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第36話 ネガティブ勇者、鉱山探索をする



 それから歩くこと数十分。

 段々と雪が強くなっていき、視界も悪くなっていく。

 こまめに鉱山へのルートを確認しながら、ナイ達は進んでいった。



「着きました、ここです」


 雪に覆われた鉱山。入口は厳重に封鎖されているが、レインズが手を翳すと南京錠が外れた。

 この鍵も魔法で出来ているのかとナイは感心する。


「ある程度は探索も済んでいるのですが、地下は危険も多いということであまり発掘も進んでいないのです。だからテオ様が仰っていた水脈も順路が分からないんですよね……」

「とりあえず地下へ行きましょう。地下にも魔物がいたという報告があるので、気をつけてください。お前は重力系の魔法をあまり使うなよ、落盤する可能性がある」

「わ、わかった」


 ナイは改めて気を引き締め、レインズ達の後ろを付いていった。

 順路を辿って地下へ降り、水晶のある水脈を探す。穢れのない水には力があるらしく、それを辿れば見つかるとテオが言っていた。


「丁度いい。お前の察知魔法を使えば分かるんじゃないか?」

「う、うん。やってみる」


 ナイは目を閉じ、無心になる。

 神経を澄まし、周囲の気配を感じ取る。

 外と違い、鉱山内は道も狭く障害物も多い。地下にある他の鉱石も微々たるものだが力を秘めている。さらに下の方からも森で出会ったような邪悪な気配がある。数は多くないが、森にいた魔物よりも強い魔力だ。その中から水脈を探すのは少々難易度が高い。


「……下で、何か動いてる」

「魔物でしょうか」

「うん……その、もっと下でも何か動いてる……」

「思ったより深いんだな……報告書に書いておきます」

「うーん……立ったままだと集中できない」


 ナイはその場に座り、改めて周囲を察知する。

 姿勢を楽にしたことと、地面に近いおかげで地下の気配をさっきよりも鮮明に感じられるようになった。

 動いてる魔力の数。動かない無数の微弱な魔力。その下にある、静かに流れる綺麗な力。これが水脈だろうか。近くに澄んだ力を感じる。これが探している水晶かもしれない。


「っ、ふう。多分見つけた」

「本当ですか」

「空気の流れ的に、下に降りる道はあっちかな」


 ナイが指さす方向へと歩き出した。

 未探索エリアに入り、段々と足場も悪くなっていく。ナイたちは周囲に気を配りながら地下に巣くう魔物を倒し、水晶を探す。

 地下で大きな魔法は使えない。激しい動きで技を繰り出せば天井が落ちてくる可能性もある。そこを気を付けながら戦うのは相当難しい。加減をしつつも確実に勝たねばならないのだから、ここでの戦闘はナイにはキツイ。

 ナイはまだ自分の力を加減しながら魔法を使うことに慣れていない。まだ使い慣れていない刀で何とか魔物を倒していく。


 想像以上に、この人数での地下探索はかなり厳しい。

 三人ともかなり体力と神経をすり減らしていた。


「レインズ様……だ、大丈夫ですか」

「あ、ああ……だが、ちょっと、いや、思ってたより大変だな。ナイ、お怪我はありませんか?」

「ぼ、僕は、大丈夫、です……怪我、しません、から……」


 周囲に魔物の気配が無くなったのを確認し、三人は少し休憩する。

 地下は空気が澄んでるおかげで消耗した魔力も回復できる。ナイは深く深呼吸をして乱れた呼吸を整えた。


「ど、どうだ。水源は、近くにありそうか」

「うん……水の流れ、感じるよ。この、真下にある……」

「もっと下なんですね。鉱山には何度か来たことがありますが、ここまで深くまで潜ったのは初めてですね……」


 各々体を休めながら、周囲を見渡す。

 壁に埋まる鉱石。まるで星空のようで美しいと、ナイは思った。


「……不思議な場所、だね」

「そうですか?」

「うん……僕、山とかも登ったことないから分かんないけど……空気が、澄んでる、というか……優しい、というか……」

「水脈のおかげでしょうね。水が綺麗だから、空気も澄んでいるんだと思います。外はどこも少なからず空気が汚れます。魔物の影響だとも言われていますが、ここの水源は地下深くにあることで何の影響を受けずにいるんです」

「確かに、この下には魔物の気配を感じない……近付けない、のかも……」

「それも水晶の力か……」

「多分……まだ遠いのに、力を感じる……穢れを寄せ付けない、そんな雰囲気……」


 ナイは地面に横たわり、目を閉じた。

 耳を澄ませると水の流れる音が聞こえる。聞いているだけで、心が洗われるような気がする。


「この場所にいると、私も落ち着きます。鉱石には光が宿っているせいかもしれませんね」

「だったら、僕が落ち着くのは何でかな……」


 ナイは体を起こし、グッと腕を伸ばす。

 体を休めることが出来たので、地下探索を再開することにした。




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