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第34話 未来にむけて

カーラ 公爵令嬢 銀髪に翠の瞳

レフ  転生者 琥珀狐 カーラの相棒

コラン カーラの想い人(両想い) 王子 金髪碧眼

ヘルン コランの姉 王女 金に近い茶色の髪 碧眼


ロナルド(ロニー) カーラの兄

シーミオ カーラの母

ロイル  カーラの父


ジャスミン 町の料理店の店主

ケイト   転移者 ジャスミンの店の店員

プラシノ  風の精霊

 帰り道は、レフとプラシノの力でひとっ飛びだった。


 帰還の転移前に、少しトラブルがあったのだけれど、特に問題なく解決したので、レフは一安心していた。


(もう、トラブルはこりごりよ)


 スマラグドス領には戻らず、そのまま、王都のスマラグドスの屋敷に転移した。


 屋敷の使用人たちは、予定にない……まさに突然の訪問に、慌てふためいた。


 申し訳なく思ったが、先触れの使者よりも早く着いてしまうのだから仕方がない。


 きっとこれからも似たような事はあると思うので、慣れてもらうしかない。


「ありがとう、ふたりとも」


「いいのよっ」


 レフにとって、カーラの笑顔に変えられるものなどないのだ。


「どういたしまして! じゃ、俺は帰るわ! またあっちでな」


 レフたちを送った後、お役御免とプラシノはひとり森に帰った。



          ※

 

 

(ふん、元々危機などなかったのではないか。小賢しい)


 コランたちから顛末を聞き終えて、先の王妃は唇を噛んだ。


 カーラとレフは、屋敷で留守番をしている。

 ロナルドは、コランと一緒に王宮にきていた。


 コランはというと、飄々としたものだ。国王に向けて膝を突き、最後の仕上げに入る。


「ーー先に送りました手紙の通り、王女の無事を確かめ戻りました。つきましては、私のスマラグドス領への帰属。および、カーラ・スマラグドスとの婚約を許可いただきたい」


「良かろう。此度の事、大義であった」


 玉座に座した国王が答える。


 髭の奥で、口元が笑ったように見えた。

 この人もまた、王女の無事などお見通しの上で、コランの願いを聞きいれるために一芝居うってくれたのだろう。


(父としては遠い存在だったけれど、尊敬できる国王だったな)

