※今回は少し胸糞要素解放していこうと思う作品のため、回れ右推奨なり。
「––––『U06A36』、飯だ。」
看守のような制服の男がバシャッ、と目の前にある犬猫用の銀皿に白い何かを入れた。
普通に食べればきっと吐くだろう。でも、それ以外に飯はないし、吐けばしばらく『飯として』口に入れるものなどない。だから、それを無理にでも流し込む。
いつからここにいるだろうか、彼女は左右を、同じ境遇の首輪に裸体の女性を見回す。
地獄とはまさにここのことだと思う。彼女たちは家畜であり、なんのために集められ、飼育されているのか、それは………
「『A36』、指名だ。今日はM04、S59と繁殖だ。よかったな、そいつは美形だし、いい『異能』持ちだ。」
そう言いニヤニヤと笑う看守に引きずられ、繁殖部屋に連れて行かれる。
ここは大きく分けて4区画ある。異能持ち、無能、その男女で分かれている。
金持ちの大半は無能であるが美形の方とやるが、時にはこうして異能で美形の子供を産むために、半分金持ちの道楽でやらされる。
もし、あの日、変な路地に迷わなければ、借金取りに売られなければ、不倫しなければ、美形でなければ…………『異能』を知られなければ。
「……おいS9-、ぼさっとするな早く来い。」
ガラス越しからソレを見下ろしていたら、別の看守に怒鳴られる。
「…はーい。」
「全く、これだからメスガキは嫌いなんだよ」
看守は毒づくが、スタスタと先を急ぐ。
ボクは窓越しからみた女に特に何か同情することはない。全ては『運が悪かった』、それだけだ。
そしてその不安は、あの女から生まれたボクにも巻き添えにしているから恨んでもよさそうだが、なにぶん恨む相手が多すぎて、早々に恨むことをやめた。
「……さあ、いこ?」
無関心なボクに、唯一感情と呼べるものを引き出す、手を差し出した先の少年以外には。