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最終話 空高く響く

カーラ 公爵令嬢 銀髪に翠の瞳

レフ  転生者 琥珀狐 カーラの相棒

コラン カーラの想い人(両想い) 王子 金髪碧眼

ヘルン コランの姉 王女 金に近い茶色の髪 碧眼


ロナルド(ロニー) カーラの兄

シーミオ カーラの母

ロイル  カーラの父


ジャスミン 町の料理店の店主

ケイト   転移者 ジャスミンの店の店員

プラシノ  風の精霊

「よかったねぇ〜〜!」


 ミーリが、泣きながらカーラに抱きつく。

 カーラの左手薬指には、ブルートパーズの指輪が輝いていた。

 

「おめでとう」


 ミルティアも、深紅の目を涙でうるませている。


 晴れて婚約者となった、カーラとコラン。


 今日は、親しい人だけを招いた、お祝いの食事会だ。

 

 料理はもちろん、ジャスミンが腕によりをかけてくれた。

 カーラとレフの強い希望もあり、ジャスミンにお願いして、公爵家にレストラン出張所を作ってもらった。店長はケイトが、快く引き受けてくれた。

 

 レフは、厨房に入り浸る気まんまんだ。


 カーラももう少ししたら新婚さんだし、ずっとべったりしているわけにもね?


 コランに悪いわ。


 これからはケイトとタッグを組んで、この世界に飯テロを仕掛けるのが目標である。


 まぁ、きっとカーラも、気づいたら参加していると思うけれど。


「これからは、新婚さんの邪魔はしないわ。どうせほとんど帰ってこないのだし、ロナルドの部屋でも使おうかしら」


 ロナルドがいきなり抜けると王宮の実務が回らないので、しばらくは国王の直轄で働く予定だ。

 あとを任せられる目処がたてば、スマラグドス領主代理としてこちらに戻ってくる。いつになるか、わからないけど。


 先程の呟きはただの独り言だったのだけれど、カーラの耳に届いてしまったらしい。


「何言ってるの、レフのお部屋はちゃんと作るわ!」


 カーラにひょいと抱き上げられる。


「私の部屋と、扉で繋げるからね!」


「うーん。それ、コランがヤキモチやかない?」


「カーラの大事な相棒に嫉妬するほど、狭量な男ではないよ」

 

 カーラの肩越しに、ひょっこりとコランが顔を出す。


「あっ、コラン! 結婚式の日までは、私がカーラの部屋で寝るからね!」


「仕方ない。お譲りしましょう」

 

