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第61話 ネガティブ勇者、精霊の泉を見つける



 リオを先頭に、皆で階段を降りていく。

 薄暗く、明かりも無い。レインズが魔法で宙に浮く光の玉を出し、それで先を照らしてくれているが濃い霊脈のせいで魔力が安定しない。

 辛うじて足元を照らせる程度の光量しかないが、今はこれが精一杯だ。


「レインズ、無理はしないでね」

「大丈夫です。族長様のおかげで少しはマシですから」

「ハッハッ! 俺に感謝しろよ!」


 階段を降りた先は狭い道があるだけ。

 一本道なので迷うことも逸れることもないが、罠が仕掛けられている可能性もある。警戒は怠らず、先へと進んでいく。


「……なんか、涼しい、ね」

「なんか水の力が満ちてるわね。私はなんか調子良くなってきたわ」

「水……じゃあ、ここに精霊の泉があるの?」

「断定は出来ないけど……可能性はあるわね」

「そう、なん、だ……っへくしっ!」


 ナイは急な肌寒さに腕をさすった。

 地上の暑さとは打って変わり、地下はとても涼しい。むしろ寒いくらいだ。

 まるで砂漠の夜。むしろ、それよりもっと寒いかもしれない。


「奥に進むにつれて嫌な感じもしなくなってきたな。空気が綺麗だ」

「リオ兄、それって幽霊がいないってこと?」

「まぁ俺の目には見えてないな」


 鉱山の地下と似て、力を秘めた水が邪気を払っているのかもしれない。だからここには魔物もいないし、怨霊の類も姿を見せない。

 霊気が薄れていくことによって、魔力も安定していく。

 レインズはパチンと指を鳴らし、光の玉を増やした。


「入り口付近は腹立つくらい霊気が濃かったのに、ここは全然だな」

「途中から物凄く寒くなったよね。もしかしたら、あの空気が霊気を遮断しているのかもしれない」

「ほっほーう。なるほどな、この地下に住む何者かの力かもしれねーな」


 テオとリオは未知なる存在にテンションが上がったのかドンドン先に進んでいく。

 ナイも奥に何があるのか興味はあるが、寒さのせいでそんな活発には動けない。


「僕、寒いのも駄目なんだけど……」

「確かにここは冷えすぎますね。砂漠は夜冷えますから、二人には慣れっこなのかもしれないですね」

「レインズ様、上着を羽織ってください。ほら、お前も」


 アインが荷物の中から上着を取り出して二人に手渡した。

 魔法で少し温めておいてくれたようで、腕を通した瞬間体が暖かくなった。


「すまないな、アイン。助かる」

「ありがとう……あったかい」

「……いえ」


 アインの気遣いに感謝し、三人もテオ達の後を追う。


 少し先に進むと、周囲の雰囲気が少し変わった。

 広い空間。灯りがマトモに機能しない暗闇。耳が痛くなるような静寂。

 ナイたちは足を止め、目を凝らして周りを見る。


「……何か、ある?」


 ナイは何かの気配を感じ、魔法陣を展開させた。

 目で見えないなら、魔力で探ればいい。目を閉じて周辺を察知しようとした、その瞬間。


 ナイの魔力に反応したのか、壁に置かれていたかがり火が一斉に灯り、部屋中を照らした。


「っ!?」

「な、なんだこれは!?」


 リオの声が反響する。

 驚くのも無理はない。灯りに照らされたそこは、まるで神殿のような神秘的な作りをしていた。

 壁一面に流れる水のカーテン。奥には小さな泉と、美しい彫像を模した噴水が置かれていた。


「ここが、精霊の泉……」


 ナイは溜息を零した。

 なんて荘厳な雰囲気なのだろうか。皆、言葉が出なかった。人に与えられた語彙などで、この場に相応しい表現なんて出来るわけがない。


「……か、肝心の精霊はどこでしょうか」

「あ、ああ……そういえばそうだった。ナイ、何か感じました?」


 アインの言葉に我に返ったレインズは、先ほどの察知能力で何か見えたか聞いた。


「え、ああ……その泉に、強い反応があった」


 ナイが指をさすと、部屋中に小さな笑い声が響いた。

 美しい声。だけど、どこか恐ろしくもある不思議な音色。


 その声が聞こえてきた泉の水面が渦を巻き、水の中から何かが現れた。


「懐かしい魔力を感じて出てきてみれば、まさか勇者が来るなんてね」


 泉から出てきたのは、人魚のような容姿をした妖艶な美女だった。




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