われると思わず、一瞬息が止まるほど驚いた。

 確かにこれから行くのは、それほど危険な場所。

 魔王の元に必ず辿り着かなくてはいけないのは、勇者であるナイと宝剣のレインズ。アインにもしものことがあれば、置いていく覚悟もしなければいけない。


「もちろん、そんなことにならないよう俺も最善を尽くす。全力でお前とレインズ様のフォローをする」

「アイン……」

「もしもの話だ。お前は俺のことなんか気にせず前だけ向いてろ。後ろを向くな」

「で、でも」

「背中を預けてくれ。決して、離れないから」

「……うん」


 前を見据えて言う、力強い言葉。

 アインはいつも迷いがない。どんな時でも、自信を持って相手に自分の言葉を告げてくれる。

 だから、とても頼もしい。


「アインは強いから、心配してない、よ」

「俺は別に強くはない。強く見せてるだけだ」

「それでも、僕からすれば十分凄いよ。僕は、アインみたいに強くなろうとすらしなかった」

「……ただの強がりだ。凄くはない」

「それも、強がりのひとつ?」

「お前も言うようになったな」


 二人はクスクスと笑い合った。

 こんな風にアインと話せるなんて、初めの頃は思わなかったとナイは心の中で思った。

 お互いに最初の印象は良くなかった。だけど今は、心を許し合える仲になっている。


「この世界に来てから魔王の姿形も見てないけど……どんなヤツなんだろう」

「残念ながら俺にも分からない。ただ魔王は世界中に魔物を溢れさせて、人を襲わせている。自分は隠れてコソコソと、ふざけやがって…」

「そうなんだ……なんか、僕自身は魔王のこと何も知らないから、だから怖いとか、そういう気持ちが湧かないのかな」

「魔王城を見ればすぐにそんな気持ちも吹っ飛ぶぞ」


 死の蔓延る豪雪の地。

 ナイの結界もどこまで通じるか分かったものじゃない。

 無事に帰れる保証もない。


「ああ、そうだ。テオ様から預かってるものがある」

「え?」


 アインは収納魔法から小さな箱を取り出した。その中に入っていたのは、精霊の涙から作った美しいネックレス。

 箱からネックレスを出し、アインはナイの首にそれを掛けた。


「……これで、無敵だな。勇者様」

「みんなのおかげ、だよ」


 ナイは首から下げられたネックレスに触れる。

 この世界での未来を生きるために、戦わなきゃいけない。

 勝たなきゃいけない。

 負ける訳にはいかない。


 ナイはこの世界で気付いてしまった。

 護りたいもの。失いたくないもの。


 魔王を倒したらレインズは婚約する。王子として、国王になるため、この国の未来を守り続けるために。

 そしてアインもその隣で彼を守り続けるだろう。


 そんな彼らを、ナイも守っていきたい。

 これはそのための、勇者の力。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