第一章。~【パチンコ】~
これはある漢が生涯2度目のパチンコで、たった4日で8万円を得たのち、1日で6万円という大金を溶かした、ちょっとしたエッセイである。
さて、漢は20代になったばかりの頃、一度パチ屋に赴き、パチンコというものを試したことがある。
都心の駅構内より遥かに騒がしい店内。その頃はまだ、ドル箱が床に積まれていた。
慎重に歩きながら、適当に選んだ筐体(たしか海物語)に座り、しげしげとそれを観察した。
脇にお金を入れる投入口発見。
お札しか受け入れてくれない模様。
とりあえず、大切な5000円を投入した。
ガーッ……。
ジャラジャラジャラジャラ。
パチパチパチパチ…………。
体感、5分。
筐体から玉が出なくなった。
えっ…………、。。。
茫然となり、佇む20歳。
どうやら5000円は消えたようだ。
演出もなにも分からないまま、終わった。それがパチンコとのファーストエンカウンター。
2度とやるか。
心に誓い、そして幾数年が経った。
そして――しかし……。
漢はある日突然、思った。
ガチャと並ぶ最上の搾取システム。
しかしそれは、客自らが筐体を選ぶ抽選方式の娯楽。ガチャとは違う、そして。
優れたる金銭回収機構である以上、そこには明確なルールがあるはず。
パチにも勝ち易い方法があって、それを知ってれば、多く勝てるんじゃないのか……?
漢は過去と異なり、ち●ちんに毛が生えた程度の、それなりの知識を有していたのだ。
そしてそうと決まれば意気揚々、ネットで齧った筐体データのあれこれや釘の有効配置などを引っ提げて、パチ屋へと赴いたのだった――!
なぜなら、金が本当に入り様だから!
ちょっとしたお金でも欲しかったから!!
まあ、それと、小説の資料にギャンブラーの詳細な心情が必要になったので、その取材だったのだ。
なぁに、大丈夫だいじょうぶ。
できれば数万円勝ってさ、勝ち逃げみたいに「もう二度とやらねーっ!!」っつって
パチンコの音と光は脳を焼くなんて言うけれど。
ジャンキーになんてなるわけない、なるわけないww
勝ち方を見つけたら、もしかしたら本当に儲かっちゃうかもな……w
うぇへへwww
漢の考えは、ある意味では間違っていなかった。
予想外だったのは。
パチンコという闇の沼は、漢が想像する以上に、闇深かったということだ――。