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第44話 ネガティブ勇者、気持ちを切り替える



 翌朝、目を覚ましたナイは窓から差し込む朝日を見て少し驚いた。

 初めて夢を見なかった。ぐっすり眠っていたせいかもしれないが、いつも元の世界のことを夢で見ていたのに。

 いつも当たり前のように見ていたせいか、何もなかったことに戸惑いを隠せない。


「……すごい」


 もしかして、昨日の夢で悪夢を燃やしたせいなのだろうか。ナイは泣きそうになるのをグッと抑えて、いつものように顔を洗って精神統一を行った。



―――

――



 微かな物音に気付き、レインズは目を覚ました。

 ボーっとしながら体を起こし、隣にいるナイに目をやった。


 おはようございます、と声をかけようとして止めた。

 ベッドの上で胡坐をかき、膝に手を置いて目を閉じているナイの姿に息を飲んだ。

 隙のない姿勢。研ぎ澄まされた魔力。

 ナイの格好は見様見真似の座禅のポーズだが、それを知らないレインズはその光景が少し不思議に見えた。


 それにしても、とレインズは感心した。

 ナイの纏う魔力。表に見えるモノと、内に秘めた計り知れないモノ。普段は分からない力が、いまは少しだけ顔を出している。

 その力を見せられると、やっぱり彼は勇者なのだと思わずにはいられない。


「ふぅ……、っ!?」


 ナイが息を吐いて目を開けると、ジッとこちらを見てるレインズに気付いた。

 レインズも見惚れていたことに気付き、慌てて視線を外した。


「す、すみません。随分集中しているなと思って声をかけられなくて……」

「い、いや……そんな、気にしなくていい、けど……」


 ナイは見られていたことより、寝起きのレインズに物珍しさを感じていた。

 いつも整った彼の、抜けた姿。朝から晩まで完璧な王子様を想像していたナイは、慌てて身支度を済ませるレインズを見て少し笑みを零した。


 暫くして、ドアがノックされてアインが顔を出した。

 もうすっかり回復したようで、いつも通りの様子で朝食を運んできてくれた。


「おはようございます」

「おはよう、アイン。もう体は平気かい?」

「はい。問題ありません」

「それは良かった」


 二人の会話もいつも通り。

 ナイもアインに一言朝の挨拶をして、朝食を済ませた。



「先ほど、テオ様から連絡がありました。城に戻り次第、テオ様の元に来てほしいとのことです」

「わかった。ナイもそれで大丈夫ですか?」

「う、うん」


 帰り支度を終え、レインズも村長に挨拶を済ませた。三人は再びロデルニア国へ向かい、ダナンエディア国へと戻る。



―――

――



 体力も魔力も回復したナイの魔法は昨晩に比べて精度を上げていた。

 サポートとして冷静に状況の把握も出来るようになり、おかげで帰りの森での魔物討伐は一段と楽になった。

 心に余裕が出来たのだろう。昨日の戦闘で多少なりとも経験値は得ている。それがナイを飛躍的にレベルアップさせていた。


「ナイ、随分と戦闘に慣れましたね」

「ほ、本当?」

「ええ。おかげで私たちも楽に戦えました」

「そ、そっか……なら、良かった。昨日、アインが言ってた罠も仕掛けられたら良かったんだけど、まだ術式が組めなくて……」

「別に急かしてない。テオ様とも話してキチンと形にした方が良いだろ」

「うん」


 ナイの心の余裕は戦闘だけでなく、人との会話にも影響している。

 いつも言葉を選んで途切れ途切れになる口調だったが、少しずつ自然に話せるようになってきた。


「もう少しで森を抜けます。気を抜かずに行きましょう」


 先陣を切るレインズの後に続き、ナイも進む。


 歩き足取りすら、昨日よりも軽く感じる。

 気持ちの変化が体にも影響しているのかと、ナイは不思議な感覚でいた。




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