「ありがとうございます。またーー」


 コランは、新たな懸念事項について言及する。


「今回のことは、帝国の状況が背後にあると思われます。あちらが軍備を拡張しているとなると、将来的な我が国への侵攻も想定しておいた方が良いかと」


 ああ、それとーーと、なんでもない事のように続ける。


「引き上げる際に、沼地にて帝国の密偵を捕らえました」


 国王の眉がピクリと上がる。


 沼地を調べにきた密偵にとっては、不運としか言いようがなかった。

 誰もいない事を確かめながら動いていたのに、突然目の前に王子率いる精鋭が現れたのだ。

 逃げる場所も、隠れる場所もなかった。

 さすがに同情したなーーと、その瞬間の密偵の顔をロナルドは思い出す。


「白殿の住んでいたユルグの樹海には今、軍事拠点があると、証言致しております」


 先程申し上げた将来とは、あまり遠くない将来かもしれません。コランの言葉は、だんだんと強くなる。


「つまらぬ権力争いで、国力を分つ時ではありませぬ」


「あいわかった。こちらにも探らせよう」


 国王を見つめているけれど、真に言いたいのはその隣にいる先の王妃にだ。


「何事にも時勢を見誤らぬよう、お願い申し上げます」


 そしてーー。

 今度はまっすぐに、王妃を見据えた。


「私は、玉座になど興味はありません」


 そして、優しくにこりと笑う。

 その口からこぼれる言葉は、完全なる脅しだったけれど。


「まぁ、愛する人を失えば、どこかの国くらい滅ぼしてしまいそうですがね」


「そうならないよう、将来の夫婦共々、力を合わせて、この国を盛り立ててくれよ」


 そのくらいにしてやれと、国王が苦笑しながら言う。


 どこかの国。それはきっと、先の王妃の生まれた国の事だろう。

 気色ばむ王妃が何か言いかけたのを、目線で圧する。


「貴女は、時期国王の母君となる」


 滔々(とうとう)と告げるコランの横顔には、国王の威厳があるなぁとロナルドなどは思うのだけれど、本人がそれを望まないのだから仕方ない。


「私は、愛する人との人生を取り戻す。また彼女と一緒に、この国のために尽くす所存です。そして、この国を思う気持ちは、貴女とも同じであると、信じたい」


 そこまで言われては、王妃も黙るしかないだろう。

 国王が良しと言った時点で、本来であれば口を挟む権利もないのだ。


「……好きになさい」






 話がひと段落ついたところで、控えていたロイルが口を挟む。カーラたちが沼地に発ったあと、馬車でこちらに向かってくれていたらしい。


「スマラグドス領現当主である私からも、お願いがございます」


 にこにこと笑いながら、コランとロナルドの方をちらと見る。


 せっかくなのでーーと、ロイルは国王に向かって注文をつけた。

「コラン殿下に、私の領地のお手伝いをお願いできるのであれば、心強い。そろそろ、若い者たちに実務を譲って、妻と世界を旅でもしようかと、そう思っておりましたところ」


 ロナルドは悲鳴を飲み込んだ。

 いまでも、仕事が山積みなのに?

 コランは王宮とスマラグドスの仕事を兼務するのではなかったのか?

 ロナルドは内心とっても焦るが、いまは発言できる時ではない。


「コラン殿下には、カーラの夫として、スマラグドス副領主に着任していただきたく存じます」


「ふむ。コラン、ロナルド、お前たちは、それで良いのか?」


「願ってもないお申し出でございます。ロナルド殿が将来、新領主として跡を継がれる時まで、しっかりとスマラグドス領をお預かりいたします」


(何を清々しい顔をしているんだ、コラン! 王宮の仕事は! この、裏切り者……!)


 しかし、ロナルドも、新婚となる妹夫妻が月の半分を別々に過ごすのは、可哀想かなと思ってはいた。

 そして、ロナルド自身が、王宮でやり残した事があるため、まだ跡を継ぐ事はできないと、ロイルに言っていたのだ。文句は言えない。


 謁見の前に、コランとロイルがこそこそ話していたのはこの事だったのか。

 仕方ない。腹を括ろう。


「承知いたしました。そのようにーー」


(後任の人材はしっかり手配してくれよ、コラン……!)



          ※



 王都、スマラグドスの屋敷にて。


 すっかり日も暮れた中庭に、ふたつの人影が歩いていた。


 背の高い人影が、もうひとりにひざまずく。


「もう一度、僕の方から言っておきたかった」


 ふたつの影は、手をとって見つめあう。


「カーラ・スマラグドス。私の全てを貴女に捧げる。私と、残りの一生を共に過ごしてくれないか」


「はい。お受けいたします」


 弾むような声で、こたえるカーラ。

 きっと、とびきりの笑顔をコランに向けている事だろう。


「もし年老いた貴方が私を忘れてしまうことがあっても、今度は離れてあげませんからね。最期まで、一緒です」


「ああ、私もだ!」


 ふたつの影は寄り添って、ひとつの影になる。




 そんなカーラたちを、屋根の上からレフは眺めていた。


「よかったわね、カーラ」


 最近、涙腺が弱くて、いかん。


 感慨に浸っていると、夜空のむこうからきらきらと輝く光の玉が飛んできた。


「あれ、帰ったんじゃなかったの?」


 プラシノだった。


「帰ったよ。長に報告して、また出てきた」


「どうしたの、忘れ物?」


 プラシノはそっぽを向いたまま、レフの隣に座る。


「また、レフが寒がってるんじゃないかと思って」


「ふふ、ありがとう。今日はあったかいよ」


「そっか」


「うん」


 きれいな月が、屋根の上のふたりをそっと見ていた。

読んでくださってありがとうございます!


次回ラストになります!


どうぞ、よろしくお願いいたします!

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