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第25話 ネガティブ勇者、休暇



 朝食を済ましたナイ達は、今日もテオの所を訪れて戦闘訓練をしている。

 昨日と同じ基礎を積み、少しずつ目や体を慣らしていく。

 ナイの身体能力は決して悪くない。元の世界では虐待による傷の痛みがあったせいでまともに動くことが出来なかったが、それがなくなったいまは実力を発揮できる。

 おまけに魔法で強化されている。集中力や魔法のセンスは高い方なので、このままテオに鍛えてもらえばもっと強くなれる。


 ただ、強さが目に見えるわけじゃない。ゲームのようなステータスも見ることは出来ない。

 だからナイはどれくらい強くなればいいのか分からない。いま自分がどれくらい強いのかも分からない。

 昨日より出来ることは増えたと思う。それでも宝剣は目覚めない。目に見える成果が出ないことに、ナイは焦っていた。


「……っ、はぁ、はぁ」

「ナイ、この辺で休憩しましょ。乱れた魔力を整えて」

「は、はい……」


 ナイはその場に座り込み、剣を地面に置いた。

 体力も魔力も限界ギリギリまで消耗させる。潜在能力を引き出すためには極限まで追い込むしかないとテオは言った。

 特に魔力は生命力を糧にする。だからこそ限界を超える勢いでいかないと内なる力は目覚めないらしい。

 火事場の馬鹿力だ、と異世界人であるテオが言ったときには何だか違和感があったがナイは言葉を飲み込んだ。


「大丈夫ですか、ナイ」

「う、うん……何とか」

「昨日よりもずっと精度が上がっています。この調子で頑張っていきましょう」


 レインズから手渡されたタオルで汗を拭いながら、ナイは呼吸を整える。

 こんなペースでいいのだろうか。休んでる場合じゃないのではないか。ナイはずっと落ち着かない気持ちでいた。

 ゲームで言うところのチュートリアルをずっと繰り返しているような気分だ。少しも前に進めている気がしない。まだ訓練を始めて二日目ではあるが、勇者は誰かのために戦うものだというイメージが強いせいで、何も成果を出してない自分への存在価値を見出せないでいる。


「あ、あの、テオ、さま」

「テオでいいわよ」

「えっと、テオ……僕は、魔物と戦わなくて、いいの?」

「魔物退治は国の騎士たちに任せておけばいいのよ。今のところ上位種の魔物は出てきてないし」

「でも……」

「焦らないの。ナイが戦うべきなのは魔王よ。まぁ上位種が出てきたらナイの力を借りるかもしれないけど……一応もう少ししたら実戦も考えるから、それまでは訓練よ」


 ナイの焦りをテオは感じていた。

 テオだけはナイの過去を知っている。だからナイが必死に期待に応えようとする理由も分かっている。

 だけど無理に戦わせたくはない。テオはナイの気持ちを知っているからこそ、今の精神状態で戦わせるのは危険だと判断した。せめてもっと戦うことに慣れないと、魔力が暴走しかねない。


「そうだ。ナイ、あんたまだ国の中を歩いてないんじゃないの?」

「え、そういえば……」

「だったら街を歩いてきなさいよ。この世界のこと、色々知らなきゃ自分で買い物にも行けないじゃない」

「で、でも」

「いいでしょ、レインズ」


 話をどんどん進めていくテオに、ナイが口を挟む間がない。

 当然レインズがそれを反対する理由もないので、「いいですよ」と二つ返事で午後の予定が決まってしまった。


「じゃあ今日の訓練はこれくらいにしましょ。ほら、立って立って」


 ナイはテオに腕を引っ張られ、馬車の方へと連れていかれた。

 そんな暇はないのにと思いながら、ナイは言われるがままに街へと向かうのだった。




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