表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/100

第41話 ネガティブ勇者、目を覚ます



「……んっ」


 目を覚ますと、見知らぬ天井があった。

 ナイは顔を動かして周囲を見る。

 ここはどこだろうか。窓の外に見える雪で、ダナンエディア国でないことは把握出来た。

 それから、温かい手。


「……レイ」


 顔を横に向けると、自分の手を握ったまま眠っているレインズがいた。

 ずっとそばにいてくれていたのだろうか。

 ナイは夢の中で見た光を思い出した。

 暗雲を裂く、天からの光。レインズを思わせる光の剣が、助けてくれた。


「……う、ん。あれ、眠って……」

「おは、よう……レイ」

「ナイ! 気付いたんですね。どこか痛いところはないですか?」

「へー、き……それより、僕のせいで、ごめんなさい……」

「大丈夫ですよ。水晶ならアインが取りに行ってくれましたから」

「アイン……」


 あの名前に、ナイは夢の中であの忌々しい過去を燃やしてくれた炎を思い出した。

 あのとき胸に宿った炎。あれがなかったら、ずっと過去に囚われたままだった。あのときの言葉がなかったら、立ち上がることも出来なかった。

 あの炎が光に導いてくれた。

 あれはアインの魔力。鉱山の地下で倒れたナイを助けるために与えてくれた彼の魔力が、夢の中でもナイを救ってくれた。

 二人がナイを、助けてくれたのだ。


「……アインは?」

「それならもう戻ってきてますよ。別室で眠っています」

「だ、大丈夫、なの?」

「ええ。ちょっと疲れて寝ているだけです。休めばすぐに元気になりますよ」

「……そっか」


 ナイは胸を撫で下ろした。

 自分のせいで何かあったら、もう立ち直れない。


「アインが目を覚ましたら城に戻りましょう。ナイもそれまで休んでいてください。お腹は空いてませんか?」

「え、あ……」


 大丈夫と言おうとした瞬間、ナイのお腹から空腹を訴える音が鳴った。

 その音にレインズは小さく笑みを零し、何か持ってきますねと言って部屋を出ていった。


 一人、知らない部屋に残されたナイは、ベッドに体を預けて息を吐く。

 助かった。あの場所からも、悪夢からも。

 夢の中で過去を燃やしたらといって元の世界での記憶が消えたわけじゃない。それでも、あの光に導かれたときに口にした言葉は紛れもなくナイ自身の気持ちだ。


 ナイは胸に手を置いた。もうあの時のような熱は感じない。

 もうアインの魔力はナイの魔力に馴染んで消えてしまったのだろう。それでもナイは覚えてる。

 道を指示してくれた、あの暖かさを。


―――

――


 レインズが持ってきてくれたスープを食べながら、鉱山を出た後の話を聞いた。

 ここはリーディ鉱山から少し離れた場所にある小さな村、ゼンド。宿にナイを寝かせた後、アインは一人で鉱山に戻って水晶を回収に向かった。

 それから大体一時間ほどしてアインは戻り、今もまだ眠っている。特に怪我もなく、魔力を消耗しただけで問題はないそうだ。


「……それで、水晶は?」

「アインの部屋に置いてありますよ。私も見ましたが、特に何も映らなかったんですよね」


 レインズが首を傾げた。

 どうやらあの水晶の力はあの場所に満ちた魔力も影響しているようで、そこから持ち出したら真実を映す力は発揮されないみたいだ。

 ナイは少しだけ安心したが、もう一度あの過去に立ち向かいたい気持ちも少しだけあった。

 二人の力に頼らずに立ち上がれなきゃ、克服したことにはならない。

 前を向くためにも、もっと強くなりたい。自信を付けたい。


「……レイ」

「なんですか?」

「……ありがとう」

「え? どうしたんですか、急に」

「ううん。なんでも、ない」


 ナイは小さく首を振って、ぎこちなく笑った。

 変われる。きっと、変われる。


 ナイは漆黒の瞳に宿った光で、前を見つめた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