 ノリよく一礼するコランに、カーラが顔を赤くして、叱る。


「レフったら! コラン様も!」


 この状況をとても楽しそうに笑いながら、コランはレフの頭を撫でた。

 最近はピリッとしない防御のやり方をレフも覚えたので、触られるのも不快ではない。


「これからもカーラをよろしくね、レフ」


「ふふ。ふたりをよろしくね、レフ」


 新婚(予定)のふたりに、そう言われたら。


「仕方ないなぁ〜」


 口元が緩んでしまうじゃないか。


 あぁ、今日もカーラは可愛い。

 コランも、まぁ嫌いじゃない。


「プラシノも、遊びにきてね。専用のハンモックを用意しておくわ。いつでもたこ焼き作るからね」


「ほーよ、はりはとな、嬢ちゃん」


「あんた、たこ焼き、頬張りすぎだから」


「俺にもたこ焼き」


「あらロナルド! お疲れ様〜。こっちに帰れたんだね〜」


 本当に疲れた顔をしているけれど。


「今日のために、徹夜で仕事を終わらせてきたよ……」


「おいおい、しけた顔してんなよ〜。たこ焼きわけてやるから」


 さっそくプラシノが、ロナルドの肩を陣取っている。ロナルドのことが大好きだな。と思ったのだけれど。

 よく見たら、どうやらこっそり弱〜い治癒魔法をかけてやっているようだ。プラシノ、口は悪いがいい奴だ。


「はぁい、狐ちゃん。精霊さん」


「あ、コランのお姉さん!」


「ロナルドの馬車に便乗しちゃったわ〜」


「逃げきれなくて……」

 乾いた笑いをもらすロナルド。


「ヘルン様。お越しいただきありがとうございます」

 カーラが心配そうにロナルドを労う。

「お兄様、無理はなさらないでね。お体が心配だわ」


 ただでさえ、王宮の仕事からコランが抜けた穴が大きいだろうに。


 カーラの心配を、ヘルンが一蹴した。


「いいのよぉ、ロナルドが王宮に残るのは自分のためなんだから」

 給仕から優雅な仕草でグラスを受け取る。


「ちょっ……っえ?! ヘルン様、なんで知って」


 ロナルドの狼狽具合を見て、いつもこうやって遊ばれているのだろうなと同情するレフであった。

 そうだ、甘酒をごちそうするのを忘れていた。


「そうなの、兄様?」

 カーラが首を傾げる。てっきり、自分たちのために王宮の仕事を引き受けてくれたのだと申し訳なく思っていたのだ。


 ロナルドが言葉につまる。


「王宮にねぇ、とっても働き者の女の子がいるのだけど。彼女が残業ばかりするものだから、ロナルドったら心配で毎日送っているのよねぇ」


 答えたのは、ヘルンではなくシーミオだった。

 似ているな、このふたり。


「ヘルン様! どうせあんたでしょう! 母上に何を吹き込んでくれてるんだ! あちらでの仕事が多いのは本当です!」


 ヘルンは意に介さず続ける。


「今、あとを継いでこっちの領主になっちゃったら、彼女になかなか会えなくなるから、彼女を口説き落とすまでは王宮から離れられないのよ〜」


「いつになったら、領主業を交代してくれるんだろうねぇ」


 ロイルまでやってきた。


「頼むから、黙ってくれ……」


 頭を抱えたロナルドを、プラシノがよしよしと撫でている。

「俺はロナルドの味方だぜ……ほら、たこ焼き食えよ」


 レフも反対の肩にのって、尻尾で背中をさすってあげた。

「苦労するわね……今度、甘酒、作ってあげるよ」


「優しいな……お前たち……」


 力無く呟く。

 ここに意中の彼女がいなくてよかったと、心から思うロナルドであった。






「そうだ、俺、レフに土産もってきたんだよ」


 プラシノが、大玉の飴のサイズの、物体を取り出した。

 金平糖みたいに全体がトゲトゲしている。

 色は黒寄りの茶色で、これはまさにーー。


「何、これ、ちっちゃい毬栗?」


 喜劇のようにプラシノが倒れる。


 ズコ、って聞こえそうだったわ。

 空中でだけれど。器用な事だ。


「お前が言ってた、ハリセンボン? をモチーフにした、魔石。新しく作ってみた。これには護身の効果がある」


「え、ごめん、魔石ってそんなノリで作るものなの?」


「俺様にかかりゃ、ちょちょいのちょいよ」


 プラシノって、けっこうすごいのかもしれない。

 何より、気持ちが嬉しい。


「あ、ありが」

「ま、それを食っときゃ、いつか夜道に不意打ちで襲われても守ってくれるよ。お前、敵多そうだもんな〜」


「はぁ?!」


「お前が死んだら、お嬢が暴走しそうだし」


「失礼ね! 国中の皆に愛されてるわよ! でもいただくわ! ありがとうね!」


「ふたりは本当に仲良しね」

 カーラが笑う。


「違うって」

「違うってば」


 皆の笑い声が空高く響く。




 ああ、何気ない幸せを、ありがとう神様。

 カーラのところに導いてくれた、名前も知らない誰かに、感謝します。


 これから、もしかしたら、笑えなくなる日が来ることもあるだろう。

 大切な人と気持ちが通じず、悲しみに溺れる日が来るかもしれない。


 でもきっと、私は今を後悔しない。


「みんな、これからもよろしくね!」


 

読んでいただきありがとうございます。

これにていったん完結となります。

また続きとなるお話をシリーズとして書いていきます。

そちらもよろしくお願いいたします。


ありがとうございました!



(2023.1.11 追記)

番外編、開始いたしました!

よかったら、読んでみてください。

どうぞ、よろしくお願いいたします!

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