城にて
灰色の雲の切れ間から青い空が見える。
気まぐれに差し込む光が大地を照らす。
そこには戦いが繰り広げられていた。
「殺せ!!」
「貴族を探せ!!」
「王族を探せ!!!」
城下では兵士の怒声が響き渡っている。
我が国の兵ではない。
声を張っているほとんどは敵国の兵士だろう。
「アノルド申し訳ありません」
私は呟いた。
血の滴る首を両手で抱えている。
ドレスの前は血で赤く染まっている。
ずっと私を護っていた騎士。
物心つく頃には側にいた騎士。
城外に出る際には必ず護衛に就いていた騎士。
私が最も頼りにし、愛した騎士。
涙はずっと流れ続けている。
恥や外聞を気にしていられない。
侵略に誰も気が付かなかった。
あっさりと王都へ進軍を許してしまった。
城下に慰問に出ていた私は、そのまま戦の波にさらわれた。
多勢に無勢、いかに腕利きの近衛の騎士とはいえ、数人が軍勢と勝負になるはずもない。
筆頭としてずっと側にいたアノルドは奮戦の甲斐があって私を王城に下げることに成功した。
もうすぐ城門というところでアノルドは倒れた。
身体中傷だらけでここまで動けたのが不思議なくらいだった。
鎧を外すと大量の血が溢れる。
思わず支えるがアノルドに力はない。
「は、や・・・く。ご・ぶ・・・じ・・・・」
スッと力が抜けてアノルドが重くなる。
全てを言い終わらないままにアノルドは逝った。
「姫。アノルド隊長の首を落とします」
「な・・ぜ?」
「隊長の武勇は知れ渡っております。首級をやつらには渡せません」
そうアノルドは親善試合では負けなし、他国に名を轟かす騎士。
確実に褒賞の対象になるし、戦意高揚のため首も晒されるだろう。
「わかりました」
「ごめん」
生き残った騎士がアノルドに黙礼を捧げ首を落とす。
私はアノルドの首を抱え王城に入った。