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第55話 ネガティブ勇者、眠る闇




 レインズはナイはもう過去を克服したのだと勝手に思い込んでいた。

 笑うようになったから、勘違いをしていた。


 レインズは自分を基準にして考えてしまったことを後悔した。

 ナイがこんな少年なのか、理解できていなかった。解った気になっていた。

 王子として、人々の上に立つ者として、何て愚かなことをしてしまったんだろう。


「……その影は、どうしたら」

「俺はあくまで見えるだけ。それを消したりは出来ない。あの影はあのガキに憑いてる亡霊、いや怨念にも似たようなものだろうな」

「それがナイにどう影響するのでしょうか?」

「おやおや、王子様は勇者様にご熱心かい? だが、お前にどうにかできるとは思えないね」

「そんな……」


 リオはジッとレインズの目を見た。

 幼い頃から族長と王子として交流はあった。小さいときはテオと共に友人として遊んだりもした。今はそれぞれ立場があるせいで昔のような付き合いも出来ないが、お互いに良き友であるという認識は変わっていない。

 だからこそ、リオはレインズの僅かな心の変化に少し複雑な思いもあった。


 これを、どう助言すればいいのだろう。いや、していいのだろうか。

 見えないものが見えてしまうからこそ、リオにはナイの闇の深さが分かってしまう。

 これはレインズの光でも照らせないかもしれない。


「……なぁ、レインズ」

「え……」

「俺は、友としてお前が好きだ。だからこそ、お前には王子様としての幸せを願っている」

「王子として……? 意味が分からないな」

「あれは、止めておいた方がいい。手に負えないだろうよ」

「……?」


 レインズは首を傾げた。

 リオが何を言いたいのか本気で理解できない。

 だが自分の身を案じてのことだとは分かる。


「ありがとう、リオ。言葉の意図を汲み取れなくて申し訳ないが、覚えておくよ」

「おうよ。それじゃあ王子様、本題に戻ろう。今回、ここに来た理由だ」


 リオがそう言うと、ずっと二人の話を黙って聞いていたテオがポンと手を叩いて割って入った。


「はいはい! ナイの装備強化のために精霊の涙を取りに行きます!」

「そりゃまたSS級のお宝を探しに来たものだな。俺にも精霊の泉の在処は分かんねーぞ」

「それをナイに探してもらおうと思っているの。あの子の察知能力なら出来ると思ってるんだけど……」


 そう言いながら、ナイの眠る部屋へと視線を移した。

 まさかあんなにも弱るとは思っていなかったので、一同に不安がよぎる。


「あのガキ、本当に大丈夫なのかよ」

「つ、強いのよ? ナイは本当に強いんだからね?」

「そ、そうですよ。ナイはとても頼りになるんです」

「そういうこと言ってるんじゃねーんだよ」


 二人の必死のフォローにリオは呆れた。

 強いことくらいリオにだって分かっている。問題はナイ自身の体の弱さだ。多少は鍛えられたとはいえ、この砂漠の気候に耐えられるとは思えない。

 たとえ霊力の妨害があっても魔力で強化すれば多少はいけるだろうが、それでも少々リスキーだ。


「……仕方ない。ここは俺も手を貸すとするか」

「え、リオ兄が?」

「片手を失った程度で俺の強さが損なわれたと思っちゃいけねーよ? 俺は世にも珍しい無色の魔法使いでもあるんだ。魔力と霊力の混色魔法、お見せしようじゃねーの」


 まさに威風堂々。その自信に満ち溢れた表情からは頼もしさしか感じられなかった。




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